研究課題/領域番号 |
25221301
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
福山 透 名古屋大学, 創薬科学研究科, 特任教授 (10272486)
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研究分担者 |
下川 淳 名古屋大学, 創薬科学研究科, 助教 (60431889)
藤間 達哉 名古屋大学, 創薬科学研究科, 助教 (70733971)
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研究期間 (年度) |
2013-05-31 – 2018-03-31
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キーワード | 全合成 / 生体機能分子 / 量的供給 / 構造改変 / 天然有機化合物 |
研究実績の概要 |
エクチナサイジン743の合成研究:Ugi反応を用いる収束的な合成経路を活用し、エクチナサイジン743の主骨格を構築することを試みた。その結果、必要となる炭素骨格を構築できることはわかったが、途中の段階における収率の低さが大きな問題になることが明らかとなった。そのため、当初の計画を変更して合成経路の再編を余儀なくされたが、Heck反応を用いる新たな合成経路の考案を終えている。これによりUgi反応で問題となっていた多成分連結反応の収率の低さを克服できる可能性がある。 テトロトドトキシンの合成研究:シクロペンタジエンとキノンのDiels-Alder反応成績体を用いる合成経路を活用することにより、テトロドトキシンの全合成経路を確立した。終盤における官能基選択的な変換の検討のために期間を要したものの、最終的には既存の全合成経路の中で最も効率的なものに仕上げることに成功した。また、アンヒドロ体との分離を唯一HPLCを使わずに達成できる合成経路にすることができた。 モルヒネの合成研究:当初計画していたロビンソン環化を用いる合成計画では、鍵反応となるロビンソン環化を進行させることに成功した。しかし、その後に多官能基性の中間体を扱っている影響で、十分な官能基選択性を発言させることが困難だった。効率的な合成経路を確立するには収率も低く、中間体の精製に苦労するという問題が生じたことから、新しい合成経路を考案して合成研究に取り組むこととした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
エクチナサイジン743の合成研究やモルヒネの合成研究では当初の予定とは異なるトラブルが発生したことにより合成研究の進展に遅れが生じてしまった。しかし、テトロドトキシンの合成研究についてはシクロペンタジエンとキノンのDiels-Alder反応成績体を活用する合成経路の確立に成功し、当初の計画よりも早期に全合成経路を確立することができた。この合成経路の最適化を行って構造展開をできるようにすることで研究の更なる進展が期待できる。また、エクチナサイジン743、モルヒネの合成研究にさらに力を注げるようになるため、当初に比べて遅れていた研究状況を打開することが可能である。また、これらの合成研究において得られた知見は多く、最適な合成経路を確立する上での重要な知見を豊富に得ることができた。そのため、新たな合成経路を考案することができ、当初よりもさらに効率的な全合成を達成できる可能性が高まった。この点を考慮すると、当初の計画以上に研究は進展していると考えられる状況にある。
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今後の研究の推進方策 |
テトロドトキシンについては現存する中では最も少ない工程数かつ蒼龍率も高い剛性経路を確立することができた。それでもなお長大な合成経路となっているため、創薬への展開が可能な合成経路であるとは言い難い状況にある。そのため、汎用性が高い終盤の中間体を効率的に合成できるようにするための合成経路の最適化を行う。また、それに伴って合成された中間体から類縁化合物への合成展開を行っていく。 エクチナサイジン743の合成経路は実用的合成を目指すことから収率の低い段階が多いのが問題となり、合成経路を再編することとした。今後はHeck反応を用いて効率的に主骨格を構築する合成経路の確率を目指して合成研究を行っていく。必要となるアミンユニット、カルボン酸ユニットについては既存の合成経路を応用して合成できるため、迅速に合成経路の確立が可能であると考えている。 モルヒネの合成研究ではロビンソン環化反応を用いる合成経路では中盤の官能基選択性が問題になった。モルヒネの合成においても実用性が重要になるため、抜本的な合成経路の改革を検討することとした。官能基化されたキノンに対するベータケトエステルの不斉マイケル付加による骨格構築を行う合成経路を考案している。これにより短工程でモルヒナン骨格を構築できる合成経路を確立できると期待している。
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