研究課題/領域番号 |
25220806
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
真嶋 哲朗 大阪大学, 産業科学研究所, 教授 (00165698)
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研究分担者 |
藤塚 守 大阪大学, 産業科学研究所, 准教授 (40282040)
小阪田 泰子 大阪大学, 産業科学研究所, 助教 (00579245)
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研究期間 (年度) |
2013-05-31 – 2018-03-31
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キーワード | 光エネルギー / 単一分子蛍光イメージング / 光触媒 / 光化学 |
研究実績の概要 |
太陽光エネルギーを化学エネルギーに変換する光エネルギー変換系の実用化を目指して、ナノ触媒の高活性化、広波長領域の光に応答する光触媒の開発を行った。特に、ナノ構造制御によって、物質の酸化還元の制御が可能となることを、特に、基板上で簡単な合成が実現できる、酸化チタンメソ結晶を利用した、様々な高効率光触媒の開発を行った。また、金ナノ粒子などの材料や、金ナノ粒子と酸化チタンメソ結晶との複合体を用いた可視光および近赤外光応答型光触媒の開発を行った。それらの光触媒反応は、過渡吸収法、過渡発光法、共鳴ラマン分光法、単一分子蛍光分光法などによって検討し、その反応機構や、光触媒反応サイトの空間分布を調べ、反応性と表面構造との関連性を明らかにした。特に、酸化チタンメソ結晶に金ナノ棒を吸着させた複合体では、可視光・近赤外光照射によって水の分解によって水素が発生することを見出した。 また、超分子、オリゴマー、高分子、DNA、貴金属ナノ粒子などにおける励起エネルギー移動、電荷分離、電荷再結合、酸化還元反応、活性種の発生と拡散などを過渡吸収法、過渡発光法、共鳴ラマン分光法、単一分子蛍光分光法などによって観測し、ナノ触媒としての機能を明らかにした。特に、金ナノ粒子と白金ナノ粒子をともにグラフェンに付着させた複合体においては、可視光照射下、金ナノ粒子プラズモン共鳴励起により金ナノ粒子から白金ナノ粒子への電子移動が、グラフェンによって効率よく進行して、白金ナノ粒子上で水の分解によって水素が効率よく発生することを見出した。また、水分子の一重項酸素の発生と、拡散を高感度にモニターするための蛍光プローブ分子の開発を行い、生体細胞中での一重項酸素の発生、拡散について明らかにした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
概ね順調に進展している。 単一粒子、単一分子計測法を確立し、超解像蛍光イメージングにより、各種の光触媒、ナノ材料系において、単一粒子、単一分子レベルの光触媒反応、光機能性の実測に成功している。この手法は当研究室で新たに開発されたナノ触媒の評価に使用され、金ナノ粒子とのメソ結晶複合化触媒系や、2種の金属酸化物半導体より形成される複合体光触媒や、可視光・近赤外光の照射によっても駆動する複合触媒系や、環境問題やエネルギー問題に対応できるような、安全・安価・安定な光触媒を開発した。これらの知見に加え、フェムト秒拡散反射測定、固体NMR測定、などや、FDTD計算により、光触媒反応についてさらに高度化した解析を行い、新たな学理の構築を目指している。また、他の目標についても、それぞれ順調に進展していて、今後十分な成果がえられることが期待できる。 本研究課題の開始以後、その研究成果は、Nat. Commun.、J. Am. Chem. Soc.、Angew. Chem. Int. Ed.、ACS Nanoなどのトップクラスの国際誌に、すでに100件以上の論文として発表した。また、本研究課題に関連して、2016 IUPAC光化学国際会議、2013-2016 KJFP国際会議などの国際会議を主催した。さらに、研究代表者の真嶋は本研究に関連し、2013年以降に、2013 国際光化学会議、2015光化学ゴードン研究会議、2016韓国化学会創立記念会議などの主要な国際会議で、合計20件の基調講演、合計60回の招待講演を行っていることは、本研究が国内外に大きなインパクトを与えていることを示している。さらに、特許出願5件、新聞などの報道15件も行い、また、生体内の活性酸素検出を実現するために開発した蛍光プローブが、2016年2月に試薬会社により世界に発売開始されるなど、関連分野、および社会への波及も大きい。
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今後の研究の推進方策 |
化石燃料社会、電気エネルギー社会の次に、水素エネルギー社会の到来が予想され、その根幹をなす水分解による水素生成の光触媒の開発が必要不可欠である。そのためには、半導体光触媒と白金などの助触媒の使用が提案されている。より高効率で、かつ安価・安定な半導体ナノ光触媒の開発と、安価・安定な助触媒の開発が急務である。そこで、基板の利用により簡単に合成可能な、メソ結晶構造の酸化チタンを利用し、その上で、さらに界面活性剤の利用によって特異的結晶面の成長を行い、3次元結晶構造制御による、高効率光触媒の開発と、その反応機構の解明を行う。また、地球規模のエネルギー問題、環境問題の解決を目指した、サステイナブル社会の構築のためには、太陽光の有効利用が必要である。特に重要なことの一つは、可視光および近赤外光の照射によって触媒として作用する光触媒の開発である。そこで本年度は、可視光および近赤外光領域に吸収をもつ炭化窒素や黒リンなどのシート構造の光増感剤と、金属酸化物半導体との複合体光触媒の合成を行い、その反応機構を明らかにするとともに、新しい光触媒を開発する。この数年来、光触媒、複合ナノ材料、助触媒として特に注目されているのが薄膜構造あるいは2次元ナノ構造材料であり、それらの複合材料においては、2次元構造のナノ材料間の界面間の電子移動がその機能を支配する重要な因子となることがわかってきた。そこで本研究では、2次元ナノ構造材料間の界面電子移動についても、単一粒子、単一分子レベルでの解明を行い、2次元ナノ構造材料間の界面構造制御の知見を得る。 また、超分子、オリゴマー、高分子、DNA、貴金属ナノ粒子などにおける励起エネルギー移動、電荷移動、電荷再結合、酸化還元反応、活性種の発生と拡散などを過渡吸収法、過渡発光法、共鳴ラマン分光法、単一分子蛍光分光法などによって観測し、ナノ触媒の反応機構を明らかにする。
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