研究課題/領域番号 |
25220706
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研究機関 | 千葉大学 |
研究代表者 |
吉田 滋 千葉大学, 理学(系)研究科(研究院), 教授 (00272518)
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研究分担者 |
間瀬 圭一 千葉大学, 理学(系)研究科(研究院), 助教 (80400810)
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研究期間 (年度) |
2013-05-31 – 2018-03-31
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キーワード | ニュートリノ / 宇宙線 / 素粒子実験 / 南極 |
研究実績の概要 |
IceCube 実験 における超高エネルギー宇宙ニュートリノ解析で問題となっていた検出器信号の出力飽和現象をよく理解するため、実験室内にテストベンチを製作し高輝度紫外光に対する信号応答を計測した。輝度の絶対値をコントロールする高輝度光パルスを照射しデータを取得した。今年度は照射する光パルスの輝度と個々の光子の時間情報の正確な測定に成功し、次年度からの本格的な信号応答計測とそのモデリング開始の基礎を与えた。
従来の超高エネルギー宇宙ニュートリノ解析では、事象の形状に無関係に信号探索条件を設定していた。ミューオンニュートリノおよびタウニュートリノ事象検出感度をより増強するため、トラック形状の事象とカスケード事象の形状に分けて探索条件を設定することを念頭に、手法の具体的検討に着手した。シミュレーション事象とサンプルデータを比較検討した結果、トラック事象仮説を基にアルゴリズムを改良して事象をトラック形状にフィットした結果得られる「フィット良さ指数」がトラックー非トラック事象を弁別する変数として100 PeV を越える超高エネルギー領域で有効に機能することが分かった。
IceCube 拡張実験として隣に建設予定のARA実験用の電波検出器を日本国内で製作するための準備を実施した。必要な部品調達経路の開拓及び製作した検出器が性能通りに機能するか否かを試験するためのシステム作りを完了し、次年度初頭に最初の検出器製作を予定している。ARA実験における日本グループの責任分担項目である、氷河内埋設検出器からの信号を氷河表面に伝送するシステムの開発にも着手した。摂氏マイナス40度でも機能し、電波雑音を防護しながら電波信号を増幅して光信号に変換して光ファイバーを介して伝送するシステムである。4ステーション分の装置を製作し、現在キャリブレーション測定を実施中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
IceCube 実験による超高エネルギー宇宙ニュートリノ解析では、最新観測データによる探索に向けて従来の手法をさらに改善することにメドが立った。次年度に最終的な詰めを行い3年目に探索結果を公表するという当初のスケジュールに沿う形で各研究要素が進行している。
ARA 実験の検出器製作及び極低温化で動作する信号伝送システム製作は初めての経験であったため製作作業は予定より遅延したが、目標としていた装置の製作技術の習得はできたと考えている。本年度及び次年度に製作する装置の試験測定およびビーム実験によって、製作した装置の定量的な評価を行うことが重要であると認識している。
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今後の研究の推進方策 |
IceCube 実験解析はトラック事象とカスケード事象の弁別を信号事象探索アルゴリズムに組み込む手法の最適化を実施する。また氷河表層に展開する空気シャワー検出装置 IceTop 検出器を Veto することで主要なバックグラウンドである大気ミューオン事象を除去する手法の検討に着手する。IceCube検出器の飽和信号応答測定計測を開始し、その応答をモデル化して検出器シミュレーションに組み入れる。これにより飽和信号を補正するためのシミュレーションスタディーが可能となる。
ARA検出器の製作を進め、電波暗室内でキャリブレーション測定を行うことで基本性能が満たされていることを確認する。また実験手法の信頼度を高め、検出器の信号応答機構を詳細に理解するために、アメリカにおけるビーム実験の準備に入る。
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