研究課題
(1)CAMSAP3変異マウスの小腸を解析し、微小管の配向パターンとオルガネラの配置にとって重要であることをすでに報告したが、上皮組織のさらなる解析の結果、腎の輸尿管が嚢胞化していることを発見した(未発表)。(2)海馬神経細胞ではCAMSAP3が軸索だけに分布しており、また、CAMSAP3変異マウスの神経細胞では軸索が複数形成されることを観察していた。CAMSAP3が1本の軸索だけを維持する機構を研究し、AMPプロテインキナーゼ(AMPK)が関与することが示唆された(未発表)。(3)放射状グリア細胞はCAMSAP2, 3の両方を発現するが、それぞれの単独ノックアウトマウスにおける異常は異なっていた。そして、CAMSAP2はグリア細胞の基底部側(脳皮質軟膜側)、CAMSAP3は頂端部側(脳室側)で機能していることが示唆された。また、CAMSAP3の変異により、放射状グリア細胞の皮質層における分布の異常が観察された(未発表)。(4)培養上皮細胞でCAMSAP3を除去するとゴルジ体がミニスタック化し分散するので、CAMSAP3が、ゴルジ体の核周辺での集積のために重要であることが示唆されていた。今回、このCAMSAP3の作用は、CG-NAP (centrosome and Golgi localized PKN-associated protein)と結合して発揮されることが明らかなった(中国科学院Wenxiang Meng博士との共同研究)。(5)上皮細胞の大部分の微小管は、中心体に結合していないが、CAMSAPを除去すると、中心体から放射する微小管が増える。この現象の機構を調べた結果、CAMSAPが中心体の周縁部で微小管に結合し、カタニンを介して微小管を中心体から遊離させていることが明らかとなった(Wenxiang Meng博士との共同研究)。
1: 当初の計画以上に進展している
当初設定した研究目標に従って研究を進める中、予想できなかった様々な問題に遭遇し、これがきっかけとなって、CAMSAP依存微小管の新たな生理機能が浮き彫りになってきた。昨年度の成果に関していえば、CAMSAPによる腎輸尿細管機能の維持、軸索数の制御、放射状グリア細胞の位置制御などの発見である。それぞれについて、背景となる分子機構を明らかにすることにより、予定以上の展開が見込まれると期待している。なお、中国科学院Wenxiang Meng博士との共同研究については、当初の研究計画に明記していなかったが、本研究課題から派生したものであることから、その研究成果を研究実績に加える。
上皮構築におけるCAMSAP3の役割: CAMSAP3変異マウスにおける嚢胞腎形成の原因究明を続ける。細胞の構築、生理機能の両面から異常の原因を探る。CAMSAP3による神経細胞極性制御: CAMSAP3による軸索数を制御する機構の研究を継続する。とくに、前年度に示唆された、CAMSAP3によるAMPK制御の分子的仕組み、そして、AMPKがどのように軸索形成を制御するかについて明らかにする。CAMSAPによる放射状グリア細胞の形態形成制御: CAMSAP2及びCAMSAP3の役割を追求する。とくに、CAMSAP3変異に伴う細胞構築・分布の変化が、放射状グリアの幹細胞としての機能に影響を与えるかどうかについて検討し、その結果を見極めながら本課題を進展させる。
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すべて 国際共同研究 (2件) 雑誌論文 (6件) (うち国際共著 2件、 査読あり 5件、 謝辞記載あり 3件) 学会発表 (3件) (うち国際学会 2件、 招待講演 3件)
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