研究課題/領域番号 |
25221205
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研究種目 |
基盤研究(S)
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
尾崎 博 東京大学, 農学生命科学研究科, 教授 (30134505)
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研究分担者 |
堀 正敏 東京大学, 農学生命科学研究科, 准教授 (70211547)
日下部 守昭 東京大学, 農学生命科学研究科, 教授 (60153277)
池田 正浩 宮崎大学, 農学部, 教授 (60281218)
飯野 哲 福井大学, 医学部, 教授 (40242854)
下島 直樹 慶應義塾大学, 医学部, 講師 (30317151)
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研究期間 (年度) |
2013-05-31 – 2017-03-31
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キーワード | 間葉系細胞 / 細胞運動 / 筋線維芽細胞 / 組織修復・再生 / 臓器線維化 / 細胞外マトリックス / テネイシンC / 炎症 |
研究概要 |
研究論文については業績リストで示していることから、ここでは前を見据え、次年度の研究に繋がる重要な知見について記載する。 (1)消化管病態:DSSをマウスに投与し炎症を惹起すると大腸粘膜直下の筋線維芽細胞がテネイシンC(TNC)を産生した。単離細胞を用いた検討からTGFβとPDGFがその産生に深く関与していること、TNCノックアウトマウスでは炎症が悪化(粘膜剥離)することも観察された。TNCは上皮細胞の遊走能を亢進したことから粘膜修復において「鍵」となる蛋白質であることが示唆された。(2)腫瘍:実験的大腸腫瘍の周辺部にTNC陽性部位が多く認められた。上皮細胞にTGFβを作用させると上皮間葉転換が起こりTNC産生した。マイクロアレイで検索すると、各種の細胞外マトリックスと収縮蛋白質発現とともにIL-33発現の顕著な亢進が認められた。IL-33は上皮細胞に対して遊走活性を示した。すなわち、TNCとIL-33が腫瘍細胞の遊走に深く関与するという重要な知見が示唆された。(3)細胞遊走に関わる新規分子の検討:ラット培養小腸上皮細胞において発現しているAQP分子の種類について遺伝子レベルで検討し特定のAQP分子種の発現量が多いことを確認した。上述のTNC、IL-33と合わせ遊走に関わる新規分子として特に注目したい。(4)線維化モデルの作製とそれに基づいた新規バイオマーカーの探索:腎の線維化モデルの確立を試み、腎虚血再灌流あるいはゲンタマイシン投与により腎の線維化モデルを作製できることを確認した。(5)DNAマイクロアレイによる遺伝子発現解析:線維芽細胞を中心とした間葉系細胞の分子特徴を探るため、線維芽細胞に発現する分子の文献的検索と小腸PDGFRα発現線維芽細胞のDNAマイクロアレイによる遺伝子発現解析を行った。グロビン蛋白質に注目し、抗体を作製し、マウス消化管で免疫組織化学的に検討したところ、粘膜および筋層の線維芽細胞に明確な免疫反応を認めた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
2013年に7報、2014年に12報の原著論文を発表することが出来た。高インパクトファクター(5以上)の学術誌を挙げると; Proc Natl Acad Sci USA: IF 9.737 Br J Pharmacol (2): IF 5.067 J Immunology: IF 5.520 Arterioscler Throm Vas Biol (2): IF 6.338 論文として公表できた成果だけではなく、次に繋がるデータも数多く得られ(研究実績の項参照)、「当初の計画以上の成果」が得られたものと判断している。
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今後の研究の推進方策 |
問題なく順調に推移していると考えており、現在のアクティビティーを維持すれば、満足できる最終成果が得られるものと考えている。ただし、部分的には改善の余地はある。例えば、臨床サンプルの収集が予想外に難航しており、他機関への依頼を考える必要がある。抗線維症のアプローチもまだ見えてはいない。今はとにかく、定評ある学術誌に原著論文を残すことに傾注する。
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