研究課題/領域番号 |
25220912
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
中野 貴由 大阪大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (30243182)
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研究分担者 |
松本 卓也 岡山大学, 医歯(薬)学総合研究科, 教授 (40324793)
山本 雅哉 京都大学, 再生医科学研究所, 准教授 (10332735)
石本 卓也 大阪大学, 工学(系)研究科(研究院), 講師 (50508835)
當代 光陽 大阪大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (10610800)
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研究期間 (年度) |
2013-05-31 – 2018-03-31
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キーワード | 骨配向化 / 生体アパタイト / オステオサイト / 外場対応型3Dプリンタ / 非接触式繰り返し力学試験機 / マイクロアレイ / 人為的制御 / 人工材料創製 |
研究実績の概要 |
骨配向化誘導のためのマテリアルボーンバイオロジー構築を最終目標とし、(A) 骨配向化機構解明、(B) 骨配向化促進材料の創製、を両輪とした研究に取り組んでいる。 項目(A)について、細胞、分子・遺伝子レベルでの骨配向化機構解明に向け、今年度(平成26年度)は、前年度(平成25年度)に確立した動物モデル(KOマウス)とin vitro培養系、さらには最新の解析手法を用いて、配向化のための必須因子の探索に成功した。遺伝子組み換え動物および人為的応力負荷ラットモデルの生体アパタイト・コラーゲン配向性を材料工学的手法(透過型・反射型微小領域X線回折法、特殊回転仕様レーザーラマン顕微鏡等)により定量的に明らかとした。さらにそれらモデルに対して、生物学的解析手法であるマイクロアレイにより、骨配向化を制御する複数遺伝子の同定に成功し、当初計画した以上の成果を得たものと言える。 項目(B)については、人工材料に対して骨の有する応力場に適応した機能変化能を付与し、材料自体が生体機能を発現し得る新規概念の材料設計に成功した。一方で生体骨の人為配向化を目指し、当該年度導入した外場対応型バイオ3Dプリンタにて骨類似組織配向化に向けた任意の細胞配置制御、および当該年度導入の非接触式繰り返し力学試験機を駆使しつつ、生体外での器官培養系の構築に着手した。 今後は、項目(A)により得られた骨配向化機構に関する知見を、項目(B)の新規材料創製による配向化骨誘導に適用し、両項目成果の融合により本課題を加速的に進展させることが可能である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
「研究実績の概要」に記述のとおり、今年度(平成26年度)に計画していた以下の項目は、大幅に計画を前倒ししつつ遂行した。特に、配向化機構を司る数種の遺伝子の同定にまで到達したことは意義深く、今後の骨配向化促進材料の創製にも直接つながるものと期待される。以下に、代表的な項目ごとの進展度を示す。なお、記号の意味は、◎:当初計画以上に進展、○:計画通り進展、とする。
①遺伝子組み換え動物の骨配向性解析(◎)、②骨配向性制御因子の探索(◎)、③マイクロアレイによる骨配向化制御遺伝子のスクリーニング(◎:骨配向性を直接司る複数の遺伝子の同定に成功し、計画以上に進展した)、④オステオサイトの応力感受能と骨配向性との相関性の解明(◎)、⑤骨類似機能発現可能な人工材料の力学機能解析(○)、⑥定量的応力負荷培養モデルの構築(◎:生体外での器官培養系構築に成功し、計画以上に進展した)
以上より、総合的に「当初の計画以上に進展している(◎)」と自己評価する。
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今後の研究の推進方策 |
今年度(平成26年度)に当初計画を上回り研究が進展し、骨配向化を制御する候補因子同定が既に完了したことから、(A) 配向化機構解明、(B) 骨配向化促進材料創製に本格的に取り組み、両者の融合によるマテリアルボーンバイオロジーの学理構築のための研究が当初計画を超えて進展したといえる。 次年度(平成27年度)は、前年度の成果を踏まえ、同定された配向化制御遺伝子について骨系細胞間での分子ネットワークに着目しつつ配向化メカニズム解明を目指す。今年度構築に成功した生体外での応力負荷培養モデルについては、応力負荷による骨配向化を定量的に解析するとともに、前年度から着手しているオステオサイトの応力感受機能を介したメカニズム解明を目指す。そのために、ナノCT装置を用いた画像処理の基礎的検証は既に終えており、応力感受のトリガーとなる骨細胞(オステオサイト)から、骨形成細胞(骨芽細胞)、さらには骨形成細胞に影響を及ぼす骨破壊・吸収細胞(破骨細胞)までの上流から下流までをつなぐことができるものと期待している。さらに詳細は非公開とするが、骨配向化を司る複数の遺伝子から実際の制御遺伝子を同定に取り組んでいる。 こうした知見等に基づき、得られた配向化因子・メカニズムに関する知見を配向化促進人工材料の設計に活かし、生体機能を人工的に発現可能な新規材料創製へとつなげる。まさにマテリアルボーンバイオロジーの構築が着々と進むための明確な推進方策を練り上げている。
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備考 |
受賞17件
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