研究課題
(A)接近~弱い接触による協調的な意図伝達人間とロボットが互いに移動軌道を調整しあうための協調的な意図伝達手法をより現実に近い動的な環境に適用した。これまでは、相対速度が比較的小さいすれ違いを想定していたが、実際の人間環境下における流れのある環境でのすれ違いや複数人とのすれ違いに対応するための協調移動行動戦略に関する検討を行った。また、27年度までの成果を踏まえて、ロボットの行動が人間に与える心理の変化、移動効率の変化、ロボット自身の移動効率の変化をそれぞれ定量化し、環境状況に応じてロボットが行動選択を取れるような行動戦略の基盤技術を開発した。(B)人間-ロボットの接触ダイナミクスモデル実環境下での2足歩行ロボットの安定した歩行を実現する手段として、路面状況の認識にもとづく歩容生成について研究を行った。具体的には、ハイブリッド型A*アルゴリズムによって、最適な歩容を生成するアルゴリズムを開発した。これにより、実環境下のさまざまな場面で、2足歩行ロボットがより高効率にかつ人間らしく歩行することが可能となる。他方、人間-ロボット協調系のモデルとして、ラットと小型移動ロボットによるインタラクション実験を行い、両者の協調に必要な要素の抽出を試みた。具体的には、小型移動ロボットがラットに対して適度な速度と軌道で接近を行うことで、ラットに興味およびそれにともなう快情動を生起させる可能性が示された。(C)強い接触による協調的な人間運動の誘発触診ロボットを用いて、ロボットによる強い接触をともなう運動によってもたらされる人間の心理状態変化の推定を行った。さらに、心理的な負荷が高いと考えられる強い接触、具体的には歩行リハビリテーションにおけるロボットの歩行への介入方法の研究を行った。介入によって心理的な負担を与えずに人間の運動誘発がもたらされることを被験者実験から確認した。
2: おおむね順調に進展している
本研究課題は、接近~接触の極近距離における人間協調技術のための基盤技術として、3課題を設定して取り組んでいる。28年度は、27年度までに開発してきた個々の技術群を体系化し、基盤的な技術までブラッシュアップさせるとともに、人間協調技術としての統合化に向けたモジュール化を図った。具体的には、心理面と物理面を考慮した協調移動行動戦略の基本フレームワーク、接触におけるダイナミクスモデルを開発した。また、強い接触時やロボットのアプローチに対する生理的指標に基づく不快感などの定量化を行った。これらをもとに、接近~弱い接触による協調的な意図伝達をしながら、人間-ロボットの接触ダイナミクスモデルに基づく、強い接触による協調的な人間運動の誘発を行う一連の協調移動制御のフレームワークの統合モデルを開発した。これらを人間共存ロボットに実装し、より現実に近い通路を模擬した動的なすれ違い環境に導入し、統合実証実験(D)を行った。ロボットからの適切な働きかけと制御に基づき確実に安全に通路を通り抜けられること、さらに、適切な意図推定とインタラクションを行うことで、移動の効率性だけでなく、心理的側面に関してもより効果が得られることが分かった。実際の人間環境下における流れのある環境でのすれ違いや、複数人とのすれ違いを行う29年度実施予定の統合実証実験(D)を行うことを想定し、上記のシナリオにおける人とロボットの協調移動行動の構築を行った。開発した技術は、力学的なモデルをベースとした接近時および接触時の人間反応(行動)モデルおよびロボットの行動モデルを形成するための基盤技術群であり、上述のような実シナリオでの人間協調技術への統合・接続性を考慮して開発されている。以上のことから、29年度において、ロボットからの能動的な働きかけに基づく人間協調技術を構築していくことがスムーズかつ効果的にできると考えている。
実環境には、病院や駅、ショッピングモール、スポーツ競技場など、多種多様な場所が存在する。さらに、すれ違う人には、老人、子供、運搬中の人、急いでいる人など多岐に渡る。この場合、上記の条件に応じた働きかけ戦略をあらかじめ記述しておくことは難しい。これまでに得られた基本的な働きかけ戦略モデル(グランドルール)を初期値として実装し、経験(移動)によって得られた知識(センサ情報)を適切に分析して、ロボットの行動スキーマとして獲得していく機能を取り込んでいくことも考えている。また、IoT (Internet of Things)と関連して、インフラやその他のロボットなどさまざまものと通信できることで、協調移動行動戦略は新たな方向へ展開も模索していく。技術的な難しさとサービスへの連結性を鑑み、それらのベンチマークとして、オフィスや病院などの比較的人の少ない環境での、人の意図推定に基づく経路決定や安全でスムーズな協調移動、展示会場などのかなり混雑しているが移動量は小さい環境での、能動的な接触や声掛けをうまく利用した協調移動実験を実施することを考えている。また、安全・安心な移動に不可欠なハードウェアに関しては、高精度トルクセンサを有する高応答性マニピュレータをはじめとする申請者らが開発してきた独自技術を洗練させ、ソフトウェアと統合する。28年度に開発した技術は、力学的なモデルをベースとした接近時および接触時の人間反応(行動)モデルおよびロボットの行動モデルを形成するための基盤技術群であり、上述のような実シナリオでの人間協調技術への統合・接続性を考慮して開発されているため、ロボットからの能動的な働きかけに基づく人間協調技術を構築していくことかスムーズかつ効果的にできると考えている。
すべて 2017 2016 その他
すべて 雑誌論文 (7件) (うち査読あり 7件、 謝辞記載あり 6件) 学会発表 (13件) (うち国際学会 11件) 備考 (1件)
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