研究課題
2015年度においては、各分野で研究を進め、学術的にもインパクトの大きな論文作成を行うことができた。具体的には、市場における不動産・不動産サービスの正確な価値の把握、国際的な不動産取引情報を用いた不動産価格の決定要因、高齢化や人口減少が不動産市場に及ぼす影響、不動産が家計行動に及ぼす影響、担保としての不動産の役割、不動産市場とバブル、経済成長との関係に関する理論モデル構築、といった分野において多くの論文を作成した。残りの2年間で、学術雑誌への投稿と掲載に向けた改訂を積極的に行うことを予定している。プロジェクトメンバー間での有機的な連携、課題設定、プロジェクトに関心を持つ国内外の研究者との交流を目的として、研究会(企業金融・企業行動ダイナミクス-HITREFINED研究会)をほぼ毎月1回開催した。一橋大学においても、マクロ・金融ワークショップを定期的に開催し、不動産市場のみならず、金融危機や経済成長のマクロ的な側面に係る研究発表と活発な議論を行った。さらに、国際コンファレンスを3回主催した。これらのコンファレンスには、不動産市場の価格動向の計測で主導的な役割を果たす研究者、不動産市場と貸出市場との関係について先端的な研究を行う研究者が多く参加した。また、国内公的機関(国土交通省、日本銀行、金融庁)とは研究成果報告・意見交換を、海外研究機関(BIS, IMF, OECD)とは先方のコンファレンスでの発表、当方研究会での発表などのやり取りを通じて、研究の進捗と実務や政策へのフィードバックを図った。
1: 当初の計画以上に進展している
不動産市場における価格メカニズムの解明と金融危機・経済成長との関係に係る仮説検証という、大別して2つの研究を進めてきた。前者に係る研究としては、不動産価格動向を把握するための価格指数のあり方、不動産価値を土地部分と建物部分とに分割する手法、REITの収益率の決定要因、といったテーマが挙げられる。これらのテーマは、不動産市場におけるストックの価値や収益率、不動産サービスの価格を正確に測ることにより、バブルを含めた不動産市場の変調を早期に捉えることを目的としており、国際的に生まれていた金融危機の再来を防ぐために不動産価格を迅速かつ的確に把握したいという需要に応える研究として高く評価されている。一方で、後者に係る研究は、不動産価格が変化することに伴う家計の資産効果、担保・銀行貸出チャネルを通じた不動産価格の変化による企業の資金調達環境・投資環境への影響、といったものである。これらの研究では、企業や家計にとって外生的な不動産価格へのショックに注目し、家計における消費の資産効果・資産ポートフォリオ選択、不動産市場と企業による資金調達可能性や投資行動との関係、金融機関における財務健全性や貸出姿勢が不動産市場から影響を受ける程度といったテーマについての成果を数多く生み出している。論文は、既に国際的な学会での発表機会を与えられるなど高く評価されている。2つの分野いずれにおいても、生み出される論文の質量ともに当初の予定を上回っている。加えて、以下の2点で当初目標を超える進展がみられる。第一に、不動産価格の変化を所与とする研究に加えて、経済主体の行動によって不動産価格が影響を受ける点に注目する研究を数多く実施している。第二に、当初の研究計画書には盛り込まれていなかったが、本プロジェクト採択時の最終インタビューで指摘された、国際的な観点を踏まえた研究、理論モデルを考慮した研究も推進している。
今後については、当初計画にある通り、不動産市場における価格メカニズムの解明、不動産市場と実体経済との関係に係る仮説検証、という2本の柱で引き続き研究を進めていく。その上で、今後特に注力するものとしては、以下の3点を予定している。第一に、当初の予定通り家計向けの大規模なアンケート調査を2016年度に行うとともに、高齢化が家計の資産選択に及ぼす影響を分析する。これまでの家計向けアンケート調査では、家計が保有する不動産の位置情報の精度が高くなかったために、不動産の価値やその変化を正確に把握することが難しかった。今回行う調査では、これらの点を克服することを目的とする。またこのアンケートでは、高齢化や人口減少が不動産を含む資産選択に及ぼす影響についても分析対象とする。第二に、土地供給、特に潜在的な土地供給量が、地形的な要因や土地の利用規制によってどのように影響を受けるかという点についての分析を進める。不動産に対する需要が高まった時の価格変化の程度は、地域ごとの潜在的な土地供給量によって左右される部分が大きいと考えられており、その点を分析に反映する。第三に、これまでに得られた分析結果を踏まえて、不動産価格が実体経済に影響を及ぼす程度の定量的な比較を進める。例えば、不動産価格の上昇による家計の資産効果は、借入制約の緩和に伴う企業の設備投資増大効果とどの程度異なるか、という点を検証する。なお、研究を進めるにあたり、研究体制においても若干の変更を行う。外部で関心を持って本プロジェクトに参加してきて、定期的にプロジェクトの研究会に参加し、本プロジェクトが研究成果を生み出すのに貢献してきた研究者のうち若干名を、連携研究者もしくは研究協力者にする。これによりコンパクトな研究組織を保ったままで、組織内での研究交流を促進する。
すべて 2016 2015 その他
すべて 雑誌論文 (60件) (うち国際共著 16件、 査読あり 15件、 謝辞記載あり 27件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (25件) (うち国際学会 11件、 招待講演 3件) 図書 (6件) 備考 (2件) 学会・シンポジウム開催 (3件)
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