研究実績の概要 |
ホロノミック勾配法に関する具体的な研究成果としては、統計的多変量解析における古典的な重要な課題である行列変数の超幾何関数の満たす微分方程式系や差分方程式系と、それに基づくホロノミック勾配法について進展が得られた。特に2F1型の超幾何関数の数値評価へのホロノミック勾配法の適用に関する研究成果は Hashiguchi, Takayama and Takemura, "Distribution of the ratio of two Wishart matrices and cumulative probability evaluation by the holonomic gradient method", Journal of Multivariate Analysis, 2018, の形で刊行された。
また分割表で周辺頻度を固定した場合の一般化超幾何分布に関して、基準化定数及び指数型分布族としての期待値パラメータに関する性質の評価とその数値的応用が得られ(Takayama, Kuriki and Takemura, "A-Hypergeometric Distributions and Newton Polytopes", arXiv 1510.02269)、国際雑誌への投稿と改訂の作業を通じて、一般化超幾何分布分布の最尤推定の性能の向上が得られた。
さらに、統計学以外への応用としては、無線通信分野における多入力多出力系(MIMO, Multiple Input Multiple Output)の復号方式の性能評価へのホロノミック勾配法の応用があげられる。無線通信分野の統計的性能評価では、複素多変量正規分布や複素ウィシャート分布が用いられるが、beamforming と呼ばれる通信方式の性能を調べるための統計量の分布関数に関するホロノミック系の性質について Vidunas and Takemura, "Differential relations for the largest root distribution of complex non-central Wishart matrices", arXiv:1609.01799 において詳しく検討した。
|