研究課題
i) 完全共役したポルフィリンテープにカルボニルを導入することで、分子全体に広がった共役を切断することなく、分子を曲げることに成功した。曲がった分子構造は結晶構造解析により明らかにした。これらのカルボニル基は還元してアルコールやメチレンにすることができ、曲がったパイ平面を生かしたフラーレン類の捕捉に成功した。。ii) ヘキサフィリンのケイ素錯体が捩れた分子構造を持つメビウス芳香族分子であることは以前報告したが、ゲルマニウムやスズ錯体も同じように捩れた構造を持つメビウス芳香族分子になることがわかった。スズ錯体では、スズの重原子効果により、系間交差が促進され、三重項励起状態が効率よく生成することがわかった。この三重項励起状態の過渡吸収スペクトラを測定したところ、反芳香族ポルフィリノイド特有のスペクトルを示すことがわかった。iii) サブポルフィリンの一つのピロールを除去したサブクロロピンの合成に成功し、その構造をあきらかにした。サブクロロピンの吸収スペクトルは、サブクロリンに似ていることがわかった。この手法を幅広く展開することにより、ピロールを様々な複素環に置換した化合物の合成を行った。iv) ポルフィリンの隣に窒素やホー素やリンを導入し、縮環して平面化した分子を合成した。窒素を導入したポルフィリンのカチオンラジカルは非常に安定で、水にも酸素にも反応しないことを明らかにした。リンを導入した分子でのリンの反転障壁のエネルギーが異様に低いことを発見した。また、リンオキシドを縮環してた亜鉛ポルフィリンが重クロロフォルム中で二量化するが、この二量化反応はエントロピーの増大により進行するという発見を行った。
1: 当初の計画以上に進展している
ポルフィリノイドのπ電子系は非常に柔軟であり、外部摂動に対し敏感に応答し、新しい物性や反応性を示す。こうした点に着目して、我々は世界に先駆けて新規なポルフィリノイドの開発を行ってきた。申請者のポルフィリノイド開発は世界のトップレベルにあり、これまでに、ポルフィリンのメゾーメゾ結合反応やそれを利用した世界最長単分散分子、世界最小のHOMO-LUMO Gapを持つ中性分子、環拡張ポルフィリン、メビウス芳香族分子、サブポルフィリン、ポルフィリンピンサー分子などを次々に開発してきた。これらの研究の学問的意義や独創性の高さは国際的に高く認知されている。近年、われわれの研究に刺激されて、共役、縮環、変形、環拡張ポルフィリノイドの化学が世界的に急速に広がりつつあるため、我が国での関連研究を戦略的に推進する必要がある。また、最近では空気中で安定に取り扱える開核系分子の開発も精力的におこなっている。これらもポルフィリノイドのπ電子系の柔軟さを反映した分子群であるといえ、ポルフィリン化学に留まらず、有機ラジカル化学にも大きな波及効果をもたらしつつある。
研究は概ね順調に進行しており、大きな計画変更はない。当初の目的であった環拡張ポルフィリンの化学、環縮小ポルフィリンの化学、ハイブリッドテープの化学に加えて、ポルフィリノイドにおける安定ラジカル種の化学やヘテロ原子縮環ポルフィリンの化学が予想以上に進行しているため、これらの探求も積極的におこなう。世界最大の芳香族化合物が溶液中では、生成していると思われるが、単離に成功していない。これらの化学種の単離や構造決定にチャレンジする。また、ポルフィリンアミニルラジカルの合成を行い、ジアミニルラジカルやトリアミニルラジカルの合成も検討する。メゾ無置換のサブポルフィリンの母核であるサブポルフィンの合成も検討する。歪んだ三次元構造をもつπ共役分子や多段階酸化還元可能な分子を創出し、新奇なπ電子系の開発に取り組む。
すべて 2017 2016
すべて 雑誌論文 (44件) (うち査読あり 44件) 学会発表 (52件) (うち国際学会 13件、 招待講演 3件)
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