研究概要 |
霊長類を含む哺乳類Piwi-piRNA 複合体(piRISC)の解析を行い、本年度は以下のことを明らかにした。 1. マーモセット(Callithrix jacchus)精巣における小分子RNAの大規模配列解析を行い、新規miRNA 300種を含む約700種類のmiRNAを同定した。さらに、~11,000,000リードの小分子RNAがpiRNAに相当し、しかも、これらの大半がPIWIタンパク質に1つであるMARWI (PIWIL1)と複合体(piRISC)を形成していることを明らかにした。これらpiRNAが転移因子のみならず偽遺伝子に由来していること、そして、それらの大半が元の親遺伝子に対してアンチセンスであることを見いだした。これらの結果は、MARWI-piRISCが転移因子抑制のみならず、細胞の遺伝子の発現制御にも関与していることを示唆する。 2. マウスには存在せず霊長類には存在する第4のPIWIであるPIWIL3の特異的な抗体を作成した。発現解析を行い、PIWIL3が霊長類(ヒトとマーモセット)においてこのPIWIが卵巣において特異的に発現していることを確認した。しかも、卵巣内で成長過程にある卵の細胞質にのみ発現していた。他のPIWI (PIWIL1, PIWIL2, PIWIL4)は精巣での発現は確認できた(RNA-seq, RT-PCR, Western blot解析)が、卵巣ではほとんど発現していないようである。つまり、PIWIL3のみが卵巣で発現している。これらの成果はPIWIL3が卵形成に関連している可能性を示唆する。マーモセット卵巣における小分子RNAの大規模配列解析を行い、miRNAとpiRNAに相当する小分子RNAを同定した。現在、これら小分子RNAの配列解析を進めている。 以上のように、霊長類PIWIが転移因子抑制のみならず、偽遺伝子由来のpiRNAを介してタンパク質をコードする遺伝子の発現制御にも密接に関与していること、そして、卵巣では卵細胞の成熟過程に関与している可能性を示唆する結果を得た。
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