研究課題
本年度は、まずp57対する特異的抗体を用いて、マウス全身組織の免疫染色を施行した。特に造血幹細胞、神経幹細胞、腸管幹細胞において、それぞれ既知の幹細胞マーカーとp57の共染色により、その発現パターンを解析した。造血幹細胞ではp57はLineage(-)c-Kit(+)Sca-1(+)CD150(+)CD48(-)の分画に限局して発現が認められた。また神経系では、その幹細胞と言われるB細胞に特異的にp57は発現していた。腸管においてはp57は+4ポジションと呼ばれる幹細胞分画にのみ発現しており、従来幹細胞マーカーとして使用されているLgr5とは全く一致しなかった。逆にp57陽性細胞はほとんど全て従来+4ポジションマーカーとして知られるBmi1と共染色されたが、Bmi1よりより限局した発現を示すことから、p57はBmi1よりもさらに幹細胞に特異的な発現をしていることが明らかとなった。Fbw7とFbxl5については市販の抗体を購入して蛍光免疫染色法を施行したが、非特異的反応が強くて実験には使用できなかったので、現在特異的抗体の作成を行っているところである。p57、Fbw7、Fbxl5のFloxアリルマウスは、既にわれわれのラボにおいて作製済みであり、これらのマウスに組織特異的または薬剤誘導性Creトランスジェニックマウスを交配し、種々の組織幹細胞で(特定の時期に)p57、Fbw7、Fbxl5の遺伝子を破壊できるようなマウスラインを構築した。現在までにMx1-Cre(造血系・肝臓)、Nestin-Cre(神経系)、Bmi1-Cre(腸管)、K14-Cre(皮膚・乳腺)、SF1-Cre(生殖系)、Prx1-Cre(間葉系)、等の交配を終了した。今後これらのマウスにおける幹細胞機能の異常を調べていく予定である。
2: おおむね順調に進展している
本年度は免疫染色実験及びマウスの交配による材料作りが主な達成目標であったが、その項目はほぼ達成し、研究は順調に推移していると考えられる。
今までの解析から、p57、Fbw7、Fbxl5の中でも幹細胞特異的発現が最も顕著なのはp57であることが既に判明している。それに対してFbw7やFbxl5はやや分化した細胞にも発現が残存する傾向にある。そこで最終的な目標である幹細胞の可視化については、p57遺伝子領域にGFPをノックインする形で進めて行こうと考えている。それ以外の解析、特にコンディショナルノックアウトマウスによる解析については、三分子とも全て行うが、全組織で行うのは時間的にも不可能なので、特に興味深い組織に絞って解析を進めていく予定である。
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