研究実績の概要 |
①軸索の2光子カルシウムイメージングを用いて、マウスの外側膝状体からV1の4層へは方位選択性的な情報はほとんど伝えられないことを示した(Kondo and Ohki, 2016)。外側膝状体の神経細胞にGCaMP6sを導入し、その神経細胞の軸索の活動を、V1の4層で観察した。その結果、4層に入力している軸索は、あまり方位選択性を持たないことがわかった。従って、マウスのV1の4層の神経細胞の方位選択性は、ネコと同様、大脳皮質内の回路によって形成されていることが示唆された。 ②マウスの全脳をマクロレベルで機能マッピングする技術を開発し、高次視覚野の外にも視覚刺激に反応する領域があることを見出した(Murakami et al., 2015)。全脳の興奮性細胞にカルシウム感受性タンパク質を発現するマウスと、広域蛍光顕微鏡を用いて、大脳半球全体を含む広範囲で機能マッピングを行い、視覚刺激に対して応答を示す領野を調べた。その結果、一次・高次視覚野だけではなく、脳梁膨大後部皮質と前帯状皮質が視覚応答を示すことを見出した。 ③②と同様の方法を用いて、全脳の領野間相互作用をマクロレベルで示した(Matsui et al., in press)。マクロレベルでの領野間相互作用は、従来機能的fMRIなどを用いて示されてきたが、血流変化を測定するものであり、神経活動との対応が不明であった。神経活動と直接相関するカルシウムシグナルを用いて、安静時の領野間の相互作用を調べた。これにより、血流変化による相互作用がカルシウムシグナルによる相互作用と対応していることが示された。さらに、安静時の自発活動は、脳全体に波及する波として発生していること、その波の各時点でのパターンが領野間相互作用のパターンと類似していることが見出され、領野間相互作用のパターンは、自発活動の波に埋め込まれていることが明らかになった。
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