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2016 年度 実績報告書

幹細胞維持分子の機能解析と全身の幹細胞の可視化を目指した総合的研究

研究課題

研究課題/領域番号 25221303
研究機関九州大学

研究代表者

中山 敬一  九州大学, 生体防御医学研究所, 主幹教授 (80291508)

研究分担者 中山 啓子  東北大学, 医学系研究科, 教授 (60294972)
研究期間 (年度) 2013-05-31 – 2018-03-31
キーワード幹細胞
研究実績の概要

本年度はp57、Fbw7、Fbxl5のコンディショナルノックアウトマウスにおける幹細胞機能の障害に関する解析を行った。具体的には前年度までに作製した、種々の組織におけるp57、Fbw7、Fbxl5のコンディショナルノックアウトマウスを用いて、種々の幹細胞について、その機能障害について検討を行った。p57コンディショナルノックアウトマウスの腸管の解析では、通常の状態では特に形態的・機能的異常を認めなかったが、5-FUを投与して腸管細胞を傷害した場合には、組織修復が遅延し、幹細胞機能が傷害されていることが示唆された。腸管特異的Fbw7コンディショナルノックアウトマウスでは通常状態では特に大きな異常を認めなかったが、主に発がんやがん進展の関与に変化が認められた。さらに骨髄特異的Fbxl5コンディショナルノックアウトマウスでは幹細胞機能が傷害されて、骨髄移植時の再構築能が著しく低下した。また神経特異的Fbxl5コンディショナルノックアウトマウスでは脳皮質が増大し、幹細胞の増殖性も上昇していた。また幹細胞における発現特異性が特に高いp57のプロモーター解析を行うため、p57遺伝子に蛍光タンパク質を組み込んだノックインマウスを作製したところ、期待通り幹細胞特異的発現を骨髄や小腸、胃、腎臓等の臓器で確認した。現在、同様のシステムを用いてp57遺伝子にCreを組み込んだノックインマウスも作製済みであり、このマウスを使用して幹細胞の系譜をトレースする実験を施行中である。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

本研究の大きな柱は「全ての組織幹細胞は共通した原理で作動している」という仮説(「幹細胞通則」と呼称している)の実証である。具体的には、組織幹細胞はその発生・維持に対して1)低増殖、2)低代謝、3)低酸化、の三条件を有する必要があり、それを媒介する責任遺伝子p57、Fbw7、Fbxl5 の機能解析を主に骨髄幹細胞、腸管幹細胞、神経幹細胞で行うことにより、「幹細胞通説」を証明しようというものである。骨髄幹細胞や腸管幹細胞は研究代表者である中山らのグループが主体となって進めている一方、神経幹細胞は中山らのグループと共同研究者の後藤由季子・東大教授らのグループの共同研究を進めている。既に当初の目標であるp57、Fbw7、Fbxl5 の組織幹細胞における発現解析と種々の組織幹細胞におけるp57、Fbw7、Fbxl5 遺伝子改変マウスの作製はほぼ終了した。また系統追跡マウスについてもp57系統追跡マウスの作製は完了し、解析は現在進行中である。このように当初の研究計画は予定通り順調に遂行されている。但し、わずかな項目では研究の進展状況から科学的に重要性が低下したため、途中で計画を変更したものもある。逆に、本研究課題から得られた知見が別の研究領域に発展したケースもあった。以上を総合して、当初の研究計画はほぼ達成できており、さらに予想外の研究展開もあったことを鑑みると、本研究計画は概ね順調に推移していると考えられる。

今後の研究の推進方策

今後の研究計画はほぼ当初の計画通りであり、残っている主な実験は「全身の幹細胞の可視化と系統追跡」のみである。一部の実験(Fbw7/Fbxl5プロモーター下における系統追跡マウス作製とその解析)は科学的必要性が希薄となったため施行を中止し、p57プロモーター下における系統追跡マウス作製とその解析に集中することとした。既にp57の遺伝子内に蛍光タンパク質遺伝子もしくはCreリコンビナーゼを同時に発現するようにデザインしたノックインマウス、つまりp57遺伝子の下流にタモキシフェン誘導性のCreカセット(CreERT2)を挿入したマウス (p57-CreERT2マウス) は作製済みである。このマウスとRosa26領域のマーカーマウスと交配させたマウスでは、タモキシフェン投与によりまずp57を発現する幹細胞でのみGFPが発現し、GFP標識細胞の中に、組織を構成する全ての細胞が含まれていた場合、この細胞は組織幹細胞の性質を持つ。この点も既に一部の幹細胞で実証済であり、現在種々の組織において同様の解析を行い、新たな幹細胞の同定とその機能解析を進めているところである。

  • 研究成果

    (10件)

すべて 2017 2016 その他

すべて 雑誌論文 (5件) (うち国際共著 2件、 査読あり 5件、 謝辞記載あり 3件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (4件) (うち国際学会 2件、 招待講演 2件) 備考 (1件)

  • [雑誌論文] FBXL5 inactivation in mouse brain induces aberrant proliferation of neural stem-progenitor cells2017

    • 著者名/発表者名
      Yamauchi, T., Nishiyama, M., Moroishi, T., Kawamura, A., Nakayama, K. I.
    • 雑誌名

      Mol. Cell. Biol.

