研究課題
平成26年度までに注力したCrからCuに至る3d遷移金属、さらに平成27年度の4d・5d遷移金属などの研究対象をさらに広げるとともに、本年度は特に水素配位数が9の[MH9]錯イオンとヒドリドイオンH-が共存した新たな高密度水素化物の探索を通して、これらに特有の高速イオン伝導性や超伝導性などの新規物性を研究した。候補水素化物の選定にかかわる第一原理計算では拡張した計算機リソースを利用して計算精度を上げ、さらに出発原料の微細構造と分散性を向上させる技術を確立することで、実際に[MH9]とH-が共存したLi5MoH11・Li5WH11・Li6NbH11・Li6TaH11などの新たな高密度水素化物群の合成に成功した。またNiを含む錯イオン[NiH4]を中心に、金属水素化物から錯体水素化物への遷移現象やその際に形成される前駆物質[NiH1~3]錯イオンなどの量子ビームによる精密解明に至った。これらの研究成果の統合により、原子構造と電子構造とを個別の最適指標でデータベースとして纏め、前者に関しては水素化物中でのイオン充填率を、また後者に関しては陽イオンを形成する金属の電気陰性度や磁化測定から評価した化学結合性を、それぞれ指標としたデータベース化も進めた。リチウムおよびナトリウムイオン伝導性に関しては、[CB11H12] および[CB9H10]錯イオンを含む複数のクラスター型錯イオンが「共存」する高速イオン伝導水素化物を合成することで、室温付近でのイオン伝導性をさらに高めるとともに、それらを固体電解質として用いた蓄電デバイスの安定動作も実証した。
1: 当初の計画以上に進展している
水素化物中でのイオン充填率などを新たな指標とした原子構造に関する情報統合とデータベース化に成功した。さらに、水素と反応しにくいとされていたモリブデンなどの金属原子に9つもの水素を結合させるための計算・合成技術を獲得することで目的としたハイドライド・ギャップの克服にも目途をつけた。これらを総合的に勘案して、「当初の計画以上に進展している」と自己評価した。
水素配位数が8の新たな高密度水素化物を含めて[MH4]から[MH9]にわたる多様な錯イオンを含む高密度水素化物の系統的研究を実施、金属水素化物から錯体水素化物への遷移現象なども利用して目的としたハイドライド・ギャップの克服を完遂する。引き続き、拡張した計算機リソースを利用して候補水素化物の選定のための計算精度を上げるとともに、合成した一連の高密度水素化物に特有の高速リチウム・ナトリウムイオン伝導性や高圧力下での超伝導性などの新規物性・機能性を探索する。また、熱力学的・化学的に安定なクラスター型錯イオンを共存させた新たな高速イオン伝導水素化物の組成最適化とそれらを固体電解質として用いた次世代蓄電デバイスの設計も進める。
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すべて 国際共同研究 (4件) 雑誌論文 (21件) (うち国際共著 13件、 査読あり 20件、 謝辞記載あり 13件、 オープンアクセス 2件) 学会発表 (11件) (うち国際学会 8件、 招待講演 11件) 備考 (3件) 産業財産権 (1件)
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