研究課題
基盤研究(S)
小胞プルキンエ細胞でのみIP3受容体を欠損させたマウスは、生後20日後も生存し、そのスパインは過形成(数の増加と突起伸展)を示し、小脳学習は消失し、小脳失調を示した(J Neurosci 2013)。また、IP3受容体は全身性ジストニアの発症に関与していた(Frontier in Neural Circuit 2013)。IP3受容体から放出されるIRBITはCa2+とcAMPシグナルと協調してpHの制御をした(Gastroenterology 2013)。またIRBITはpHの制御に関わるNa, HCO3- cotransporter Iを活性化し、シャペロンにより制御された(J Biol Chem 2013)。アストロサイトのCa2+の変化が神経細胞の機能を制御し(Cell Calcium 2014)tripartite synapseの機能も調節した(Molecular Brain 2013)。脳幹の血流の調節はアストロサイトのCa2+変化とは独立であった(PLoS One 2013a)。ムスカリン型ニコチニッック受容体M1, M3型(Cell Calcium 2013)やPLCのサブタイプ(PLoS One 2013b)はCa2+振動を制御することを示した。アストロサイトでのmGluRの量子ドットによる1分子イメージングを確立した(Curr Protoc Neurosci 2014)。IP3受容体から放出されるペプチドがBcl-2に働きアポトーシスをおこした(Dell Death Disease 2013)。高感度の電位センサーを開発した(J Physiol 2013)。クルーズ・トリパノソーマ原虫のIP3受容体は原虫の生存に必須であり(Molecular Microbiology 2013)、アンチセスヌクレオチド法で原虫を死滅させた(Science Report 2014)。
1: 当初の計画以上に進展している
本研究課題の目的はかなりの程度達成したと考える。IP3受容体がプルキンエ細胞の樹状突起上のスパインの数と形を決定している事を明らかに出来たことは、大きな成果と考える(J. Neurosci. 2013)。またジストニアの原因としてIP3受容体が関わるという新しいメカニズムを示し、小脳起源性のジストニア発症モデルを提案出来た事は、今後小脳から出力された異常情報が大脳からの随意信号の情報とどのように交わりジストニアの姿勢異常を起こすかを明らかにしてゆく上でも、疾患の治療法を考える上でも重要である(Frontier in Neural Circuit 2013)。神経機能を考える上で細胞内の情報の流れを明らかにすることは重要である。まずCa2+のシグナルがムスカリニック受容体や各種のPLCのサブタイプにより決定されることを発見した (PLoS One 2013b)(Cell Calcium 2013)ことはシグナルの多様性を考える上で今後重要である。また電気生理学的研究も進み、シナプス可塑性や脳機能にIP3受容体が深く関わることも明らかにしている(未発表)これ迄は脳神経機能には神経細胞が常に中心に考えられてきたが今回アストロサイトが大きな役割を果たすことを示した事(PLoS One 2013a)(Molecular Brain 2013) は脳機能を考える上で大きな概念の転換を促す意味で大きな成果である。一方、熱帯病の一つである(クルーズ・トリパノソーマ)ではIP3受容体がその生存に必須な分子であり(Molecular Microbiology 2013)、IP3受容体のアンチセンスヌクレオチドで原虫を殺すことが出来た事は、今後の熱帯病の治療という観点からも大きな成果である(Science Report 2013)。
すでに新しいカルシウム指示薬(Genetically encoded Ca2+ indicator)を使い、従来の細胞質へ発現させる事のみならず、細胞膜で発現させることにより、神経細胞・グリア細胞の細い突起で大変感度良く、検出することに成功した(未発表)。これを用いる事により神経細胞とグリア細胞間のコミュニケーションの解析が大きく進展しうると考える。我々はIP3指示薬の作製に成功しているが、更に感度の良い指示薬を作製する事により、transgenic animalを作製して、興奮により起きるIP3量の変動、Ca2+の変動を2光子顕微鏡により、イン・ビボで個体のレベルで観察出来る様になると考える。電気生理学的に従来はグルタミン受容体(NMDA受容体やAMPA受容体)が記憶・学習に関わることが示されてきたが、最近IP3受容体から放出されるIRBITが酸・塩基平衡に関わっており、かつアストロサイトにも多い事を考えると、tripartiteシナプスにおいて、pH変化を介してNMDA受容体を制御する可能性やIRBITがCaMKIIを介して(未発表)AMPA受容体を制御しており、記憶・学習をコントロールしている可能性も考えられ、今後その仮説の検証をしてゆきたい。
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