研究課題/領域番号 |
25220914
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
石川 隆司 名古屋大学, ナショナルコンポジットセンター, 特任教授 (90358630)
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研究分担者 |
名波 則路 日本大学, 理工学部, 助手 (20755524)
佐宗 章弘 名古屋大学, 工学研究科, 教授 (40215752)
池田 忠繁 名古屋大学, 工学研究科, 准教授 (40273271)
仙場 淳彦 名城大学, 理工学部, 准教授 (60432019)
田邊 靖博 名古屋大学, 工学研究科, 教授 (70163607)
酒井 武治 鳥取大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (90323047)
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研究期間 (年度) |
2013-05-31 – 2018-03-31
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キーワード | 複合材料・物性 / 航空宇宙工学 / 炭素繊維強化熱可塑樹脂 / テーププレスメント / 衝突破壊 |
研究実績の概要 |
1.直接その場成形法の実現可能性評価と成形プロセスの解明 平成27年度までに開発した半導体レーザー熱源と石英ガラスまたは金属製加圧ローラーより構成される含浸/積層簡易装置に関して、炭素繊維開繊糸とナイロン樹脂フィルムの下に耐熱ゴムと金属メッシュを敷くことで、溶融樹脂が閉じ込められるとともに、局所加圧力を増大でき、樹脂の含浸特性が著しく向上することを見いだした。また、レーザー加熱では炭素繊維の発熱により樹脂を融解するため、炭素繊維の分布の違いが、製品の機械的特性に影響することを明らかにした。テーププレイスメント複合材は残留応力により反り、表裏の方向によって曲げ強度が異なることが分かっている。残留応力を推定する簡易モデルを提案し、積層時の残留応力を見積もったが、曲げ強度に影響を与えるほど大きくないことが分かった。しかし、数値解析において、熱変形後の3次元的な形状を考慮することで、その形状が強度・剛性に及ぼす影響を明らかにした。 2.CFRTPの破壊プロセスの解明 平成27年度に提案したデータの整理法と飛翔体の試料貫通速度予測法を応用して、内部に存在している不均一性の寸法判別に挑戦した結果、不均一性が存在する試料では、その不均一寸法よりも小さな径の飛翔体を衝突させるとエネルギー吸収能が大きくばらつくことを明らかにした。また、本年度購入した「時間差計測TTL発信回路」を用いることで、試料の変形を精緻に解析できる様になり、その結果、試料の局所的な変形、つまり、試料内部の不均一性の様子を定量的に判断できるようになった。小型バリスティックレンジを新たに設計、製作した。この装置とPDV速度干渉計を組み合わせることによって、これまでに比較して使用頻度3倍、実験コスト1/2以下で衝撃強度試験を行うことができるようになり、テーププレイスメント複合材の破壊機構の解明に向けた研究が格段に進むようになった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
1.直接その場成形法の実現可能性評価と成形プロセスの解明 平成28年度に行った研究実績により、レーザー局所加熱による樹脂含浸/積層が原理的および実際に可能であることを示せた。成形シミュレーションに関しては、テーププレイスメント材の強度・剛性に及ぼす因子を、数値解析による材料評価により、明らかにできた。 2.CFRTPの破壊プロセスの解明 鋼球を飛翔体衝突試験では、直径の異なる鋼球を試料に衝突させ、試料の変形挙動を精緻計測することで、試料内部の不均一性を評価できることを明らかにした。さらに、内部不均一性との関係を現象論的ではあるが解明した。本研究開始時点では、試料内部の不均一性までを評価・解明できる手法を開発できるとは想定していなかった。小型バリスティックレンジシステムに関しては、装置は完成したが、本試験をすることができなかった。しかし、高頻度で試験ができるようになり、最終年度に破壊プロセス解明に向けた研究が格段に進むと考えている。 ◎ 小項目毎、達成度にばらつきはあるが、概して順調に進展していると評価している。
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今後の研究の推進方策 |
1.直接その場成形法の実現可能性評価およびCFRTPの成形プロセスの解明 平成28年度までに達成した局所含浸特性は、ある作動条件での結果であるため、広範囲に作動条件を変化させた実験での調査を進め、高速含浸法の開発を行う。一方で、製作した試料の一様含浸性については未だ課題がありこれを解決する。また、含浸積層同時その場成形に挑戦し、その原理を確立する。最終的に、送り速度1m/min以上、オートクレーブ材または熱プレス材の70%以上の強度を目指す。成形シミュレーションに関しては、CFRTPのボイド率、繊維分布、熱変形を含んだ計算モデルを作成し、それらが強度・剛性に及ぼす影響と原因を明らかにする。また、多層積層中の材料の応力・変位・温度分布を予測する数値解析手法の提案を行う。 2.CFRTPの破壊プロセスの解明 本年度までの研究で、試料内部の不均一性を評価・解明できる手法に目処がたった。さらに、大型部材あるいは大量生産を視野にいれた炭素繊維と熱可塑性マトリックス樹脂との接着強度を増加させる有効な手法を見いだすことができた。したがって、試料内部の不均一性とCFRTP作製の工程個々との対応づけに注力することで、作製工程に直接フィードバック可能な評価方法へと展開する。また、小型バリスティックレンジによってテーププレイスメント複合材の高速衝撃試験を行い、速度干渉計PDVを用いてスポール破壊メカニズムと強度評価を行い、実用適性を見極める。
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