研究課題/領域番号 |
25220704
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
白井 淳平 東北大学, ニュートリノ科学研究センター, 教授 (90171032)
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研究期間 (年度) |
2013-05-31 – 2018-03-31
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キーワード | ニュートリノ / 2重ベータ崩壊 / カムランド禅 / 液体シンチレータ / キセノン |
研究実績の概要 |
蓄積されたデータの解析により背景事象が解明され、それらへの対策が明確となり新型ミニバルーンの製作に向けて方針が固まった。すなわち最も支配的な110mAgが純化により1/10に減少し、替わってミニバルーン表面からの214Biの寄与が支配的となった。それ以外(10Cと2νββ崩壊)の寄与は小さくかつミニバルーン製作と直接関係はない。すなわち製作環境のチリや埃を極力排除しミニバルーンへの付着を防ぐことが最重要であることが改めて認識された。方策として製作場所に埃の可視化装置を導入し、作業者からの埃の発生と振る舞いを詳細に調べ以下の改善を行った;2段階の更衣室およびクリーンウェアの導入、ミニバルーン保護フィルムの付加、フィルム自動溶着機の導入、作業用具の微量分析、静電気除去装置の改良などである。そして適正な湿度が可能となる夏場を中心に行った作業は順調に進展し本体部の製作を終了した。また既存のミニバルーンの検出器からの撤去も無事終了した。 引き続き外水槽検出器の再建工事を行い、光電子増倍管(PMT)の撤去と高量子効率型を含む新PMTの設置、赤道部の検出効率向上のための改良を行った。後者はPMTの光電面を赤道部に向けることと、光反射効率の高いタイベックシートの導入である。さらに水漏れ対策として水槽内面の防水膜の補修を行った。またカムランド検出器球形タンクの安全性についてタンク板厚の測定と専門家による目視チェックも行った。 今年度行った以上の項目は本研究計画が目指す0νββ崩壊探索実験カムランドの高感度化への要である。次年度に予定する新ミニバルーンの検出器への設置によるキセノン量の倍増と、新たなPMTおよび新型タイベック反射膜導入による大幅な検出効率の向上が実現すれば世界中で発見を目指してしのぎを削る0νββ探索において他の追随を許さぬ最高感度となることが期待される。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
これまでに蓄積されたデータの分析を行った結果、昨年度行ったキセノン液体シンチレータの蒸留純化により、信号領域で主要な背景事象であった110mAgが10分の1に減少したことの他、背景事象の位置や時間的変化について詳細な分析を行うことができた。その結果214Biの除去が重要であり新たにクリーンなミニバルーンと交換する以外に感度の向上は望めないこと、ミニバルーン製作上で最も重要なことは環境のクリーン化、すなわち徹底的な埃の排除が最重要であることが改めて理解され、対策を検討し製作に入ることができ予定通りミニバルーン本体の製作が終了した。引き続き行った検出器からのキセノン回収とミニバルーンの取り出しも無事修了し、外水槽再建工事も順調に進捗し予定通り終了した。これにより新年度はミニバルーンの投入と、外水槽検出器の稼働による高品質データの取得を行うことが可能となった。計画は順調に進捗していると言える。
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今後の研究の推進方策 |
新年度は新たに製作したミニバルーンの検出器への設置を行う。設置に当たっては前回のミニバルーン設置の経験を活かし清浄度の改善と安全性の確保に細心の注意を払う。これに先立ちすでに回収したキセノンを増量し液体シンチレータの蒸留純化を行う。再建した外水槽検出器はすでにフロントエンドおよび高電圧電源への接続を終え注水が進行中である。すなわち新年度は本計画が目指す高品質データ採取への準備の最終段階である。順調に進めば検出器の飛躍的な高感度化が実現し、マヨラナ有効質量の探索感度がいよいよ逆階層領域に到達することが期待される。それは他の追随を大きく引き離す世界最高感度の0νββ崩壊探索の実現であり、素粒子および宇宙物理学への新たなインパクトを与えるとともに貴重な知見が得られるものと期待される。
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