研究課題/領域番号 |
25000011
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
天野 浩 名古屋大学, 未来材料システム研究所, 教授 (60202694)
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研究分担者 |
本田 善央 名古屋大学, 未来材料システム研究所, 准教授 (60362274)
大野 雄高 名古屋大学, 未来材料システム研究所, 教授 (10324451)
三宅 秀人 三重大学, 地域イノベーション学研究科, 教授 (70209881)
成塚 重弥 名城大学, 理工学部, 教授 (80282680)
竹内 哲也 名城大学, 理工学部, 教授 (10583817)
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研究期間 (年度) |
2013 – 2015
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キーワード | AlN / AlGaN / 結晶成長その場観察 / ナノカーボン / 熱処理 / 分極ドーピング / 深紫外 / ナノワイヤ |
研究実績の概要 |
(天野、本田、出来) *昇華法によるバルクAlN結晶成長法の構築 種結晶であるSiC基板の昇華を防ぐため、スパッタリングにより極薄膜AlNを成長前に堆積し、その上に昇華法でAlN厚膜成長を行った。成長温度1600℃では、不純物混入または点欠陥の影響で着色したAlNが成長し、成長温度1800℃ではSiC基板が一部分解し、大きなピットが多数生じた。そこで、まず最初に1600℃で成長後、昇温して1800℃で長時間成長したところ、ピットも殆どなく、可視光では透明なAlNの成長が可能になった。 *デバイス構造成長その場観察法の構築 MOVPE法によるデバイス構造成長時、エピタキシャル層にとって不透明となる波長のレーザー光を用いて表面散乱測定を行った。セットアップが容易なことから、407nmのレーザー光を用いてInGaN成長のその場観察を行ったところ、In金属の1~2原子層の形成後、気相中のIn原料ガス濃度が閾値を超すと表面偏析を生じること、および昇温または水素添加により表面偏析Inをの脱離が可能であることを見出した。今後、AlGaN用にはより短波長のレーザ光によりGaの表面偏析観察が可能になる。 *レーザの縦モード確認 従来、光励起では特に通常のシングルモノクロ分光器では縦モード観測ができなかった。本研究では波長分解能が極めて高い特殊な分光器を用い、Si上のInGaN多重量子井戸の光励起縦モード観測に初めて成功した。 *光取り出し効率改善のためのナノロッド成長 MOVPE交互供給法を用いてGaNナノロッド成長を行い、さらにInGaN/GaNコアシェル量子井戸構造、p型GaN成長を行い、ナノロッド構造でLED作製が可能であることを確認した。今後本手法をAlGaNナノロッドへ適用する。 *DLTS法およびDLOS法によるAlGaN系深い準位の包括的評価 DLOS法を用いてMOVPE法により成長したGaNの深い準位評価を行い、従来DLTSでは測定できなかった1.2eV以上の深い準位観察が可能であることを確認した。また市販深紫外LEDのDLTS評価を行い、活性層及びp型AlGaN層の深い準位に関する知見を得た。 (大野) p-AlGaN層に対する透明電極材料としてカーボンナノチューブ(CNT)薄膜を検討している。CNT薄膜に対してドーピングを施すことにより、仕事関数を最大で5.65 eVまで増大させることが
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可能であった。また、p-AlGaN層に対する接触抵抗の評価を行い、Au電極の場合と比較して低抵抗であることを見出した。 (三宅) 高周波加熱方式を採用したHVPE装置により、1800℃までの基板加熱を可能にした。サファイアを基板に用いたAlNのHVPE成長では、900-1000℃の水素クリーニング、基板の窒化を行った後に1300℃と1500℃でバッファ層を成長させた。さらに、1550-1600℃でそのバッファ層のアニールを行い、その後1550℃でAlN厚膜を得た。