研究課題/領域番号 |
25220902
|
研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
梅原 徳次 名古屋大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (70203586)
|
研究分担者 |
後藤 実 宇部工業高等専門学校, 機械工学科, 教授 (00435455)
月山 陽介 新潟大学, 自然科学系, 助教 (00533639)
野老山 貴行 秋田大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (20432247)
吉野 雅彦 東京工業大学, 理工学研究科, 教授 (40201032)
川口 雅弘 地方独立行政法人東京都立産業技術研究センター, 事業化支援本部技術開発支援部高度分析開発セクター, 研究員 (40463054)
上坂 裕之 名古屋大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (90362318)
|
研究期間 (年度) |
2013-05-31 – 2018-03-31
|
キーワード | トライボロジー / カーボン系硬質膜 / 摩擦 / ナノ構造変化層 |
研究実績の概要 |
1.「超低摩擦発現ナノ構造変化層の摩擦時その場計測装置」の試作と実証 H27年度には、水素含有DLC膜(a-C:H膜)において、同様の乾燥窒素吹き付け中の摩擦におけるナノ構造変化層の各パラメータの摩擦に影響を明らかにした。その結果、誘電関数の変化から水素の離脱が摩擦に大きな影響を及ぼす可能性が示された。 2.「超低摩擦摩擦面の表面エネルギーのESEM内その場評価装置」の試作と実証 環境制御型走査電子顕微鏡ESEMの観測用チャンバー内に小型の往復型摩擦装置を組み込んだ、「超低摩擦摩擦面の表面エネルギーのESEM内その場評価装置」において、繰り返し摩擦に伴う表面エネルギーの分散力成分と水素結合力成分の変化を検出可能である事が明らかになった。 3.「バイアスを印加した表面波励起マイクロ波プラズマによるCVDカーボン系硬質膜」と「イオンビームミキシング・フィルタードアーク成膜法による超低摩擦カーボン系硬質膜の成膜」 フィルタードアーク成膜法(FCVA法)に窒素イオンビームを同時照射する、イオンビームミキシング・フィルタードアーク成膜法(EBA-FCVA法)を提案、試作した。得られたテトラゴナル窒化炭素膜(ta-CNx)のXPSによるsp3/sp2比の評価及びベース油中摩擦実験を行い超低摩擦の可能性を検討した。その結果、窒素の含有率と共に摩擦係数と耐摩耗性が著しく減少することが明らかとなった。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
1.「超低摩擦発現ナノ構造変化層の摩擦時その場計測装置」の試作と実証 カーボン系硬質膜の数nmの構造変化層の光学特性を誘電関数で評価することで、構造変化層の膜厚と構造及び表面粗さを非接触でその場分析が可能であり、H25年に窒化炭素膜(CNx膜)、H26年に水素含有DLC膜(a-C:H膜)において、摩擦係数を支配するパラメータの取得に成功しており、予定通りである。 2.「超低摩擦摩擦面の表面エネルギーのESEM内その場評価装置」の試作と実証 H26年にESEMチャンバー内での冷却ステージ上で繰り返し摩擦する「表面エネルギーのその場評価装置」の開発には成功した。しかし、摩擦係数の評価のためには高精度で摩擦係数を計測する必要があるが、現状の摩擦装置では、電気ノイズや機械振動が発生し、安定した摩擦力の評価に至っていない。今後、発生電磁波の抑制や摩擦計測装置のコンプライアンスを最適化することで摩擦力のその場計測が可能となり、当初の目的である摩擦力と表面エネルギーの関係を明らかにする事が可能となる。問題点が明確でありH28年度には予定通りに、摩擦係数と表面エネルギーの関係が明らかになる予定である。 3.「バイアスを印加した表面波励起マイクロ波プラズマによるCVDカーボン系硬質膜」と「イオンビームミキシング・フィルタードアーク成膜法による超低摩擦カーボン系硬質膜の成膜」 H26年に試作された両成膜装置による水素,窒素及びシリコン等の含有率を自在に変化させsp3/sp2比の制御により硬さを制御し、かつ多層膜の制御も可能なため、上記で述べた2種類の「摩擦時その場評価装置」により評価分析する事で摩擦誘導超低摩擦ナノ構造層によるスマートトライボシステムの材料の設計指針の提案が可能となる。
|
今後の研究の推進方策 |
1.「超低摩擦発現ナノ構造変化層の摩擦時その場計測装置」の試作と実証 当初の計画にあった「超低摩擦発現ナノ構造変化層の誘電関数から硬さの推定(光学特性からの硬さの非接触推定)」は、本「その場計測装置」での光学特性の評価結果とAFMスクラッチ試験の結果を比較し、モデル化することで可能となるため大きな問題は無い。ナノ構造変化層の厚さ,合成表面あらさの標準偏差及び硬さを用いた摩擦係数のモデル式の提案も、CNxやa-C:H以外の異なるカーボン系硬質膜で実験値とモデルによる推定値を比較をする事で、より整合したモデル式への修正が可能となる事が見込まれるため、大きな問題は無い。 更なる展望としては、今後、「高温雰囲気中・高温油中での超低摩擦発現ナノ構造変化層の摩擦時その場計測装置」の開発が求められる。 2.「超低摩擦摩擦面の表面エネルギーのESEM内その場評価装置」の試作と実証 発生電磁波の抑制や摩擦計測装置のコンプライアンスを最適化することで摩擦力のその場計測が可能となり、当初の目的である摩擦力と表面エネルギーの関係を明らかにする事が可能となる。これにより摩擦により表面エネルギーを減少し、摩擦力が減少する摩擦誘導「自己潤滑スマートトライボシステム」の材料の必要要件が明らかとなる。
|