研究課題/領域番号 |
25000011
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
天野 浩 名古屋大学, 工学研究科, 教授 (60202694)
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研究分担者 |
本田 善央 名古屋大学, 工学研究科, 准教授 (60362274)
田中 成泰 名古屋大学, エコトピア科学研究所, 准教授 (70217032)
大野 雄高 名古屋大学, 工学研究科, 准教授 (10324451)
三宅 秀人 三重大学, 工学研究科, 准教授 (70209881)
成塚 重弥 名城大学, 理工学部, 教授 (80282680)
竹内 哲也 名城大学, 理工学部, 准教授 (10583817)
岩谷 素顕 名城大学, 理工学部, 准教授 (40367735)
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研究期間 (年度) |
2013-04-26 – 2016-03-31
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キーワード | AlGaN / 深紫外発光素子 / バルクAlN基板 / 電子線ホログラフィ / 分極電荷エンジニアリング / 低加速電圧SEM / カーボンナノチューブ / グラフェン |
研究実績の概要 |
1. 超高品質AlNバルク基板の創製 (本田、天野)バルク結晶の高品質化を目指し、昇華法によりTiNをマスクとして横方向エピタキシャル選択成長(ELO)を試みたところ、予想に反してTiN上にのみAlN単結晶が成長した。MPS解析などから、TiNで覆われていない部分はSiC表面が窒化され、SiNになっていることが判明した。貫通転位密度は11μmという薄膜でも1.6×10^7cm^<-2>と低く、ELOの可能性を見いだすことが出来た。 (三宅)昨年度導入した1800℃まで昇温可能なHVPE装置を用いて, AlN厚膜の成長条件を最適化した。サファイア上のスパッタ膜等のAlN下地結晶を用いた成長ではMOVPE法による膜を超える結晶性の向上が達成でき, 10-30μm/hの成長速度を有するホモ成長の有効性が示された。また, 窒素と一酸化炭素混合のアニールによりサファイア上では, 世界最高の結晶性(貫通転位密度5×10^8cm^<-2>以下)を有する膜を得た。 2. 分極半導体デバイス解析 (田中)電界解析グループは、電子線ホログラフィ(EH)による解析を引き続き行うと同時に、低加速電圧のSEMを用いたポテンシャル分布解析の可能性を探った。EHでは、AlGaN系SQWのp-n接合試料について機械研磨のみで楔形に加工し、先端部の薄い場所を観察、解析を行った。ホログラムからポテンシャル分布を求めたところ、p-n接合によるポテンシャル変化が明瞭に見られ、機械研磨のみの試料薄片化が有効であることが確認できた。SEMによる解析は、GaN系p-n接合をおよびMQW構造を用いて行った。p-n接合試料の断面SEM像において、SEM信号強度がポテンシャルに依存する観察条件があることを見出した。また、MQW構造試料を表面から斜め研磨してSEM観察を行ったところ、ピエゾ電界に対応すると考えられるSEMのコントラスト変化が得られた。MQW試料については定量的解析は十分にはできていないが、SEMは簡便なポテンシャル分布観察法として利用できる可能性を示しているものと考えている。 3. AlGaN系分極半導体へのナノカーボン電極形成 (大野) カーボンナノチューブ透明電極からp-AlGaN層への正孔注入を試みたところ、金電極の場合と比較して、およそ6倍の電流注入が可能であった。今後、化学ドーピングや電気二重層キャパシタ
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による電界効果ドーピング等によりCNTの仕事関数を増加させ、更に正孔注入の改善を目指す。 (成塚)(1)析出法を用いた多層グラフェンの成長技術、(2)減圧CVD装置によるグラフェンの成長技術、(3)透明電極の作製技術の3つのポイントに関して本年度は研究を進めた。(1)析出法を用いた多層グラフェンの成長技術に関しては、Al203バリア層とAuキャップ層を用いた析出法により、核発生制御をおこない世界最高レベルの品質を持つ多層グラフェンの成長に成功した。また、バリア層、キャップ層がグラフェンの析出に与える影響・メカニズムを検討した。(2)減圧CVD装置によるグラフェンの成長技術に関しては、銅基板上の減圧下におけるグラフェンの核発生制御効果を確認し、100umメータオーダーのグラフェン成長島の成長に成功した。(3)透明電極の作製技術に関しては、グラフェンをパターン化金属電極と組み合わせたデバイス用電極作製法手法を検討した。また、銀ナノワイヤーとグラフェンを組み合わせることによる伝導特性の向上を確認した。 4. 分極電荷エンジニアリングおよび深紫外LED試作 (竹内、岩谷)昨年度の理論検討を踏まえ、高Al組成AlGaN組成傾斜層を用いた正孔蓄積の検討を行った。現時点では、明確なp型伝導が得られていない。これは、AlGaN層へのN極性面の混入や大きなコンタクト抵抗が原因であると考えられる。一方、本プロジェクトで実現を目指すエネルギー変換効率の高い紫外LEDは、n型層およびp型層部分での抵抗値やコンタクト抵抗の低減が不可欠である。 これまでの検討で、p型層に関しては、高正孔濃度の蓄積が実証されている Ga(In)N/AlGaN界面を利用した極薄トンネル接合構造を新たに検討し始め、これを深紫外LED上に形成した。その結果、電流注入に成功した。駆動電圧は20Vと高いものの、正孔注入にn電極を利用できるため、今後光取り出し効率改善に大きな期待ができる。一方、n型層においてもシート抵抗値を低減するために不純物濃度の高いAlGaNおよびV系電極の検討を行った。結果として、Al組成が低いAlGaNにおいてキャリア濃度20乗程度まで平坦且つデバイスクオリティーのAlGaNが得られること、縮退現象が確認できるなど同材料における新しい物理が見出されつつあった。また、V/Al/Ni/Au電極を用いることによって、Al組成60%を超えるn型AlGaNにおいて、コンタクト抵抗が10-6Ω・cm2という極めて低接触比抵抗電極が得られることが確認できた。 隠す
