研究課題/領域番号 |
25220904
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研究種目 |
基盤研究(S)
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研究機関 | 北陸先端科学技術大学院大学 |
研究代表者 |
水田 博 北陸先端科学技術大学院大学, マテリアルサイエンス研究科, 教授 (90372458)
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研究期間 (年度) |
2013-05-31 – 2018-03-31
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キーワード | マイクロ・ナノデバイス / ナノマシン / 先端機能デバイス / ナノ材料 / 電子デバイス・機器 |
研究概要 |
本研究では、オートノマス・超高感度集積グラフェンNEMSセンサーシステムの実現を目指して、技術課題を以下の5つのWPに分割して推進している。①少数吸着分子による質量変化と電荷移動を検出する振動チャネル型グラフェンナノリボン(GNR)トランジスタの開発(WP1)、②吸着分子固有振動モード検出方式の開発(WP2)、③エネルギー準可逆型スイッチを可能とする不揮発性パワーマネジメント素子の開発(WP3)、④グラフェンNEMS設計・解析用マルチスケール・シミュレーションの構築と、原子分解能走査透過型電子顕微鏡(STEM)による分子吸着状態の微視的解明(WP4)、⑤センサーとパワーマネジメント素子を同一グラフェン膜内に集積化するプロセス技術の開発(WP5)。 H25年度は、それぞれのWPにおいて以下を実施した。WP1:グラフェンNEMS設計・解析に対応するハイブリッドNEMSシミュレーションシステムを構築し、GNRの寸法・形状の最適化と質量感度の解析、およびWP3で開発するNEMSスイッチの構造設計を行った。また、グラフェンNEMSセンサー・スイッチ特性の精密測定のために、素子の表面清浄化を行う2次チャンバーを備えた環境制御型・高周波プローバーを開発した。WP2:GNRのフォノンモードを原子的に解析する手法を立ち上げるため、第一原理計算と半経験的計算の2種類の方法を試み、前者の手法で基本的GNR構造に対するフォノンスペクトルを得た。WP3:シリコン基板に形成したトレンチ構造内に金属制御電極を備えた新しいサスペンデッドグラフェンNEMSスイッチ構造を提案・作製し、サスペンデッドGNRの繰り返しスイッチング動作の観測に成功した。WP4:種々のサスペンデッドグラフェン膜資料を準備し、高解像度TEM/STEMを用いてグラフェン原子構造の直接観察を試みた。WP5:WP1とWP3におけるグラフェンNEMSセンサーとスイッチ素子作製プロセス開発状況を踏まえて、集積化プロセスの見直しを行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
研究実績の概要に記載したとおり、5つのWP(WP1~WP5)それぞれの技術課題に対して、ほぼ当初の計画に沿った進展を得たが、一部の課題に対しては計画を上回る成果を得た。WP1、WP3共通となるサスペンデッドグラフェンNEMS素子構造試作においては、基板のトレンチ内に制御電極を設けた新しい素子構造と、その作製方法として従来のフッ化水素による気相エッチングを用いない低ダメージ新プロセスを提案・開発した。さらに、それを用いてサスペンデッドグラフェンNEMS素子を試作することで、2V以下の低電圧でグラフェンNEMSの繰り返しスイッチング動作を観測することに成功した。この成果については既に論文投稿の準備を完了している。
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今後の研究の推進方策 |
今後の研究推進においては、ほぼ当初の計画に沿って実施するが、H25年度に開発に成功した新しいグラフェンNEMS素子作製プロセスを駆使して、WP1とWP3におけるグラフェンNEMSセンサーとスイッチ素子開発を加速する。WP1においては、H25年度に開発した新しいグラフェンNEMSプロセスをベースとし、電子線直接描画とO2プラズマエッチング、および収束イオンビームを用いたGNR微細加工と、英サザンプトン大のヘリウムイオン顕微鏡(HIM)およびJAISTの電界電離ガスイオン源(GFIS)を用いたヘリウムイオンミリングによる超微細加工を併用し、リボン幅50 nm ~ 10 nm以下のGNRをチャネルとする共鳴チャネルグラフェンNEMSトランジスタ(RCGNEMFET)を作製する。また、H25年度に構築した環境制御型・高周波プローバーを用いて、ロックインアンプ、シグナルジェネレータ、ネットワークアナライザーによるRF測定システムを立ち上げ、共鳴スペクトル変化による質量変化と電荷移動によるコンダクタンス変化を同時に検出する方式の基本評価を行う。WP2においては、吸着分子の固有振動モードを伝導電子の非弾性散乱トンネルスペクトロスコピーを行う低周波測定系を構築する。WP3においては、最適化したダブルカンチレバー型チャネルのGNEMFETを試作し、そのプルイン・プルアウト基本特性を評価する。WP4においては、大規模第一原理・量子輸送解析により、GNRのエッジ・欠陥状態と分子吸着位置との相関と、吸着分子がGNR全体の振動モードに与える影響についての基本評価を行う。
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