研究課題
前年度行ったキセノン含有液体シンチレータの純化により背景事象が約1/10に減少し、今年度は高品質のデータ採取を行うことができた。検出器は安定に稼働し、この1年間で蓄積された高統計データによる解析により0νββ探索のより厳しい制限を与える結果が期待される。一方背景事象の詳細な解析が進展しそれらの位置と数、時間変化などの解析から性質が明らかになってきた。ミニバルーンフィルム上の放射性不純物の他、検出器上部から落下侵入する塵に由来すると思われる微弱放射性不純物の可能性も高まった。これらの結果は本研究計画の柱の1つである新型ミニバルーン製作を行う上でのより高度なクリーン化を実現するための重要な基礎データであり、新年度にミニバルーン製作を行う目処が立ったと言える。外水槽検出器補修については納入された20インチ光電子増倍管(PMT)の性能検査を行いゲイン、暗電流の長期安定性、温度依存性についてチェックを行い、所期の性能を確認した。またPMT位置での磁場について地磁気補償コイルによる影響の評価を行いシールド対策についても確認した。また球形タンク赤道部は岩盤までの距離が小さいため環境放射線による背景事象を防ぐ為の対策を検討した。詳細なシミュレーション解析を行った結果、赤道部近傍ではPMTの光電面を赤道面に向け、高反射率のシートを追加することで検出効率を大幅に向上させ背景事象の除去を図る案が決まった。また外水槽検出器内部をモニターカメラで直接確認し、光反射シートを始めPMTの状態を調査した。その結果補修工事に大きな影響を与える問題はないものの、水中での光反射シートに光を透過するまだらな領域が多数生じており光反射率が空気中での測定に比べ低いことがわかった。なお外水槽の水漏れ防止について効果的な止水法を調査し有力な候補が見つかった。成功すれば純水装置による負担の大幅な低減が期待される。
2: おおむね順調に進展している
この1年間でカムランド禅実験での当初見つかった、予想外の背景事象の解明が進み、今後の計画の進め方について種々の検討を行うことができた。前年度行ったキセノン含有液体シンチレータの純化に時間を要したため、当初の計画からやや遅れたものの、その後の高品質データの解析の結果、本計画の目的である新型ミニバルーンの導入と外側検出器の高感度化に必要な種々の対策が検討され、それらがほぼ固まったと言える。本研究計画の最終目標である、高感度0νββ探索実験の一層の高感度化の実現に向け大きく進展したと言える。
3年次に当たる平成27年度は新型ミニバルーンの製作を完了させ、検出器への投入に向けて、キセノン含有液体シンチレータのさらなる純化を行う。これと並行して外側検出器改修のために検討、準備された種々の対策を実施し、これを完了させる。その遂行に特に問題はない。
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すべて 雑誌論文 (3件) (うち国際共著 2件、 査読あり 3件、 オープンアクセス 3件、 謝辞記載あり 2件)
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