研究課題
減数分裂の染色体分配の特徴の一つは、姉妹動原体が同じ極にから伸びた微小管によって捉えられることにある。我々は既に、酵母の解析から動原体の一方向を制御する因子Moa1を同定しており、その相同因子の候補としてマウスの生殖細胞で特異的に発現する新規の動原体タンパク質MEIKINを同定し解析を進めている。その結果、MEIKINは、Moa1と同様にPolo-likeキナーゼを動原体に呼び込む働きがあり、それにより動原体の一方向性が成立することが分かった。また、減数第一分裂のときに、染色体接着保護因子シュゴシンと協調して、セントロメアの接着を保護する機能を合わせもつことも明らかにした(現在論文作成中)。また、生きたマウスの生殖細胞内で蛍光タンパク質を発現させることにより染色体の運動を可視化することに成功し、この運動を制御する新規テロメア結合タンパク質TERB1を発見した。その機能解析から、染色体末端のテロメアと呼ばれる部位を起点として染色体が運動することが、その後の染色体分配に必須であることを明らかにした(Nat Cell Biol 2014)。TERB1タンパク質はヒトでも見つかっており、染色体を分配する仕組みの異常に起因する先天的遺伝疾患の原因解明につながる成果といえる。また、我々が以前見つけたマウスの減数分裂特異的なコヒーシンRAD21Lが、相同染色体ペアの認識において本質的な働きをもつことを明らかにした(Genes Dev 2014)。この結果は、染色体がどのようにして相同性を見分けるかという染色体生物学の根本問題の解明に向けた、大きな足がかりとなる成果といえる。
2: おおむね順調に進展している
マウスを用いた研究において、2つの柱となる論文を出版できた。さらに、マウスの新規動原体タンパク質MEIKINの仕事も、もう少しで論文に出来るところまできた。シュゴシンと癌の関係については、論文の完成に向けてやらなければいけない実験がいくつかある。
現在、ヒトの細胞で、癌化における染色体不安定化機構に、シュゴシンの局在不全が中心的な働きをしていることを明らかにしている。今後、多くのがん細胞株において、シュゴシンを正しく局在するように修正することにより、染色体分配の不安定性が戻ることを示す実験を進める予定である。
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Genes Dev.
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http://www.iam.u-tokyo.ac.jp/watanabe-lab/watanabe_lab/Home.html