典型的な成長速度は20μm/hである。5時間の成長で約100μmを超えるAlN厚膜が得られることを実証した。100-300nm厚さのAlN膜を熱処理することにより、転位密度の1桁以上の低減を可能にし、10^8cm-2台を実現した。その熱処理を行ったAlN膜上に、MOVPE法およびHVPE法によりAlNホモエピタキシャル成長を行うことにより、AlGaN系デバイスのAlN下地基板としての有用性を実証した。 (成塚) 本年度はグラフェンの直接析出成長法を利用した透明電極用新プロセスの開発に成功した。本プロセスでは、LED櫛状金属電極の作製とグラフェンの析出成長を単一のプロセスで実行し、深紫外LED作製プロセスの簡易化、大面積化、低コスト化に大きく貢献する。一方、無触媒CVD法によるサファイア基板上へのグラフェンの直接成長にも成功した。本手法によれば、従来問題であったグラフェンの転写プロセスを経ず、直接基板上ヘグラフェンの成長が可能となり、グラフェン応用の観点からも有用な成果である。その他、グラフェン透明電極作製上重要であるp-GaN上のグラフェンの仕事関数制御に対するドーピングの効果、カーボンナノチューブ低温成長に関する触媒金属種の効果を調べた。後者はグラフェン成長の低温化に関し重要な知見を与えるものである。 (竹内・岩谷) ・深紫外LEDにとって重要な高Al組成AlGaN/GaNへの高正孔濃度蓄積が実証され、コンタクト層に応用することで一定の効果を得た。一方で、その蓄積の再現性を高めることとデバイスにおける最適構造の確立が課題として残った。 ・V/Al/Ni/AuおよびV/Al/Ti/Auを用いることによってAl組成が0からO. 6のn型AlGaNにおいて低い接触比抵抗率が10^-6Ω㎠に到達させた。また、この電極を用いることによって、従来一般的に用いられてきたTi/Al/Ti/Au系電極に比べ、LEDの動作電圧が低減できることを明らかにした。また、紫外LEDを試作し、20mA注入時の動作電圧がTi/Al/Ti/Au電極を用いた場合に比べて約1.2V低減できることを確認した。 ・V/Al/Ni/Au電極とAlGaNの界面にSiNxを挿入することによって接触比抵抗率が低減可能であること、またAl組成0.7のn型AlGaNにおいて接触比抵抗率10^<-6>Ω㎠を実現した。また、紫外LEDを試作し、20mA注入時の動作電圧が、SiNxを挿入しない場合に対して1.1V程度低減できることを確認した。 ・Alを1~5%程度GaNに添加することによって、10^<20>cm^<-3>を超えるSiを添加しても良好な表面状態を持つ結晶が実現できること、さらにこのn型AlGaNの抵抗率が10^<-4>Ωcm台を実現し、ITO並みの低抵抗層を実現した。また、Al組成に関しては3%の物が最も低い抵抗率を持つn層になることを確認した。 ・スパッタ法によって得られたAlNをアニールすることによって、高温MOVPEで成長したAlNテンプレートと同程度の結晶性を持つAlNテンプレートが実現可能であることを明らかにした。 ・2~3%のGaを添加することで、極性面制御された原子層ステップを有するAlNテンプレートが比較的低温で形成可能になった。 ・スパッタ法によるGaO/ITO多層膜電極により、ITO並みの比抵抗を保ちながら波長280nmにて40%の透過率を実現した。 (福山) サファイア上に製膜したAlN膜の結晶品質向上に向けて、N_2-CO混合ガスを用いたアニール法を開発した。本手法により、AlN膜を1500-1750℃の高温下で種々の混合比のN_2-COガス雰囲気でアニール処理を行った結果、著しい結晶品質の向上が確認された。アニール効果の一例を示す。アニール条件(1700℃, N_2/COガス比 : 0.6/0.4, 1時間)で厚さ300nmのAlN膜をアニールすると、表面性状を平滑に維持したまま、X線回折のロッキングカーブの半値幅がアニール前後で、(0002)面で69 arcsecから32arcsecに減少し、(10-12)面で843 arcsecから162 arcsecと大幅に減少することが分かった。また、アニール後、AlN膜とサファイア界面には固相反応により酸窒化アルミニウム相が生成していることが分かった。 隠す
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