研究課題/領域番号 |
25220402
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研究機関 | 金沢大学 |
研究代表者 |
藤井 純夫 金沢大学, 歴史言語文化学系, 教授 (90238527)
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研究分担者 |
本郷 一美 総合研究大学院大学, 先導科学研究科, 准教授 (20303919)
足立 拓朗 金沢大学, 歴史言語文化学系, 准教授 (90276006)
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研究期間 (年度) |
2013-05-31 – 2018-03-31
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キーワード | 考古学 / 西アジア / 遊牧文化 / 新石器時代 / 青銅器時代 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、「肥沃な三日月弧 / Fertile crescent」の外側、すなわち遊牧西アジアの形成史を、広域遺跡調査を通して明らかにすることにある。具体的には、①「肥沃な三日月弧」からの派生:短距離移牧の成立過程(先土器新石器文化B後半)、②「肥沃な三日月弧」からの離脱:初期遊牧の成立過程(後期新石器文化~銅石器文化)、③「肥沃な三日月弧」からの自立:遊牧社会の形成過程(前期青銅器時代)、の解明である。これら諸課題に関わる基礎データを収集するため、計画2年次の平成26年度は以下3件の調査を実施した。
1.トール・グワィール1~3号遺跡(Tor Ghuwayr 1-3)の分布・発掘調査(課題③):ヨルダン南部ジャフル盆地における前期青銅器時代の円塔墓群を発掘し、遊牧社会成立期における遊牧民集団の墓制・葬制を明らかにした。また、墓域内墳墓構成の分析により、遊牧集団に固有の等質的・分節的な社会構造を探る手がかりを得た。 2.ジャバル・ジュハイラ遺跡(Jabal Juhayra)の第1次発掘調査(課題①②):ヨルダン南部ジャフル盆地における新石器時代の重層遺跡、ジャバルジュハイラの発掘によって、新石器時代短距離移牧から後期新石器時代初期遊牧への推移を追跡した。ただし、調査はまだ途中段階にあり、平成27年度に引き継がれる。 3.ワディ・シャルマ1号遺跡(Wadi Sharma 1)の継続発掘調査(課題①②):サウジアラビア北東部タブーク州における新石器時代移牧拠点の発掘によって、アラビア半島北部の遊牧化がレヴァント地方と時期的・内容的に連動していることを明らかにした。調査は継続中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ヨルダン南部のトール・グワイール遺跡群の調査は、計画通り完了。ただし、もう一つの目標であったジャバル・ジュハイラ遺跡は、数シーズンの追加調査が必要となった。これは、同遺跡が、予想に反して先土器新石器文化Bと後期新石器文化の重層集落であること、ダムや貯水槽などの水利施設を伴っていること、が判明したためである。そのため、全体の調査計画がやや後ろにずれることになるが、同一遺跡で遊牧化の推移を追跡できることは大きな収穫でもある。 サウジアラビアでの調査も、ほぼ順調である。ワディ・シャルマ1号遺跡の建造物規模・密度が予想以上に大きかったため、当初予定よりも発掘完了が遅れているが、これも半ば嬉しい誤算である。平成27年度の夏季調査で発掘が終了するめどが立っているので、その後直ちに遅れを回復したい。
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今後の研究の推進方策 |
上記の調査遅延分は、平成27年度の調査を都合5回、集中的に実施することによって回復する予定である。(代表者は、平成26年度末に所属研究機関のリサーチプロフェッサーに採択された。そのため、平成27年度から本研究へのエフォートを大幅に上げることができる。) ヨルダン南部ジャフル盆地では、ジャバル・ジュハイラ遺跡の継続発掘調査に集中する。6月および8月の、計2回の調査を予定している。この調査データを基に、遊牧化初期過程に伴う居住形態、集団規模・移動性、家畜飼養形態などの変遷を追跡する。 一方、サウジアラビアでは、ワディ・シャルマ1号遺跡の調査を夏で終え、その後直ちにウンム・グルナイン(Umm Qurnayn)、アル・バルカ(al-Balka)などの前期青銅器時代円塔墓群の調査に移行する。後者については、12月と3月の、計2回の調査を計画している。なお、これらの円塔墓群はヨルダン南部のトール・グワイール円塔墓群と同一系統と思われるので、両者の比較研究にも着手する。
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