研究課題
本プロジェクトでは、生体内の組織化に学び、「物理的摂動の存在下での組織構造の形成」に焦点をあて、分子スケールからナノ・メソスケールを超え、巨視スケールにいたる高度に制御された階層的異方構造がらなるソフトマテリアルを設計するとともに、その異方性に由来する格別な物性・機能の開拓を目指す。具体的には、(1)『高速電場応答強誘電性カラムナー液晶』の開拓とメモリー素子としての初の実験的検証。(2)『イオン性無機ナノシート問の二次元静電反発』によるアクアマテリアルの異方的力学特性、(3)グラフェン高濃度分散系を用いる『構造異方的ソフトナノカーボン』の創製と物性開拓、の3つを遂行する。最終年度であった平成29年度は、主に(2)と(3)を中心に行い、かつ、それらの過程において偶然見いだされた内容について探求した。2, 『イオン性無機ナノシート間の二次元静電反発』による異方的アクアマテリアル : これまでの研究から、系の脱塩によりナノシート間の静電反発力は劇的に増大する事をすでに見いだしている。今年度は温度以外の刺激により異方的運動を行うアクチュエータの開発に取り組んだ。3, グラフェン高濃度分散系を用いる『構造異方的ソフトナノカーポン』 : これまで当研究室ではイミダソジウム塩のオリゴマー構造を持つ新規イオン肢体を用いた高濃度グラフェン分散系を開発してきた。この新規イオン液体の電気化学測定を行ったところ、破格に高いキャパシタンスを有していることが明らかとなったため、その一般性を精査するため、種々のイオン液体の合成とそのキャパシタジス評価を行い、そのメカニズムにせまった。
1: 当初の計画以上に進展している
本研究課題を進めている最中、グラフェン高度分散系の研究の一環として、グラフェンの分散のために設計されたイミダソリヴムのオリゴマーの電気化学測定を行ったところ、これまでのイオン液体と比較して破格のキャパシタンスを有していることが明らかとなった。これは研究開始当初は全く予想していなかったものであり、この発見はエネルギー容量の小ささが問題であった電気二重層キャパシタの問題を解決し、エネルギーという社会的問題にもアプローチできる重要な発見である。前年度までで見いだしていたのは、電極電位が負の香合にキャパシタンスが向上するというものであった。これはオリゴマー化しているイミダソリウムがカチオン性であるため、その反対の極性の電極上に吸着し精緻な電気二重層を形成するためであると考えられた。この考察を元にアニオン性部位がオリゴマー化したイオン液体を合成・検討したところ、電極電位が正の場合にもキャパシタンスが向上するという結果を得ることができた。
今後は平成29年度に得られた成果及び課題を元に研究を進め、本特別推進研究のまとめを行う。本特別推進研究の残された課題として、イオン液体オリゴマーの粘度の問題がある。上述のように、当初グラファイトの剥離に用いていたイオン液体オリゴマーが破格のキャパシタンスを発現することを見いだしその一般性を検討してきた。その検討の過程において、イオン液体の粘度がキャパシタンスに大きな影響を与えていることが判明した。そこで、構造の異なるイオン液体オリゴマーを系統的に合成し、キャパシタンスに与える影響に関して一般的な知見を得ることを考えている。その過程において高いキャパシタンスが発現するメカニズムも合わせて検討し、実用的なキャパシタにつなげていきたいと考えている。
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すべて 国際共同研究 (2件) 雑誌論文 (12件) (うち国際共著 1件、 査読あり 11件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (89件) (うち国際学会 32件、 招待講演 24件) 備考 (1件) 産業財産権 (1件)
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