研究課題/領域番号 |
25220002
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研究機関 | 慶應義塾大学 |
研究代表者 |
天野 英晴 慶應義塾大学, 理工学部, 教授 (60175932)
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研究分担者 |
並木 美太郎 東京農工大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (10208077)
中村 宏 東京大学, 情報理工学(系)研究科, 教授 (20212102)
宇佐美 公良 芝浦工業大学, 工学部, 教授 (20365547)
近藤 正章 東京大学, 情報理工学(系)研究科, 准教授 (30376660)
黒田 忠広 慶應義塾大学, 理工学部, 教授 (50327681)
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研究期間 (年度) |
2013-05-31 – 2018-03-31
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キーワード | 計算機アーキテクチャ |
研究実績の概要 |
1.平成26年度の予算を繰り越して、ルネサスSOTB 65nmのIP試作を行い、このIPを用いてプロトタイプチップGCSOTB,CCSOTBを開発した。また、IPのテスト用チップを開発した。IPのテスト用チップの積層により、実チップでの動作が確認できた。GCSOTBとCCSOTBは単体チップでの動作が確認できた。 2.SOTBのボディバイアス機能を用いて、細かい粒度で漏れ電流と性能を制御する機構をテストするチップを開発した。また、このチップには自律的にボディバイアス状態を検知する機構、チップ内部でボディバイアス電圧を発生する機構も装備しており、チップを積層した際に、自律的に性能と消費電力を調整する枠組みの基本ができた。さらに、簡単な測定により、ボディバイアスと、電源電圧を調整して、チップを最もエネルギー効率の良い状態に持っていく手法についても提案し、マイクロプロセッサおよびアクセラレータの実チップで検証を行なった。 3.積層時の熱を測定するため、チップの特定箇所で大電力を消費して発熱させることのできるチップTHERMOを開発し、実際に測定を行なった。測定の結果、ワイヤレス接続でもチップの接触部から基板にかなり効率良く放熱が行なわれる点。積層内部のチップよりも、外側のチップの周辺部の温度が上がり易い点などの知見を得ることができた。 4.TCIのIPを用い、チップ間のネットワークを簡単に構築する方法としてエレベータネットワークを提案し、GCSOTB、CCSOTBに組み込んだ。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
e-shuttleの業務終了により、チップ作成が困難になったが、新しいSOTBプロセスの導入によって、チップ自体がビルディングブロック構築に際して、性能と電力を自己調整するという新しい考え方が生まれた。この考え方に沿って、OS、コンパイラ、アーキテクチャ、回路に渡るシステム自己最適化の新しい技術の確立が一つのテーマとなった。SOTBプロセスを用いたチップをテープアウトし、TCIのIPを単独でテストするチップにより動作を確認した。IPを搭載したホストCPUのGCSOTB、アクセラレータのCCSOTBは個別のチップで動作を確認した。 これらの研究は高く評価され、IEEE Transactionsなどの一流ジャーナル、DAC、DATEなどの一流国際学会で採録された他、国際学会のBest Paper Award 3件、Best Poster Award 1件、国内研究会による優秀発表、優秀デモの表彰5件、VDEC Design Award敢闘賞1件を受賞した。また、新聞報道6件、国際学会のキーノート、チュートリアル、招待講演など計9件を行い、国内でも招待講演3件を行なっている。本研究の注目度が非常に高いことがわかる。国外との連携についても米国のCMUのR.Marculescu 教授らの研究グループとの間で、TCIを用いたチップ間ネットワークの研究を、ドイツのThuebingen大学のW.Rosenstiel教授らの研究グループとの間で、SOTB技術を用いた電力、性能チューニング技術についての研究を共同で行なっている。 さらに、JST Accelのプロジェクトが開始され、PezyがTCI技術を用いたスーパーコンピュータの作成に着手するなど、研究の出口となりうるプロジェクトが開始された。この点、予想以上の波及効果が得られている。
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今後の研究の推進方策 |
1.平成27年度に実装したチップを積層してヘテロジーニアスマルチプロセッサを構築する。このシステムにより、TCIのIPについての実システム搭載試験を行なう。問題点が見つかった場合は、7月のランでリメイクを行なう。 2.1のマルチプロセッサにより、エレベータ型ネットワークの動作試験、実機による性能評価を行なう。 3.1のマルチプロセッサ上で、ホストからアクセラレータが様々なの構成を取った場合でも簡単に制御できるOS、制御システムについて開発する。 4.チップ同士を組み合わせた際に自律的に性能と動作電力を最適化するための検出機構と制御機構を実チップ上でテストする。 5.最終年度に向けて、全体を統合することが可能なシステムについて検討を行なう。
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