研究課題/領域番号 |
25220805
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研究種目 |
基盤研究(S)
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
君塚 信夫 九州大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (90186304)
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研究期間 (年度) |
2013-05-31 – 2018-03-31
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キーワード | 自己組織化 / 金属錯体 / 誘電性 / アップコンバージョン / ナノ界面 / エネルギーマイグレーション |
研究概要 |
本年度は、双極子発色団を含む仁座あるいは三座架橋配位子と脂溶性二核 Rh 錯体 (Rh2)の自己組織化により、一次元配位高分子(L1)、三次元配位高分子(L3)の形成について検討した。その結果、Rh2、L1をクロロホルム中で混合すると、瞬時に赤色溶液が得られ、これが錯体から配位子へのMLCT吸収であること、また1H-NMRより一次元錯体鎖が1:1組成で形成されることを明らかにした。この一次元錯体鎖はデカンなどの非極性溶媒中においても形成され、その安定度定数はクロロホルム中よりも大きくなった。一方、Rh2、L3の組み合わせにおいては、クロロホルム中でマイクロゲル粒子として安定に分散するものの、デカンには分散せず沈殿した。このことは、この組み合わせでは3次元架橋構造が形成されるためと考えられる。次に、Rh2とL1,L3の三成分をデカン中に分散させたところ、L1-Rh2の成分からなるマトリックス (溶液) と L3-Rh2の成分からなるドメインにミクロ相分離した粘調な溶液を得が得られた。興味深い事に、光学顕微鏡観察において相分離構造が観察された。顕微紫外吸収スペクトル測定から、この構造は直径~7.6 ± 7.2 μm のRh2-L3ドメイン(疎媒性ドメイン)が、その表面(界面)をRh2-L1の親水性錯体ナノファイバーにより安定化されたミクロ相分離構造であることが確認された。この成果は、適切に分子設計だれた金属錯体と架橋配位子の溶液自己組織化により、ブロックコポリマー型ナノ錯体の形成、ならびにその相分離構造形成を達成したはじめての例である。 また、フォトンアップコンバージョンシステムの開発についても並行して研究を進めた。アントラセン発色団を含む分子性液体に、脂溶性Pt(II)ポルフィリン錯体を分散し、光励起すると、効率のよいアップコンバージョンがおこることを初めて明らかにした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
配位子と金属錯体の自己組織化により、次元構造を制御したナノファイバー錯体、ナノ粒子錯体を開発したばかりか、その3元系において、自発的なブロックコポリマーの形成に初めて成功した。また、三重項ー三重項消滅に基づくフォトンアップコンバージョンを、無溶媒液体系で初めて実現した。大変興味深いことに、液体アントラセンをアクセプターとするフォトンアップコンバージョンは酸素存在下でも効率良く起こることを見いだした。すなわち、三重項エネルギーマイグレーションが高効率でおこる分子凝縮系であるために、酸素による三重項失活が影響しないこと、またアルキル鎖による酸素ブロック効果によるものであると考えられる。以上より、当初の計画以上に研究が進展したと判断できる。
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今後の研究の推進方策 |
双極子配位子を含む配位高分子については、ひきつづき強誘電特性の評価を行う。また、分子凝縮系フォトンアップコンバージョンについては、イオン液体や液晶、溶液分子集合体系など、様々な分子組織系において、三重項エネルギーマイグレーションに基づくアップコンバージョンを実現し、分子組織化に基づくフォトンアップコンバージョン制御の概念を一般化する。
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