研究課題/領域番号 |
25220606
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研究種目 |
基盤研究(S)
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
川瀬 晃道 名古屋大学, エコトピア科学研究所, 教授 (00296013)
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研究分担者 |
南出 泰亜 独立行政法人理化学研究所, その他部局等, チームリーダー (10322687)
林 伸一郎 独立行政法人理化学研究所, その他部局等, 研究員 (70360188)
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研究期間 (年度) |
2013-05-31 – 2018-03-31
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キーワード | テラヘルツ波 / 非線形光学 / イメージング / 分光 |
研究概要 |
本研究ではまず、テラヘルツ分光/イメージングシステムを高いレベルで実現し、従来不可能であった、厚手の郵便物や小包等に隠された禁止薬物の検出や、病院や薬局で処方される薬の間違いを包装上から検出すること、などを可能にする。 さらに、従来透過イメージングが困難であった複雑な構造のプラスチック製品やセラミクス製品などの欠陥検査へ供するテラヘルツヘテロダインCTを実現する。 なお、これらの分光・イメージング技術に対するニーズは、申請者らが共同研究を進めてきた多数の企業、税関研究所、警察研究所、などからの要請が大きく、世界的にも重要な課題であることを確認しており、それらを解決し得る新たな技術を日本から発信する意義は大きい。 研究期間内に明らかにする項目は、①光注入型テラヘルツパラメトリック発生検出システムを用いた超高感度テラヘルツ分光イメージングシステムの実現 ②光注入型テラヘルツパラメトリック発生検出システムを用いた超高感度テラヘルツヘテロダインCTシステムの実現 ③光注入型テラヘルツパラメトリック発生検出システムの1THz以下の低周波域への拡大、および④上記システムの各種応用に対する実用性能評価および基盤技術の醸成、 である。 特に、項目③において、理化学研究所の南出、林研究員に参加を要請し、1THz以下の領域における光注入型テラヘルツパラメトリック発生器の開発を目的としている。1THz以下の帯域では、紙、ビニール、プラスチック、セラミクス、衣類、試薬、錠剤、など本研究で対象とする測定ターゲット中に含まれる様々な物質の透過率が高くなる。低周波化にともなう、空間分解能低下とのトレードオフの問題はあるものの、特に禁止薬物や処方薬などをターゲットとする分光検査においては、イメージング性能よりも分光性能が重要となるため、低周波域への拡大は有意義である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今年度は、超高感度テラヘルツ分光システムに特化した光注入型テラヘルツパラメトリック発生検出システムを立ち上げた。(イメージング機構の立ち上げは次年度以降)。現在の試作機よりも励起光強度および光注入光強度を増大し、高出力、高感度化を図った。励起光に用いるマイクロチップNd:YAGレーザーは、半導体レーザー励起ゆえに出力の安定性が極めて高いが、注入光の周波数ドリフトが技術的課題であるため、長時間分光時のテラヘルツ帯スペクトルの安定性、再現性等を確認した。 また、関税中央研究所、科学警察研究所、国際郵便局、などからの要請の大きい、厚手のEMS(Express Mail System)封筒に隠された禁止薬物の透過分光を試みた。 また、今年度は、ヘテロダインCTシステムの光学設計および基本動作確認を行った。特に、テラヘルツ波のヘテロダイン検出に関し、位相の揃ったコヒーレント成分の検出が高解像度CTの鍵となるため、その基本性能の確認を製作した発生検出システムを利用して進めた。 なお、光注入型テラヘルツパラメトリック発生検出システムの1THz以下の低周波域への拡大については、理化学研究所で理論検討を進めた。
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今後の研究の推進方策 |
光注入型テラヘルツパラメトリック発生検出システムを用いた超高感度テラヘルツ分光イメージングシステムの実現に関しては、初年度に立ち上げた超高感度テラヘルツ分光システムに基づき、主成分分析法を用いた分光イメージング系を構築する。手順は、スキャンステージ系導入、テラヘルツ周波数を変化させマルチスペクトル画像計測、ターゲット物質のスペクトルの行列可、主成分分析によるターゲット試薬の画像抽出、に沿って進める。また、実際に、試薬類を厚手のEMS封筒やカバン・衣服に隠して分光イメージング測定実験を試みる。 他方、光注入型テラヘルツパラメトリック発生検出システムを用いた超高感度テラヘルツヘテロダインCTシステムの実現に関しては、26年度にテラヘルツヘテロダインCTシステムを構築する。まずは、波長固定で、空間分解能、散乱光除去性能、テラヘルツ波の回り込みの影響、などを確認する。さらに、THzヘテロダインCTと分光イメージング技術との組み合わせで、特定の試薬ターゲットのみの空間分布を可視化する。 なお、理研側は、非線形光学結晶の利得が低下する0.5THz~1THzの周波数範囲においても、テラヘルツ波出力の尖頭値が100W以上得られる光源開発を引き続き行う。まずは、励起光強度やシード光強度を増大し、選択的に発生させるアイドラー光の波長に対し利得集中を行う方法を導入する。また、ポンプ光ビーム径の拡大と、小さな位相整合角を同時に満たすような入射光学系の最適化を行う。
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