研究課題
本研究の根本にある狙いは、電気的に材料の機能開拓を可能にする手段-電界効果-を、材料の枠を超えて活用し、省エネ・高効率な利用展開・材料間の融合的新機能創発を図るものである。その広い目的の中で、本研究では磁性体に着目し、中でも身近な金属の磁性を電界効果で自在に操る手法を確立し、その背景に眠るサイエンスの理解と応用展開を目指す。中でも、①電界効果により金属元素の電子数を増減させ、磁性が変化するメカニズムを解明すること、②天然には磁石として存在しない金属を電気的に磁石にすること、③磁場や電流に頼らない次世代の電気的磁気記録手法を確立すること、④ナノ構造の新規形成手法への展開を図ることを目指している。今年度論文成果として発表した主なものは下記のとおりである。(1)MgO/Co/Pt系では磁性の電界効果の観測にすでに成功していたが、絶縁体であるMgOと強磁性体であるCoの間に非磁性体のPdを挿入した系において、従来より1-2桁大きな磁気異方性の電界制御効率を得ることに成功した。(2)超高誘電率材料をゲート絶縁膜とした構造において、史上最大級の磁気異方性の電界制御効率を達成した。(3)ゲート電圧の符号に応じて磁気異方性の変調機構が異なる可能性を示した。(4)超常磁性状態の電界制御に成功した。(5)強磁性相転移の電界制御の起源に関わる、交換相互作用に対する電界効果を実験的に観測した。(6)極性酸化物基板上に直接製膜したCo超薄膜が、基板の極性に応じて全く異なる磁気的性質を示すことを発見した。(7)MgO薄膜層とイオン液体の二重誘電層を有する電気二重層トランジスタの基礎特性を評価した。(8)フレキシブル基板上に製膜したNi超薄膜において、史上最大級の応力誘起磁気異方性制御に成功した。以上のように、巨大な電界効果の原理実証と、そのメカニズムについて大きな進展があった。
2: おおむね順調に進展している
順調に成果を発表できており、当初の目標を超える研究の進展も多く得られている。当初予定の中の、「電界によるナノ構造の新規形成手法への展開」に関して、現在実験を進めているものの成果としてはまだ未発表であるため、今年度はこれにも力を割きたいと考えている。
順調に得られつつある成果を今年度も余すことなく論文発表していきたい。また、当初計画以上の成果をさらに発展させることに加え、最終年度は当初計画をしっかりと遂行・成果発表することを念頭に研究を遂行したい。
すべて 2017 2016 その他
すべて 国際共同研究 (1件) 雑誌論文 (13件) (うち査読あり 13件、 謝辞記載あり 12件、 オープンアクセス 3件) 学会発表 (38件) (うち国際学会 14件、 招待講演 9件) 備考 (5件) 産業財産権 (1件)
Applied Physics Letters
巻: 110 ページ: 022405-1-5
doi:10.1063/1.4973700
巻: 110 ページ: 062406-1-5
doi:10.1063/1.4976028
Electrochemistry
巻: 85 ページ: 100-104
10.5796/electrochemistry.85.100
Journal of Applied Physics
巻: 121 ページ: 123903-1-5
doi:10.1063/1.4978965
Applied Physics Express
巻: 9 ページ: 063004-1-3
doi:10.7567/APEX.9.063004
巻: 9 ページ: 063007-1-4
doi:10.7567/APEX.9.063007
巻: 109 ページ: 022401-1-4
doi:10.1063/1.4955265
巻: 109 ページ: 082403-1-4
doi:10.1063/1.4961621
Jounal of Applied Physics
巻: 120 ページ: 083906-1-4
doi:10.1063/1.4961564
巻: 109 ページ: 152403-1-4
doi:10.1063/1.4964419
AIP Advances
巻: 6 ページ: 115305-1-6
doi:10.1063/1.4967343
Scientific Reports
巻: 6 ページ: 38005-1-9
doi:10.1038/srep38005
巻: 10 ページ: 013004-1-3
doi:10.7567/APEX.10.013004
http://chiba-lab.t.u-tokyo.ac.jp/
http://www.t.u-tokyo.ac.jp/foe/press/setnws_20161130104231557269585593.html
https://www.jsps.go.jp/jsps-prize/ichiran_13th/10_CHIBA.html
http://www.funaifoundation.jp/grantees/awardees_up_to_now_15.html
http://www.natureasia.com/ja-jp/srep/abstracts/83504