研究課題/領域番号 |
25220911
|
研究種目 |
基盤研究(S)
|
研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
折茂 慎一 東北大学, 原子分子材料科学高等研究機構, 教授 (40284129)
|
研究分担者 |
齋藤 寛之 独立行政法人日本原子力研究開発機構, 量子ビーム応用研究センター, 研究副主幹 (20373243)
|
研究期間 (年度) |
2013-05-31 – 2018-03-31
|
キーワード | 水素 / 構造・機能材料 / 結合自由度 / エネルギー / 水素化物 / 超イオン伝導 / 固体電解質 / 全固体二次電池 |
研究概要 |
水素の高密度化が困難な3d遷移金属群が主相となる新たな水素化物を合成し、その解析やデータベース構築により高密度水素化物の材料科学を飛躍的に発展させる。 本年度は、水素の結合自由度を高めて候補水素化物の選定の幅を拡大するため「電子ドナー添加技術」の導入を試み、[FeH6]錯イオン(4価の陰イオン)だけでなく、内部の水素がより高密度化した[FeH7]錯イオン(3価の陰イオン)を含む新たな鉄系高密度水素化物が合成可能であることを第一原理計算によって予測した。実際に一部の水素化物に関しては、高圧プレス装置を用いた合成にも成功した。また、[FeH6]と、他の非金属系錯イオン(たとえばBH4錯イオン(1価の陰イオン))とが共存する高密度水素化物に関しても、ミリング・熱処理による合成実験、ならびに各種熱分析や高輝度X線回折による多面的な研究を進めた。さらに、「原子ユニットのねじれ」によって水素化反応が進行するCu(-Al)系侵入型水素化物の合成にも成功し、原子構造変化などをその場観察高輝度X線回折と第一原理計算との融合によって詳細に解析した。(2013年9月にプレスリリース、同12月にAPL Materials誌でのMOST-READ論文。) これらの新たな高密度水素化物の合成と原子構造解析に加えて、イオン伝導機能の向上や全固体エネルギーデバイスとしての展開などの研究も進めた。その結果、熱力学的・化学的に安定な[B12H12]クラスターから構成される新たなNa超イオン伝導水素化物の発見に至った。また、Mgイオン伝導水素化物の設計指針の検討も進めた。当グループが世界に先駆けて研究を進めているLi超イオン伝導水素化物に関しては、TiS2や金属Liとのアセンブリによって、サイクル特性が極めて優れたバルク型全固体リチウムイオン二次電池の固体電解質として機能することを実証した。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
独自の「電子ドナー添加技術」の有効性を実証し、複数の新たな高密度水素化物の合成とその場測定も含めた原子構造解析にも成功した。また、高密度水素化物の中でのNa超イオン伝導機能を発見するとともに関連水素化物の全固体エネルギーデバイスとしての研究も開始した。さらに水素の結合自由度の観点でのデータベース構築にも先行して取り組んでいる。以上の取り組みは材料・エネルギー研究分野での注目度も極めて高い。これらを総合的に勘案して、「当初の計画以上に進展している」と自己評価した。
|
今後の研究の推進方策 |
昨年度の候補水素化物に加えて、Cr、Mn、Co、Cuなどの水素化物系、さらにFeと同族のRu系などにも研究対象を広げる。また、新たに「水素アニオン添加技術」も導入する。すなわち、遷移金属錯イオンを含む錯体水素化物に対して、水素アニオンとしての過剰水素を共存させることで、陽イオンの選択性や組合せの観点で高密度水素化物の探索領域を一気に拡張する。方法としては、昨年度と同様に候補水素化物や出発物質を選定したうえで、第一原理計算なども用いて合成のための水素圧力や温度を絞り込む。必要な水素圧力に応じて水素ガス圧縮装置または水素流体高圧プレス装置を使用するが、後者に関しては研究加速のために1プロセスで複数の水素化物の探索・合成・単相化が可能なコンビナトリアル対応水素流体セルも整備する。合成に成功した高密度水素化物に関しては、中性子・放射光実験などにより原子構造・電子構造解析を進める。さらに高密度水素貯蔵・高速(超)イオン伝導材料としての可能性を評価するための各種熱分析やインピーダンス測定なども系統的に実施する。
|