研究課題
平成26年度は、スペクトロスコピーで検出可能な超強結合領域で発現する特徴を理論的に抽出することに成功した(共同提案者・海外研究協力者 S. Ashhab博士との共同研究)。また、超伝導回路等と強結合したスピン系のコヒーレンス寿命に関する常識を覆す理論的新知見を得た。この結果は、Phys. Rev. Lett .誌に掲載され、共同研究者 NTT-NII-大阪大-NICT 共同で報道発表を行った。各研究グループでの研究実績の概要は以下のとおり:NICTグループでは、初年度に構築した希釈冷凍機測定系とジョセフソン・パラメトリック増幅(JPA)技術を用いて、平均光子数1程度の非常に微弱なマイクロ波量子状態の位相敏感増幅に成功した。この結果を超伝導巨視的量子状態の高精度測定に適宜応用していく。NIIグループではダイヤモンドNV中心の電子スピン集団とボソン系のハイブリッドで出現するスクイージングについて、さらに検討した。特に、半古典的な解析との比較により、スクイージングや巨視的重ね合わせ状態のような特徴的な状態の出現のダイナミクスについて理解を深めた。また、ボソン系だけでなく、超伝導量子ビットとの相互作用の場合と比較するなど、集団が作る状態について多角的に議論した。大阪大学グループではN-V軸を結晶軸に対し、1つの方向のみに揃えることに成功した。通常は結晶軸に対し、4つの方向に向き得るが、この向きに依存してスピン状態間のエネルギーが変わるため、超伝導量子ビットと量子結合させるNV中心の数は全体の1/4のみであった。今回の制御技術により、同じ濃度の試料で比較すると、超伝導量子ビットと量子結合させる向きを持つNV中心の濃度を4倍にでき、量子結合の改善が期待される。
2: おおむね順調に進展している
H26年度は、超伝導量子回路等と強結合したスピン系のコヒーレンス寿命に関する常識を覆す理論的新知見が得られ、Phys. Rev. Lett .誌への掲載および報道発表が反響を呼ぶなど、進展があった。以下、各グループでの具体的な達成度を記す:NICTグループでは位相敏感増幅が可能なジョセフソン・パラメトリック増幅(JPA)検出技術を改良し、平均光子数1程度の基底状態付近の信号増幅技術を獲得した。超強結合状態の試料入手に向けて、[A]回路設計 による試料の設計・試作・測定を開始した。また、[B]集団増強効果による超強結合状態の準備に向けて 研究分担者(NII:理論研究、大阪大学:NVダイヤモンド)および、連携研究者(NTT、大阪市立大)と協力しながら研究は順調に進展している。NIIグループでは電子スピン集団の量子的なダイナミクスと、半古典的な系の解析を比較することで、量子的な状態生成の過程を理解することができた。また、さらに系を拡張することにより、新しい現象の可能性が示された。この解析は他の系にも応用可能である。大阪大学グループではN-V軸を結晶軸に対し、1つの方向のみに揃えることに成功した。これは超伝導量子ビットとNV中心のスピンによるハイブリッド系のために、NV中心の濃度が適度に存在し、かつコヒーレンス時間の長いダイヤモンド試料を得ようとする目的に対し、大きな進展である。
超強結合状態の観測に向けて、[A]回路設計 による超強結合試料の作製と測定を開始する(NICT、NTT)。また、[B]集団増強効果による超強結合状態の実現に向けて 研究分担者(NII:理論研究、大阪大:NVダイヤモンドの改良)および、連携研究者(NTT:複数量子ビット実験、大阪市立大:分子設計・合成 )と協力しながら研究を推進する。また、これまでに獲得した極微弱信号の位相敏感増幅検出技術を用いて、スペクトロスコピーによる超強結合基底状態の特徴抽出を試みる。以下、各研究分担グループの研究推進方策を記す:NICTグループでは、昨年度獲得したジョセフソン・パラメトリック増幅(JBA)技術を改良し、基底状態付近の量子状態制御・測定手段として、スクイーズされた真空ゆらぎの生成と測定を目指す。超伝導磁束量子ビットが [A]回路設計 [B]集団増強 によってマイクロ波共振器と強結合するよう設計された試料の作製・測定を繰り返し、理論が予言する スペクトロスコピーで検出可能な超強結合領域で発現する現象の観測を目指す。また、ダイヤモンドのNVセンタースピン集団を介した超伝導量子回路と可視波長光子との強結合の生成と制御を目指し、大阪大学グループと協力して希釈冷凍機温度での光学実験の準備を進める。NIIグループではこれまでの解析方法を元に、系をさらに拡張して半古典的な性質と比較しながら量子的なダイナミクスを理解する。これらの物理過程を用い、新奇現象の発現や理解、またこれら量子的状態の技術への応用方法について検討する。大阪大学グループでは、導入した設備をもとに、低温における共焦点レーザー顕微鏡装置と光検出磁気共鳴装置の高感度化に向けた改良を、引き続き行っていく。また、NV中心の濃度が適度に存在し、かつコヒーレンス時間の長いダイヤモンド試料が得られるよう、試料作製プロセスの評価を引き続き行っていく。
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すべて 雑誌論文 (5件) (うち査読あり 5件、 オープンアクセス 4件、 謝辞記載あり 4件) 学会発表 (21件) (うち招待講演 9件) 備考 (2件)
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