研究課題/領域番号 |
25220802
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研究種目 |
基盤研究(S)
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
大須賀 篤弘 京都大学, 理学(系)研究科(研究院), 教授 (80127886)
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研究期間 (年度) |
2013-05-31 – 2018-03-31
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キーワード | ポルフィリン / 環拡張ポルフィリン / ポルフィリンテープ / サブポルフィリン / メビウス芳香族性 |
研究概要 |
[26]ヘキサフィリンとポルフィリンがメゾーメゾ結合したハイブリッド分子を合成し、酸化してそのハイブリッドテープに変換した。亜鉛ポルフィリンーヘキサフィリンー亜鉛ポルフィリンのハイブリッド3量体分子の多量化反応をさまざまな反応条件で試みたところ、室温において、DDQとSc(OTf)3、で酸化することにより中程度の収率で、亜鉛ポルフィリンのメゾーメゾ結合反応が進行することがわかった。現在、12量体までの単離に成功している。更に、伸長限界に挑戦する予定である。上記ハイブリッド3量体分子の酸化的縮合により、完全共役平面型ハイブリッドテープを合成したところ、1750 nmにシャープな吸収帯を示し、有望であることがわかった。ハイブリッドテープの単結晶構造解析にも成功し、極めて平面性の高い構造を有していることを明らかにした。1,3-フェニレンやチオフェンやピロールで内部架橋した[26]ヘキサフィリンを合成した。予想通り、[18]ポルフィリン電子系と[26]ヘキサフィリン電子系のデュアルな芳香族系を持つ分子であることがわかった。これらの分子は、アヌレノアヌレンのポルフィリン版とも言える全く斬新な芳香族性分子といえる。メゾフリーサブポルフィリンは、NBS臭素化によりメゾブロモサブポルフィリンに定量的に変換でき、これを基に様々な置換基導入が可能である。メゾブロモサブポルフィリンの還元的カップリングにより、メゾーメゾ結合サブポルフィリン2量体を合成したところ、室温ではメゾーメゾ結合周りで自由回転しているが、低温では回転が遅くなることがわかった。また、サブポルフィリンとグリニャール試薬の反応によるB―C結合を持ったサブポルフィリンの合成を行った。サブポルフィリンの基本的な物性であるアキシャル交換反応の反応機構の解明も行う。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
「超ポルフィリンの化学」としては、官能基化ポルフィリンやポルフィリン多量体の化学、環拡張ポルフィリンの化学、サブポルフィリンの化学の三つが中心課題であるが、いずれの課題においても、進展が見られ、今後の展開が有望である。官能基化ポルフィリンの化学としては、ベータヨードポルフィリンにKnochelの方法を適用することで、ポルフィリニルグリニャール種の生成法を開発した。生成したポルフィリニルグリニャール種は、カルボニル化合物と反応し、対応する付加体を高収率で与える。また、有機亜鉛試薬や有機銅試薬にトランスメタル化できることも分かった。また、メゾフォスフォニルポルフィリンを酸化すると全く形式の新しい縮環ポルフィリンが生成することを発見した。ポルフィリン多量体の化学としては、ポルフィリンーヘキサフィリンーポルフィリンからなるハイブリットの化学が大きく前進している。ケイ素を環拡張ポルフィリンの一種であるヘキサフィリンに導入できる方法を開発した。生成したケイ素錯体は、メビウス芳香族を持つことが分かった。ノナフィリンのニッケル錯体が、多段階の可逆な酸化還元反応を行うことを発見した。最大、10の可逆な酸化還元が可能で、興味深い。また、デカフィリンのパラジウム錯体が、世界最大のメビウス芳香族分子であることも分かった。サブポルフィリンの化学の進展も著しい。ABC型メゾアリール置換サブポルフィリンの合成に成功し、そのB-Aryl体で光学分割に成功した。メゾフリーサブポルフィリンのイリジウム触媒によるベータ位選択的ホウ素化反応を開発し、それを足がかりに種々の置換基をベータ位に導入することができた。
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今後の研究の推進方策 |
今後も、「超ポルフィリンの化学」としては、官能基化ポルフィリンやポルフィリン多量体の化学、環拡張ポルフィリンの化学、サブポルフィリンの化学の三つを中心課題として、進めていく予定である。ポルフィリニルグリニャール種を利用して、ポルフィリン側鎖にケイ素官能基を導入する。予備的な実験に成功しており、有望である。ケイ素―ケイ素単結合でポルフィリンを架橋した化合物を合成し、ポルフィリン間の電子的相互作用を調べる。続いて、ゲルマニウムやスズをポルフィリンの側鎖に導入する。酸化による新しい縮環ポルフィリン合成法の拡張を図る。ポルフィリンーヘキサフィリンーポルフィリン5量体や7量体の合成に挑戦する。ヘキサフィリン以外の環拡張ポルフィリンへのケイ素の導入を試みる。ケイ素が適度の分子捻れを引き起こすため、大型の環拡張ポルフィリンへの数個のケイ素導入により、大型メビウス芳香族化合物やメビウス反芳香族分子の開発を行う。環拡張ポルフィリンの一つの特徴として、多段階の酸化還元状態を安定に取ることができるという性質がある。これを生かして、デカフィリンやテトラデカフィリンなどの大型の環拡張ポルフィリンを用いて、多電子リザーバーとしての可能性を探る。サブポルフィリンの化学を進展させる。サブポルフィリンハイドライドの合成に成功した。その還元能力を詳しく調べる。また、色素増感太陽電池の色素としてのサブポルフィリンの利用を検討する。サブポルフィリンへの新しい官能基導入方法を開発する。
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