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
1. 超高品質AlNバルク基板の創製 (本田、天野)成長選択性が予想と全く逆にはなったが、TiN上へのAlN成長に初めて成功し、またもくろみ通り選択成長による低欠陥密度化にも成功した。 (三宅)HVPE法による成長条件の最適化は計画通りに実施でき, 厚膜化による結晶性向上も示した。さらに当初の計画に無いサファイア上のAlN結晶についても1650-1700℃で窒素と一酸化炭素との混合雰囲気で熱処理することで, 結晶性が向上することを明らかにした。 2. 分極半導体デバイス解析 (田中)電子線ホログラフィは、試料薄片化の条件出しに時間を要したが、ポテンシャルプロファイルが解析出来るようになったため。また、SEMでは、ポテンシャル分布観察法としての可能性を示すことが出来たため。 3. AlGaN系分極半導体へのナノカーボン電極形成 (大野)p-AlGaNへの正孔注入が、従来と比較して6倍に向上した。 (成塚)本年度はグラフェンの析出成長法に関し大きく進展し、バリア層、キャップ層という手法を用いることにより、世界最高レベルの膜質をもつ多層グラフェンの成長に成功した。デバイス用電極に関しても電極作製方法の方向性を示すことが出来、今後の進展に向けての知見が得られた。 4. 分極電荷エンジニアリングおよび深紫外LED試作 (竹内、岩谷)理論的検討により高い正孔濃度が実現する描像は明確になった。実験的にも、低Al組成AlGaN/GaN界面においては正孔蓄積が実証された。一方で、深紫外LEDにとって重要な高Al組成AlGaN/AlN界面への正孔蓄積は実証できていない。上記野結果を受け、Ga(In)N/AlGaN界面高正孔濃度を利用したトンネル接合を形成し、LEDへの電流注入を実現した。一方、n型層においてもシート抵抗値を低減するために不純物濃度の高いAlGaNおよびV系電極の検討を行った。結果として、5%程度の低いAl組成がのAlGaNにおいてキャリア濃度1020cm-3程度まで平坦且つデバイスクオリティーのAlGaNが得られること、縮退現象が確認できるなど同材料における新しい物理が見出されつつあった。さらに、縮退現象はAl組成20%程度まで起きうることが確認でき、現在さらなる高いAl組成を持つAlGaNでの現象の確認を進めている。また、V/Al/Ni/Au電極を用いることによって、Al組成60%を超えるn型AlGaNにおいて、コンタクト抵抗が10-6Ω・cm2という極めて低接触比抵抗電極が得られることが確認できた。
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今後の研究の推進方策 |
1. 超高品質AlNバルク基板の創製 (本田、天野)選択成長を用いた超低貫通転位密度AlNの厚膜成長及びその上のレーザ構造作製を目指す。 (三宅)昇華法によるAlN結晶を基板に用いてHVPE法によりホモエピ成長を行い, 不純物吸収が無いAlN基板を得て, 深紫外LED作製に供する。また, 実用上の重要性から, サファイア上のAlNについても窒素と一酸化炭素との混合雰囲気で熱処理法と併用して, HVPE法で高品質な厚膜AlNを作製し, デバイス作製に供する。 2. 分極半導体デバイス解析 (田中)EHについては、ポテンシャル解析が出来る状況にあるので、試料構造や作製条件を変えた観察を行い、理論解析の結果とも比較して検討することが次の課題となる。また、SEMによるピエゾ電界解析については、通常のEHでの観察とは試料の形状が異なるので、歪の効果が違ってくると思われ、歪を考慮した解析を行うことが必要である。 3. AlGaN系分極半導体へのナノカーボン電極形成 (大野)化学ドーピングや電気二重層キャパシタによる電界効果ドーピング等によりCNTの仕事関数を増加させ、更に正孔注入の改善を目指す。 (成塚)析出成長により世界最高レベルの膜質をもつ多層グラフェンの成長に成功したが、生成温度が900℃とデバイス応用に対してはまだ高いため、今後はその低温化に向けた研究を加速したい。炭素源として用いるアモルファスカーボンの原子的構造・膜厚等を含むパラメーターの最適化が第一のポイントとなる。さらに、炭素原子析出の高度な制御に注目し、基板側へのグラフェンの析出制御を可能化し、デバイスプロセスとの整合性を向上させたい。また、多層グラフェンを実際のデバイス構造に組み込み、電極としての特性評価をおこない、透明電極として効果を検証してゆきたい。 4. 分極電荷エンジニアリングおよび深紫外LED試作 (竹内、岩谷)・AlGaN/AlN界面への明確な正孔蓄積を検証するため、AlGaN層の極性面制御とpコンタクト層/電極の改善を進める。 ・現状の高いトンネル接合駆動電圧の要因(大きなバンドオフセットなど)を明らかにし、低抵抗トンネル接合の実現とそれを利用した深紫外LEDを形成する。 ・Al組成が50%を超える領域においての高キャリア密度n型層の実現の検討及びデバイス応用。
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