研究実績の概要 |
H29年度、代表者 仙場のNICTチームでは、超伝導人工原子・マイクロ波共振回路 結合系に於いて、(1)深強結合状態と超放射相転移の系統的理解(Physical Review A掲載論文)および遷移スペクトルによる結合強度概判定法の創出(Physical Review A 掲載論文), (2)深強結合領域における真空場や少数光子による巨大な光シフト(Lamb/ Starkシフト)の観測と解析(Physical Review Letters掲載論文), (3)人工原子共振回路超強結合系の時間領域における量子コヒーレンスの観測を行った.中でも(2)に関しては実験に用いた超伝導人工原子は、超伝導共振回路中のマイクロ波光子と非常に強く相互作用することで、これまでに人工原子で知られていたエネルギーシフト量のおよそ100倍の巨大なLamb(ラム)シフトと光子1個との相互作用でも準位反転が生じるほど顕著なStark(シュタルク)シフトを受けていることが明らかとなった。 今回、観測されたLamb シフトの大きさは、水素原子で最初に観測されたエネルギーシフト量の割合と比較すると6 桁(約218 万倍)巨大である.この非常に強い相互作用を巧みに利用できれば、量子状態の高速制御や、量子測定に伴う反作用最小化など重要な技術へ繋がる可能性がある.これらの研究成果を広くアピールすることを目的に, 日本物理学会誌に解説記事を発表した. 研究分担者の水落チーム(京大)では、他の量子系との量子結合(相互作用)の増強を図るために、N-V軸を結晶軸に対し、1つの方向のみに揃えたダイヤモンド中の集団電子(NV)スピンの高濃度化とコヒーレンスの改良に取り組んだ。方向制御を維持しつつ、これまでよりも一桁程度の高濃度化が実現したことを実証した。
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