研究課題
全身の細胞で過剰となったコレステロールは、HDL(いわゆる善玉コレステロール)として肝臓へ戻されることによって、体内のコレステロール恒常性は保たれている。ABC蛋白質のひとつであるABCA1は、HDL産生に必須のトランスポーターである。ABCA1が産生する新生HDLは、数百分子のリン脂質とコレステロールの周りを2~4分子のアポリポ蛋白質A-I(アポA-I)が取り巻いた円盤状構造であり、ABCA1がどのようなメカニズムで新生HDLを産生するかは、ABCA1の発見以来20年近く経つ今でも議論が分かれている。本年度は、ABCA1発現細胞を低濃度のトリプシンで処理すると、ABCA1の細胞外ドメインの切断とともに大量のリン脂質とコレステロールが培地中に放出されることを示し、ABCA1が輸送したリン脂質とコレステロールをABCA1の大きな細胞外ドメインに蓄積することを生化学的に明らかにした(Ishigami M. Sci Rep 2018)。さらに、ABC蛋白質のひとつで多剤排出ポンプとして機能するMDR1の高分解能の構造を解明することによって、脂溶性基質を細胞外へ直接排出する排出ポンプとリン脂質を細胞内で移動させるフロッパーゼは構造が異なることを明らかにした(Kodan A 投稿中)。我々は、ABCA1がHDL産生だけでなく、コレステロール・フロッパーゼとしても機能することを昨年度に明らかにしており(Liu S-L. Nat Chem Biol 2017)、本結果はABCA1が何らかの機構で2つの機能をスイッチしていることを示唆している。
29年度が最終年度であるため、記入しない。
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