研究課題
今年度の成果としては、これまでに取得していたシロイヌナズナのカルシウムやマグネシウム欠乏に感受性のシロイヌナズナ変異株の分子遺伝学的解析によって同定した原因遺伝子の役割に関する研究を進め、同定された遺伝子の一部はマグネシウム輸送体と相互作用すること、輸送体のタイプによって相互作用するものとしないものがあることが明らかになった。この相互作用はマグネシウム輸送制御の新たな側面を明らかにしている可能性がある。また、各種栄養欠乏条件で栽培したシロイヌナズナmRNA seq解析の結果を様々な観点から解析したところ、それぞれの栄養条件で数十個程度のmRNAに配列の変化が見られ、変化の見られる遺伝子は栄養条件で異なることが明らかになった。NIP5;1遺伝子のmRNAのホウ素による制御機構の解析については、ホウ素以外にもこの反応を引き起こす化合物があるかどうかを検討したところ、ホウ酸の関連化合物の中に程度は低いもののAUGUAA依存的な反応を引き起こすものがあることが明らかになった。また、AUGUAAを持ちホウ素栄養で発現制御を受ける遺伝子を破壊するとホウ素欠乏での生育が抑制されるものあることも明らかにした。さらにAUGUAA配列依存的なホウ素応答を可視化する技術を用いて引き起こすことができないシロイヌナズナ変異株を同定し、この系統についての遺伝解析を進めると共に、内在性のNIP5;1遺伝子のmRNA蓄積を調べたところ、系統によってmRNA蓄積に影響があるものと影響がないものの両者があることが明らかになった。数理モデルについては、栄養輸送体の栄養による制御を取り入れた常微分方程式による輸送制御モデルを構築し、その特性解析をさらに進め、栄養輸送体の基質(この場合はホウ素)による発現制御速度が遅くなると、栄養の細胞内濃度が周期的に大きく変動する現象が起こり得ることを明らかにした。
2: おおむね順調に進展している
一部想定外の事態も発生したものの、全体としては予定通り研究を進めてきていると考えている。
当初の予定通り進めていく予定である。
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