研究課題/領域番号 |
25220005
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研究機関 | 早稲田大学 |
研究代表者 |
菅野 重樹 早稲田大学, 理工学術院, 教授 (00187634)
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研究分担者 |
藤江 正克 早稲田大学, 理工学術院, 教授 (20339716)
高西 淳夫 早稲田大学, 理工学術院, 教授 (50179462)
小林 洋 早稲田大学, 理工学術院, 准教授 (50424817)
石井 裕之 早稲田大学, 理工学術院, 講師 (10398927)
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研究期間 (年度) |
2013-05-31 – 2018-03-31
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キーワード | 知能ロボット |
研究実績の概要 |
研究期間前半では、3つの課題:接近~弱い接触による協調的な意図伝達、人間‐ロボットの接触ダイナミクスモデル構築、強い接触による協調的な人間運動の誘発機序について解析的な検討を行った。 まず、人間とロボットが移動軌道を協調的に調整しながら移動する意図伝達手法を構築するために、人間同士の協調移動を参考に2個体の距離・意図伝達の強度・移動効率の関係性について分析した。さらに、ロボットへの実装や実環境での自然な振る舞いの創出を前提に、人間の非言語的な意図伝達手法を認知心理的・力学的な観点より分析し、接近過程における全身ジェスチャーによる意図伝達の在り方やそれを実現するロボットの身体性の検討を行った。その結果、協調的な双方向意図伝達に関連する各パラメータ群設定の知見を得た。 また、人間とロボットとが外力を受けた場面でのダイナミクスモデルを構築するために、ヒトの歩行時のダイナミクスを例として解析を行った。その結果、人間の歩行は歩行前の軌道計画と歩行中の軌道修正によって成り立っており、人間が転倒しそうになったときには、それを検知して歩行軌道の修正を行うことで転倒を防いでいるとの知見を得た。このモデルに基づいた2足歩行ロボットの歩行実験により転倒を防げたことから、人間とロボットとが強く接触した際の人間とロボットの安定性を維持する運動を表すダイナミクスモデル構築の手掛かりを得た。 次に、ロボットによる強い接触をともなう運動の作用を受けるロボットと人間のダイナミクスを運動の効率や生成に必要な心理的アテンション量の増減の観点から解析するための実験準備を行った。具体的には、ロボットが人体に積極的に接触する必要のある触診動作を例として、触診ロボットマニピュレータのプロトタイプを製作した。接触時の人間の心理状態を定量表現する物理量の候補としては、筋電や瞳孔径、脳波、圧覚刺激電流量などを選定した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2個体の距離・意図伝達の強度・移動効率の関係性について、特に、人間や周囲の環境情報に関する計測パラメータ(距離や精度など)について、定性的な分析にとどまらず定量的な分析(姿勢形成や認識にかかる時間、ロボットの速度・加速度、人間の身体の規模感など)まで踏み込むことができた。これにより、ロボット制御に必要な情報の取得方法、人間と人間共存ロボット間の相互作用の方法、ロボットが有するべき身体性や運動性に関する指針が導出された。これは、次年度以降に不可欠となる人間と人間共存型ロボットにおける双方向の意図伝達手法のための基礎理論としてそのまま利用できる。 また、人間とロボットの接触場面における両者の運動制御モデルの構築については、その場面が作用反作用と考えた際には両者とも同条件であり、いずれも受けた外力にもとづいて軌道を修正することで,適応が可能と考えられた。これに基づき転倒回避を例とした軌道修正のモデルを構築し、2足歩行ロボットでその効果を確認することができたことから、運動制御モデルの構築の基礎概念を構築できたと考えている。 運動の動作効率や運動生成に必要な心理的アテンション量の増減の解析を基にした全身協調運動ダイナミクスモデルの構築については、ロボットの強い接触に対する人間の心理的アテンション量の増減について、質の良いデータを収集可能な実験システムを構築することに重点を置いたため、モデル構築までには至らなかった。しかし、今年度の実験システムで収集した質の良いデータを用いることで、全身協調運動ダイナミクスモデルの構築が当初の計画以上に円滑に進むことが期待できる。
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今後の研究の推進方策 |
人間とロボットが互いに移動軌道を協調的に調整しながら、それぞれの移動を実現する意図伝達手法の開発を継続する。これを実現するために今年度案出された双方向の意図伝達手段の方法論に基づき、たとえば、人間との距離がロボットの手が届く範囲に入った後(近接局)と前(中間局)等を分類した上で、局面ごとのロボットの適切な働きかけ手法について検討する。次に、ロボットの働きかけに対する人間の反応行動について、人間同士の意図伝達手法を参考にしながら、心理的・知覚的・力学的な観点よりより詳細に分析しつつ、ロボットに実装して基礎的な評価を行う。ロボットの適切な行動と人間の反応行動の検討を総合して、協調移動動作の局所的なモデル化を図る。 ダイナミクスモデル構築のためのもう一つのアプローチとして、2足歩行ロボットによる人間への能動的な働きかけを実現するために、働きかけ動作の生成と働きかけにともない受けた反力による転倒の防止という2つの要素を実現することを進める。既に軌道修正による転倒防止について構築したことから、次のステップとして働きかけ動作の生成について取り組む。 また、これまでに製作した触診ロボットマニピュレータを用いて、ロボットによる強い接触をともなう運動によってもたらされる人間の心理状態変化を検討する実験および人間とロボットの運動解析を行い、人間-ロボットの全身協調運動ダイナミクスのモデル化を検討する。その後、モデルに基づいた誘発動作をロボットに実装することを試み、個人特有の身体機能差や環境の変化に適合する運動支援を実現するための全身協調運動ダイナミクスモデルをリアルタイムにパラメータチューニングする計測制御技術についての検討を開始する。
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