研究課題
本課題の3年目である平成27年度は、今後、トポロジカル絶縁体・超伝導体のデバイス加工を通じて新物性を検証・解明する研究を展開していくための基礎となる実験技術の開発に重点を置いた。その結果、廃止までの半年間で以下の2つの重要な成果を得た。(1)トポロジカル絶縁体薄膜には上面と下面の両方にトポロジカル表面状態が存在するので、今後、表面状態中の輸送現象に関する実験を高度化していくためには、これらのフェルミ準位を独立に電界制御できることが望ましい。そこで我々は、サファイア基板上にMBE成長させたバルク絶縁性を有する高品質(Bi1-xSbx)2Te3薄膜をSi/SiO2基板上に移し換える技術を開発し、下面側からの電界制御を可能にした。これを昨年度開発した上面側の高効率電界制御技術と組み合わせることで、上面と下面のフェルミ準位を独立に電界制御できる「デュアルゲート」デバイスを開発することに成功した。これまで、単結晶を劈開した薄片についてはデュアルゲート制御の報告はあるが、広い面積を持つ高品質薄膜で高効率なデュアルゲート制御に成功したのはこれが世界初である。(2)現在研究対象となっているトポロジカル超伝導体候補物質の多くで、デバイス加工をすると超伝導が失われてしまうことが知られており、これが研究進展の大きな妨げとなっていた。そこで我々は、デバイス加工に適したナノ薄片の超伝導試料を合成する技術の開発に取り組み、有力なトポロジカル超伝導体候補物質であるInxSn1-xTeのナノ薄片試料の作製に成功した。さらにそのナノ薄片を、電子ビーム描画技術を用いてデバイス加工し、抵抗率測定において急峻な超伝導転移を観測することにも成功した。これは今後、トポロジカル超伝導体におけるマヨラナ準粒子を検証するためのデバイス作製に道を拓く重要な成果である。
27年度が最終年度であるため、記入しない。
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すべて 雑誌論文 (6件) (うち査読あり 6件、 オープンアクセス 1件、 謝辞記載あり 6件) 学会発表 (6件) (うち招待講演 3件) 備考 (1件)
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