研究実績の概要 |
昨年度導入した高速クロマトグラフィー装置を用いて、複数の界面活性剤の混合比を変えながら多段階で溶出する事により、一回の分離行程で単一構造の単層カーボンナノチューブ(SWCNT)を分離する新たな手法を開発した。この新たな分離手法により、市販のSWCNTを原料に、(9,4)および(10,3)の単一構造半導体型SWCNTの大量分離に成功した。半導体型SWCNTは光励起の蛍光を示すが、特に(9,4)はその励起および発光の双方の波長が、生体透過性の高い波長にそれぞれ一致している事から、血管造影剤として適している。そこで、電子冷却型近赤外カメラを導入し、安価な735nm帯のLED照明を励起光源とする事により、マウスの血管造影試験を行った。その結果、 (9,4)SWCNTは未分離のSWCNTに比べ1桁以上高い検出感度を示し、マウスの心臓の動きをとらえることに成功した。また、(9,4)は可視域に光吸収バンドを持たないため、ほぼ透明な半導体材料としても応用が期待される。一方単結晶作製を目指した取り組みとして、(6,5)SWCNTを多く含むとされる市販SWCNTを原料として、(6,5)型SWCNTの大量分離を行い、ミリグラムスケールの大量分離に成功した。高純度分離技術開発では、過剰投入法を用いて数種類の半導体型SWCNTをカラムに吸着させた後、多段階溶出法で徐々に溶出する事により、8種類のSWCNTに対して、超高純度の単一構造光学異性体分離に成功した。これらの光学異性体は対称な円二色性スペクトルを示す事から、不純物がほとんど含まれていない事が確認された。
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