本研究では、機能性分子イメージングプローブをデザイン・合成し、生きた状態での生体内分子が有する生理機能の直接観測を行う。この目的のため、生細胞及びin vivo(動物個体)における可視化解析のための化学原理を精査し、生命科学研究に応用可能なスペックを有する分子プローブの開発を行う。具体的には、(1)高感度19F化合物含有 MRIナノ粒子型プローブの開発とin vivoイメージング、(2)機能性小分子蛍光プローブ、および蛋白質の機能性分子ラベル化技術の開発及び生物応用を行う。これらの研究展開を行うことで、有機合成が得意とする多様な標的への分子設計と、分子生物学技術を融合させることができ、これまでにない機能性小分子デザイン法が確立される。この結果、生物個体内の分子動態解析への応用や蛋白質の生体内ラベル化法が可能となり、化学を用いた新時代の生命科学研究を開拓することを目指す。 19FMRIプローブに関しては、これまでの酵素活性検出型プローブの設計で得られた知見を活かし、アポトーシス時に発現が亢進するカスパーゼ-3を標的としたプローブを開発する。ナノ粒子型高感度19FMRIプローブであるFLAMEの表面をカスパーゼ-3基質であるペプチドを介し、シグナルをクエンチさせるGd錯体で修飾する。マウス体内に投与したのちに、アポトーシス誘導を行い、19FMRIによるシグナル検出を試みる。また、in vivoで破骨細胞活性を検出するため、適した低pH領域で応答するような蛍光色素を合成する。この色素にビスホスフォネート基を導入し、骨組織への送達を可能にしたプローブを開発する。開発したプローブをマウスに投与し長時間イメージングを行うことで、蛍光タンパク質でラベルした破骨細胞内のプロトンポンプと酸性領域との位置情報の相関を時空間的に解析する。
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