      巻: 印刷中 ページ: 印刷中

    • DOI

      10.1128/mcb.00470-16

    • 査読あり / 謝辞記載あり
  • [雑誌論文] SRRM4-dependent neuron-specific alternative splicing of protrudin transcripts regulates neurite outgrowth2017

    • 著者名/発表者名
      Ohnishi, T., Shirane, M., Nakayama, K. I.
    • 雑誌名

      Sci. Rep.

      巻: 7 ページ: 41130

    • DOI

      10.1038/srep41130

    • 査読あり / オープンアクセス / 謝辞記載あり
  • [雑誌論文] mTORC1 and muscle regeneration are regulated by the LINC00961-encoded SPAR polypeptide2016

    • 著者名/発表者名
      Matsumoto, A., Pasut, A., Matsumoto, M., Yamashita, R., Fung, J., Monteleone, E., Saghatelian, A., Nakayama, K. I., Clohessy, J. G., Pandolfi, P. P.
    • 雑誌名

      Nature

      巻: 541 ページ: 228-232

    • DOI

      10.1038/nature21034

    • 査読あり / 国際共著
  • [雑誌論文] CHD8 haploinsufficiency results in autistic-like phenotypes in mice2016

    • 著者名/発表者名
      Katayama, Y., Nishiyama, M., Shoji, H., Ohkawa, Y., Kawamura, A., Sato, T., Suyama, M., Takumi, T., Miyakawa, T., Nakayama, K. I.
    • 雑誌名

      Nature

      巻: 537 ページ: 675-679

    • DOI

      10.1038/nature19357

    • 査読あり / 謝辞記載あり
  • [雑誌論文] p57(Kip2) knock-in mouse reveals CDK-independent contribution in the development of Beckwith-Wiedemann syndrome2016

    • 著者名/発表者名
      Duquesnes, N., Callot, C., Jeannot, P., Daburon, V., Nakayama, K. I., Manenti, S., Davy, A., Besson, A.
    • 雑誌名

      J. Pathol.

      巻: 239 ページ: 250-261

    • DOI

      10.1002/path.4721

    • 査読あり / 国際共著
  • [学会発表] 造血幹細胞の機能維持におけるユビキチンリガーゼFBXL5による鉄代謝制御の重要性2016

    • 著者名/発表者名
      武藤義治, 西山正章, 仁田暁大, 諸石寿朗, 中山敬一
    • 学会等名
      第39回日本分子生物学会年会
    • 発表場所
      横浜
    • 年月日
      2016-12-02 – 2016-12-02
  • [学会発表] 静止期維持因子p57は+4ポジション幹細胞の制御を介して腸管上皮の恒常性を維持する2016

    • 著者名/発表者名
      比嘉綱己, 沖田康孝, 松本有樹修, 武石昭一郎, 中津海洋一, 中山敬一
    • 学会等名
      第39回日本分子生物学会年会
    • 発表場所
      横浜
    • 年月日
      2016-12-01 – 2016-12-01
  • [学会発表] Cell cycle regulation in cancer stem cell2016

    • 著者名/発表者名
      Nakayama, K. I.
    • 学会等名
      The 47th International Symposium of The Princess Takamatsu Cancer Research Fund: Current status and perspectiveof cancer stem cell research
    • 発表場所
      東京
    • 年月日
      2016-11-10 – 2016-11-10
    • 国際学会 / 招待講演
  • [学会発表] Cell cycle regulation in cancer stem cell2016

    • 著者名/発表者名
      Nakayama, K. I.
    • 学会等名
      The Cell Cycle from Mechanism to Therapy
    • 発表場所
      トロント
    • 年月日
      2016-06-02 – 2016-06-02
    • 国際学会 / 招待講演
  • [備考] 九州大学生体防御医学研究所分子医科学分野

    • URL

      http://www.bioreg.kyushu-u.ac.jp/saibou/index.html

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公開日: 2018-12-17  

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