研究課題/領域番号 |
25221104
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研究種目 |
基盤研究(S)
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研究機関 | 独立行政法人理化学研究所 |
研究代表者 |
竹市 雅俊 独立行政法人理化学研究所, 発生・再生科学総合研究センター, グループディレクター (00025454)
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研究期間 (年度) |
2013-05-31 – 2018-03-31
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キーワード | 微小管 / CAMSAP3 / 細胞極性 / キネシン / KIFC3 / USP47 / カドヘリン / 上皮細胞 |
研究概要 |
微小管のマイナス端に結合する因子CAMSAP3に関し、今年度は以下の2つの課題について成果を得た。 (1)上皮細胞接着維持におけるCAMSAP3の役割 微小管のマイナス端に向かって移動するキネシンの一種KIFC3が上皮細胞間の接着構造Adherens Junction (AJ)に局在すること、この局在がCAMSAP3に依存すること、そして、KIFC3がUbiquitin-specific protease 47(USP47)と結合することを予備的に明らかにしていた。これらの現象を詳しく解析した結果、KIFC3がUSP47をAJに運ぶこと、KIFC3またはUSP47が欠失した時、AJで働く接着分子E-cadherinが断片化することが明らかになった(90kD断片)。その原因を調べると、E-cadherinはHakaiによりユビキチン化され、プロテアソームによって90kD断片に分解されるという特性を持つこと、そして、この分解がKIFC3/USP47によって抑えていることが判明した。これにより新しいE-cadherinの保持機構が明らかになった(論文投稿中)。 (2)極性上皮細胞構築におけるCAMSAP3の役割 CAMSAP3は上皮細胞頂端部の皮質部分に局在することが予備的観察から分かっていた。今回、このCAMSAP3の役割を明らかにするため、CAMSAP3ノックアウトマウスの小腸上皮、及び、本分子をRNAiにより除去したCaco2細胞の微小管を解析した。その結果、正常な上皮細胞では微小管が頂底軸に添って配向しているが、CAMSAP3の欠失によりこのパターンが消失し、同時に、核やゴルジ体の位置や分布が異常となることが分かった。さらに頂端部の細胞膜構造が不安定化する傾向が観察された。本発見により、極性上皮細胞に特有な微小管配向の機構が始めて明らかになるとともに、これが、細胞内構造の極性維持のためにも重要であることが示された(論文準備中)。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
年度は、CAMSAP3の上皮細胞の接着と極性形成における役割を明らかにすることができた。しかし、年度末までに論文の発表に至っていないので、論文の取りまとめを急いでいる。その他の課題については予備的観察を行い研究の発展に繋がる興味深い結果を得ている。
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今後の研究の推進方策 |
次年度は、CAMSAP2及びCAMSAP3の神経軸索における役割、および、大脳皮質構築における役割を明らかにするための研究を、両分子のノックアウトマウスを用いて展開する。大脳皮質構築に関する課題は当初の計画にはなかったが、ノックアウトマウスの予備的な表現型解析から興味深い異常が観察されたので、本計画に新たに組み入れることとした。一方、当初予定していたCAMSAP2/3のリコンビナントタンパク質によるチュブリンとの相互作用についての生化学的、生物物理的研究は、海外の研究グループにより先行される事態となり、また、本テーマを遂行するために必要な専門的知識を有する人材が得られないことから、当面は実施を保留する。
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