研究課題/領域番号 |
25221205
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
尾崎 博 東京大学, 農学生命科学研究科, 教授 (30134505)
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研究分担者 |
堀 正敏 東京大学, 農学生命科学研究科, 准教授 (70211547)
日下部 守昭 東京大学, 農学生命科学研究科, 教授 (60153277)
池田 正浩 宮崎大学, 農学部, 教授 (60281218)
飯野 哲 福井大学, 医学部, 教授 (40242854)
堀口 和秀 福井大学, 医学部, 准教授 (20377451)
下島 直樹 慶應義塾大学, 医学部, 講師 (30317151)
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研究期間 (年度) |
2013-05-31 – 2017-03-31
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キーワード | 間葉系細胞 / 筋線維芽細胞 / 平滑筋細胞 / 上皮細胞 / 組織修復・再生 / 炎症 / 細胞運動 |
研究実績の概要 |
中間評価では、「多面的なアプローチを統合して疾病治療を視野に入れた研究に進展すべき」とのコメントも受けたことから、本年度(2015)に公表した原著論文のなから、治療薬開発の一助となる可能性のある研究の概要を以下に記す。 ①セロトニン5HT3受容体拮抗薬オンダンセトロンの抗炎症作用:術後イレウスは手術中の物理的侵襲によって腸管平滑筋の収縮力が低下し蠕動運動が傷害される現象である。様々な候補物質が治療薬(予防薬)として試されているが、満足なものはない。本研究は、腹腔マクロファージ上の5HT3受容体を阻害することで物理的侵襲による平滑筋の炎症反応を抑制し、結果としてイレウスを治療または予防できる可能性をマウスモデルを用いてはじめて明らかにした(Maehara et al., Br J Pharmacol)。 ②NOS阻害剤の抗炎症作用:Interstitial cells of Cajal(ICC)は、消化管のペースメーカー機能を担う間葉系細胞であるが、筋層炎症によるこの細胞の障害が、術後イレウスに関与する可能性が予測できる。Ex vivoの系でIFN-γとLPS処置によりICCのペースメーカー機能は著しく抑止されたが、iNOS阻害剤である1400Wの処置はこのICC機能障害を有意に改善した。さらに抗酸化剤であるアポシニンもICC機能を有意に改善した。この成績は、ICCのTh1型炎症によるペースメーカー機能障害はNOを介した酸化ストレスにより発生することを示唆しており、治療薬・予防薬の候補として期待できると考えられる。(Kaji et al., Pharmacological Res 投稿中)
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2015年に公表した論文リストは以下の通りである。いずれも定評ある学術誌であり、順調に進展しているものと考えている。 Ashina et al. PLoS One (2015), Mikawa et al. J Vet Med Sci. (2015a), Mikawa et al. J Vet Med Sci (2015b), Maehara et al., Br J Pharmacol (2015), Abdeen et al. Nephrology Dialysis Transplantation (2016), Kodera et al. Neurosurg Rev (2015), Nakamura et al. Nat Commun (2015), Kawashima et al. Int Immunopharmacol (2015), Park et al. Cell Death Dis (2015) なお、2015年のインパクトファクターの合計は34.349であった。
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今後の研究の推進方策 |
本年度は本計画の最終年度にあたる。昨年の中間評価ではA判定を受けており、このまま続ければ全体として満足できる研究成果が期待できるものと考えている。中間評価では、多面的なアプローチを統合して疾病治療を視野に入れた研究に進展すべきとのコメントも受けており、これを念頭にさらに研究を進めたい。
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