研究課題/領域番号 |
25220907
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
保立 和夫 東京大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (60126159)
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研究期間 (年度) |
2013-05-31 – 2017-03-31
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キーワード | 計測システム / 光ファイバセンサ / スマート材料・構造 / 分布型センシング / 防災危機・管理技術 |
研究実績の概要 |
「温度と歪の高精度・同時・分布計測での極限性能の実現」では、偏波維持光ファイバでブリルアンゲイン(BGS)とブリルアンダイナミックグレーティング(BDG)のスペクトラムを同時分布測定し標記機能を得る独自技術に関し、フーリエ変換を活用した新シミュレーション法を開発し空間分解能の劣化評価を可能とした。「分布情報全体の高速ダイナミック測定」では、ユニークな機能である任意測定点へのランダムアクセス速度を5倍向上させ5000箇所/秒を達成し、測定長も延伸した。 「BOCDR法の総合機能の実現」では、高SN比計測を実現する新手法としてロックインアンプ機能を内在した系を考案・実証した。参照信号周波数で光位相変調をオン・オフすることで背景光雑音の除去機能も実現し、従来限界を超える空間分解能も達成した。「S-BOCDA法による温度と歪の分離・分布測定システム」では、LDへの入力電流波形の補償法を精緻化し、従来300MHz程度であったスペクトラム幅を理想値30MHzと同桁まで改善した。 「長尺FBG歪センシングシステムの機能進化」では、光源周波数変調波形を工夫してサイドローブを低減した相関ピークを合成し、光位相変調でピーク位置を掃引する独自技術の性能向上を果した。周波数掃引幅の広い光源自体の研究も進めている。「BOCDA法によるPLC光集積回路の評価技術」では、BOCDA法のポンプ光とプローブ光方向を入れ替えた測定の平均値が真値を与えるという独自実験結果をシミュレーション評価する手法が進展した。 「痛みの分る材料・構造の実証研究」では、他の複数の実用化プロジェクト費も得て、BOCDAの第3試作機とBOCDRプロトタイプ機を製作し、航空機、インフラ、プラント等への応用研究を進展させた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
本研究は当初計画に沿って進展している他、下記のように、新たな研究項目も設定して成果を蓄積している。 ロックインアンプ機能を内在したBOCDR系の考案・実証がその一例である。従来系では受光器出力を直接電気スペクトラムアナライザ(ESA)に入力してきた。その結果、測定の感度や速度がESAの特性で決まっていた。本考案では、ESAの周波数掃引機能のみを使い、表示値をアナログ出力してロックインアンプで処理する。通常は光強度変調で得るロックイン処理のための参照信号を、光位相変調のオン・オフの繰り返しで得るモードを考案して、背景光雑音の除去を可能にした。位置分解測定の為の光源周波数変調の振幅は、従来、レーリー散乱とブリルアン信号光が重ならない範囲に制限され、空間分解能の限界を決めていた。本システムでは、この限界値である5.4GHz振幅を超える25GHz振幅の変調にて、この値に対応した高い空間分解能を実現することにも成功した。 BOCDA法のユニークな特徴である任意測定位置へのランダムアクセス機能の速度を格段に向上させる新システムも考案し、5000箇所/秒を達成した。当初計画にはない進展で、光ファイバに沿って任意に設定した5点で動的歪を同時に測定することができた。航空機の翼や脚部の飛行中での動的歪計測等へ応用できる。本系にさらにテンポラルゲート法を導入し測定レンジを20倍延伸して200mとして、1000箇所/秒のランダムアクセス速度も実現できた。 このように、当初の目標を超える研究も進展している。
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今後の研究の推進方策 |
「温度と歪の高精度・同時・分布計測での極限性能の実現」では、空間分解能劣化がアポダイゼーションによって回避されるという実験結果を、シミュレーションの機能向上により解読する。他の手法も導入して総合機能の向上を図る。「分布情報全体の高速ダイナミック測定」では、従来S-BOCDA法を用いていたのに対し、BOCDA法を基盤とした相関ピーク自動掃引法を考案・実現する。ランダムアクセス機能の高速化では、達成可能な理論限界と実験的限界の関係を明確化する。 「BOCDR法の総合機能の実現」では、テンポラルゲート法、強度変調法、ダブル変調法、PM法の4手法を統合し、機能・性能の向上を図る。温度と歪の同時・分離・分布測定にも挑戦する。「S-BOCDA法による温度と歪の分離・分布測定システム」では、精緻なLD注入電流波形補償法の確立を進める。 「長尺FBG歪センシングシステムの機能進化」では、位相変調で低サイドローブの光波コヒーレンス関数を掃引する独自システムの確立を図る。「BOCDA法によるPLC光集積回路の評価技術」では、ポンプ光とプローブ光の方向を入れ替えて得られる分布の平均値として実際のBFS分布を求め得るという実験的知見のシミュレーション検証を行う。 「痛みの分る材料・構造の実証研究」では、経産省プロジェクト、JST-A-STEP、メーカ等との共同研究も進めており、本研究成果の実用化の可能性を広げたい。
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