研究課題/領域番号 |
25220906
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研究種目 |
基盤研究(S)
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
中里 和郎 名古屋大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (90377804)
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研究分担者 |
宇野 重康 立命館大学, 理工学部, 准教授 (40420369)
新津 葵一 名古屋大学, 工学(系)研究科(研究院), 講師 (40584785)
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研究期間 (年度) |
2013-05-31 – 2018-03-31
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キーワード | 化学集積回路 / バイオセンサ集積回路 / オンチップ電気化学計測 / CMOS集積センサ |
研究概要 |
化学反応の検出、化学反応の制御、物質の効率的な輸送を半導体集積回路上で行うことにより様々な化学反応をチップ上に集積した化学集積回路の実現を目的とする。この化学集積回路は、医療・環境・健康への応用が最も期待される分野である。検査診断システムにおいては、その取扱いに専門性を要せず短時間で分析可能で、ユビキタス情報社会と整合性の高いことが求められ、その上で極微の生体分子を検出することが最重要課題となる。 化学反応を検出するために、電気化学計測のCMOS集積回路を消費電力3μW/センサ以下を目標に新たに設計した。電位検出型64x64センサアレイ、電流検出型32x32センサアレイ、電位・電流・インピーダンス計測を統合したマルチモーダル型16x16センサアレイのチップを試作し評価を行った結果、センサばらつきが大きく、その主要因がペアトランジスタの閾値ばらつきにあることが判明し、校正回路を導入した新たな回路を設計した。また、低雑音化の検討を進めた。 更に、バイオ信号をパルスの時間幅に変換し、時間ディジタル変換によりディジタル化する新たな回路を考案し、試作・評価した結果、電流パルス方式により時間分解能で3桁の性能向上を実証することができた。 物質の輸送として、電気的な方法と磁気的な方法を検討した。電気的な方法としては電気泳動を念頭に、マトリックス状に並んだセルにそれぞれ異なる電圧を書き込む回路を考案した。磁気的な方法としては、マイクロインダクタにより局所的に磁場を発生させて物質を移動すると同時に存在を検出する回路を検討した。 また、金電極-ポリイミド保護膜-SU8マイクロ流路-ステルスダイシングのポストCMOS集積プロセスを構築した。更に、PDMSマイクロ流路-シリコーン/溶液ホルダによる実装系の検討を行い、電気配線・溶液送排出系の統合に対する見通しを得た。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
化学反応の検出については、試作により基礎的なデータが取得でき、高精度化・低雑音化・低消費電力化の検討が行えるようになった。また、タイムドメインの信号を用いる方式がバイオセンサに有効であることが判明した。この方法の発展として、イベントドリブンに電流パルスを発生し、周辺回路を駆動する新しい回路の考案を進めている。この方式が実現できれば、超低消費電力のバイオセンサが実現できる。 化学反応の制御、物質の効率的な輸送については、最初の設計が完了し、最初の評価に着手段階である。こららの回路を用い、物質の輸送の制御により異なる領域で化学反応を行う化学集積回路実現の下地ができた。
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今後の研究の推進方策 |
極微の生体分子を検出するには、生体分子の増幅と1分子の検出が重要と考えている。増幅としては熱サイクルによる方法、酵素反応系における基質リサイクリングを用いた方法、ナノキャビティ―によるリドックスサイクリングのエンハンスメントが現時点で検討している方法で、現在実験の準備を進めている。1分子の検出としては、超分子の利用が重要と考えている。その1つの方法として、化学発光を光合成タンパク質で受光し電位もしくは電流センサで検出する方式の予備実験を進めている。
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