研究課題/領域番号 |
25220201
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
篠田 雅人 名古屋大学, 大学院環境学研究科, 教授 (30211957)
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研究分担者 |
黒沢 洋一 鳥取大学, 医学部, 教授 (50161790)
佐藤 源之 東北大学, 東北アジア研究センター, 教授 (40178778)
島田 章則 麻布大学, 生命・環境学部, 教授 (20216055)
立入 郁 国立研究開発法人海洋研究開発機構, 統合的気候変動予測研究分野, 分野長代理 (30336185)
飯島 慈裕 国立研究開発法人海洋研究開発機構, 地球環境観測研究開発センター, 主任研究員 (80392934)
小宮山 博 国立研究開発法人国際農林水産業研究センター, 企画調整部, 部長 (40442719)
黒崎 泰典 鳥取大学, 乾燥地研究センター, 准教授 (40420202)
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研究期間 (年度) |
2013-05-31 – 2018-03-31
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キーワード | 自然災害 / 干ばつ / 砂漠化 / 黄砂 / 乾燥地 |
研究実績の概要 |
本研究はユーラシア内陸部にある乾燥地特有の4種類の災害を発生機構と時間スケールから関係づけ、それらへの対応を体系化することを目的とする。最近の気候変動研究によると、将来には世界各地で極端な気象の増加が予測されている。これらは、外的インパク トとして4D 災害(干ばつ Drought, 寒雪害 Dzud, 砂塵嵐Dust storm, 砂漠化Desertification)を頻発させる可能性があるため、4D災害の発生機構を気候メモリという視点から統合的に理解し、それらの影響を災害のリスク=外的インパクトの規模 x 乾燥地自然-社会システムの脆弱性(暴露、感受性、復元力で構成)という新しい枠組みでとらえる。 1.干ばつ・ゾドメモリの発見: 今世紀最大級の2009/2010年ゾドの状況について詳細な解析を行った結果、夏の牧草不足と冬の厳しい天候がモンゴル中部・西部で家畜や乳児の大量死をもたらしたことを示した。ここで、家畜死は乳製品不足を通して乳児死を起こした可能性を示した。 2.これらの成果は、第3回オックスフォード学際砂漠会議の招待講演で発表し、“Climate Hazard Crises in Asian Societies and Environments”という書籍に招待論文として掲載される。このなかで、干ばつやゾドのメモリ効果がダスト発生、社会経済活動や人間の健康にまで及ぶことを指摘し、乾燥地のハザード→災害までの一連のメカニズムを解明したさきがけ研究となった。 3.ゾドリスクマップ利用: モンゴル政府からの要請により、海外共同研究者(気象水文環境情報・研究所)がゾドリスクマップを作成し、議会の危機管理特別委員会、食料・農業常任委員会やドナー団体が参加するUNDPの会合で解説した。この地図は、危機管理庁などによるゾドへの多様な備えに利用された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
1.リスクモデルの作成開始はH27年度と予定されていたが、H25年度終わりに衛星データによる東アジアの黄砂ハザード(リスク)マップが完成、一般公開し、常時データを更新している。また、早期警戒システムの構築開始は、H28年度と予定されていたが、海外共同研究者が在職するモンゴル気象水文環境情報・研究所と共同でゾドリスクマップをH27年度に作成、当研究所と本研究のHPに公開し(http://tsag-agaar.gov.mn、http://www.4d-disasters.jp/)、政府の政策決定(当初は最終年度H29年度に予定)に利用されるようになった。これらの進捗状況は研究計画調書より半年~1年半前倒しとなっている。 2.上記のような研究進捗にともなって、研究計画調書ではH27年度にシンポジウムを開催予定であったものが、実際にはH26年度から開催し始め、計5回の国際シンポジウムを開催した。2、3回目のシンポジウムはモンゴルで開催し、研究成果の現地への還元に努めている。 3.上記のシンポジウム開催の前倒しに並行して、研究成果の世界の学会への発信のため、災害研究分野では世界有数のNatural Hazards誌への特集号掲載が採択された(H27年8月)。これは、研究計画調書には記述のない予想以上の研究成果である。
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今後の研究の推進方策 |
問題点: 官民学連携 本研究によって作成された早期警戒情報が政策決定者や現地住民に利用され、災害管理に生かされるために、この連携形成が大きな課題であった。 解決方法: モンゴルにおける災害管理の所管官庁である危機管理省のスタッフを招いた会合を開催する。モンゴル政府から要請を受け、作成したゾドリスクマップを改善し、定常的に災害管理に利用されるようにする。また、一般市民に対してはTV番組において解説し、HPに公開していく。 問題点: 4D災害のうち砂漠化のリスク評価手法は世界的にも確立されておらず、他の3D災害の研究に比べ遅れていた。 解決方法: 本科研費により、H27年度に植生学を専門とする研究員を招き、植生の質(種)の劣化からみた砂漠化評価に取り組ませ、方法論の開発を始めた。H28年度にはモンゴル側と砂漠化WGをつくり、この活動を活発化させる予定である。
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