研究課題/領域番号 |
25221206
|
研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
松浦 健二 京都大学, 農学研究科, 教授 (40379821)
|
研究分担者 |
井内 良仁 山口大学, 創成科学研究科, 准教授 (60272069)
鎌倉 昌樹 富山県立大学, 工学部, 講師 (60363876)
ミケェエヴ アレクサンダー 沖縄科学技術大学院大学, 生態・進化学ユニット, 准教授 (90601162)
|
研究期間 (年度) |
2013-05-31 – 2018-03-31
|
キーワード | 社会性昆虫 / 寿命 / ゲノム / 単為生殖 / ロイヤラクチン / メタボローム / トランスクリプトーム |
研究実績の概要 |
ヤマトシロアリの野外コロニーにおける巣内の酸素濃度・二酸化炭素濃度の測定に成功した。また、RNA-seqおよびリアルタイムPCRにおいてシロアリの女王特異的な発現を示した抗酸化酵素カタラーゼに着目し、女王の組織別に発現解析を行った結果、卵巣で特に高い発現を示すことを見出した。また、カースト間の免疫関連遺伝子の網羅的発現比較を行い、197の免疫関連遺伝子のうち174の遺伝子がカースト間で有意な発現差を示し、162の遺伝子が王および女王の年齢特異的な発現をすることが明らかになった。さらに、DNA修復酵素遺伝子をはじめとするDNA修復関連遺伝子の発現比較解析の結果、長寿命をもつ王・女王で特異的に高い発現を示す遺伝子が50余り特定された。 ゲノムインプリンティングによってシロアリのカースト決定がなされていることを明らかにした。これまで遺伝的カースト決定が考えられていたヤマトシロアリ属シロアリについて、ゲノムインプリンティング理論モデルを確立し、実際のデータへの適合性を分析した結果、極めて高い一致度を示した。また、ネバダオオシロアリの腸内微生物除去コロニーを用いて、腸内微生物の多面的機能の解析を行い、セラチア菌をはじめ巣内環境微生物の制御に腸内微生物が寄与していることを発見した。 ミツバチの女王の長寿命について、これまでの解析から女王蜂は働き蜂に比べヘテロクロマチン化が増加していることが分かった。女王蜂と働き蜂を対象としたRNA-seq解析の結果、女王蜂が働き蜂に比べヘテロクロマチン化の抑制に関与するヒストン修飾酵素の遺伝子発現の低下が見られた。この女王蜂と働き蜂との間の遺伝子発現の変動は、クロマチン修飾の変化と一致するものであり、女王蜂で見られたヘテロクロマチン化は、ヒストン修飾酵素の遺伝子発現の変動によりもたらされたものであることが明らかとなった。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
ヤマトシロアリの王と女王の長寿命に関連する抗酸化酵素や免疫関連遺伝子、DNA修復酵素などが明らかになり、さらに、シロアリのカースト決定にゲノムインプリンティングが関与していることを発見するなど、インパクトの高い研究成果が上がっている。
|
今後の研究の推進方策 |
カースト特異的なゲノムインプリンティングに関与するDNAのメチル化など、具体的なメチローム解析を行うため、ドラフトゲノム解析を急いで行う予定である。また、種間比較のために近縁種のゲノム解析も並行して行う。また、ミツバチに関するこれまでの解析から、女王蜂では何らかのクロマチン修飾誘導因子の発現によりヘテロクロマチン化が誘導され、そのヘテロクロマチン化により女王蜂の寿命制御に関与する実行因子の発現制御を受け、同実行因子が寿命延長をもたらしているものと考えられた。今後、これまでに行ってきたRNA-seq解析、BS-seq解析、ChIP-seq解析の結果などから、女王蜂のヘテロクロマチン化に関与するクロマチン修飾因子とヘテロクロマチン化を介して発現制御を受ける寿命制御実行因子を見出す。
|