研究課題
免疫システムは正負のシグナルがバランスを保って進行することで恒常性が維持される。その維持は主にサイトカインや増殖因子によって制御される。本研究はこのような免疫応答の恒常性を支えるサイトカインとそのシグナル制御の基本原理の解明し、疾患治療に応用することを目的とする。実際には(1)Foxp3Creを用いたTreg特異的NR4a欠損マウスの解析を行った。このマウスは加齢とともに自己抗体の産生を伴う自己免疫疾患で死亡した。マイクロアレイ解析を行ったところNR4a欠損TregはIL-4,IL-5,IL-13などのTh2サイトカイン、およびTfh関連サイトカインIL-21の産生が更新し、さらにCD25,CTLA4, Ikzf4(EOS)の発現が低下していた。(2)クロストリジウム属菌による樹状細胞からのTGFβシグナルによるiTreg誘導制御機構の解明を行なった。消化管におけるTregの多くはTGFβによって誘導されるiTregである。iTregの誘導には腸内細菌、特にクロストリジウム属菌が重要であることが知られている。そこでClostridium Butyricum (CB)菌の芽胞をマウスに2週間投与したところiTregの増加とDSS誘導性腸炎の抑制が見られた。このときにTGFβ抗体を投与するとiTregの増加やDSS腸炎抵抗性は見られなくなった。よってCBはTGFβを介してiTregを誘導していると考えられた。(3)新規インフラマゾーム活性化因子BTKの発見と脳梗塞後の炎症ににおける役割の解明を行なった。BTKチロシンキナーゼ阻害剤がNLRP3インフラマゾームの活性化を抑制することでIL-1β産生を抑制するを発見した。BTK欠損マウスではインフラマゾームの活性化が低下していた。生化学的な解析からBTKは酵素活性依存的にNLRP-ASC複合体の重合を促進しcaspase1の活性化を誘導することがわかった。脳虚血による炎症や脳梗塞体積や神経炎症の程度を評価したところBTK阻害剤投与によってIL-1βの産生が抑制され、また脳梗塞体積は減少し、神経症状の改善も見られた。
2: おおむね順調に進展している
NR4a遺伝子のTregでの機能を明らかにするとともに、Tregの可塑性に重要な役割を果たしていることを明らかに出来た。またクロストリジウム属菌がどのようなメカニズムでTregを誘導するのかを世界で初めて明らかにした。さらに脳組織傷害にBTKが積極的に関与することを明らかにし、BTKが脳梗塞の治療ターゲットになりうることを見出した。このように複数の顕著な成果が得られつつある。
(1)NR4aがFoxp3以外の転写を正負に制御していることがわかり、考えられていた以上にTregにとって機能分子として重要であることが判明した。今後はNR4aに会合する分子のプロテオーム解析を行い、転写制御に必要な因子を明らかにする。(2)Smad2欠損樹状細胞の抗炎症効果のメカニズムのひとつはTGFβ高産生によるiTregの誘導であった。しかし組織修復性については未だ不明のままである。TGFβは線維化にも深く関与するのでSmad2欠損マウスの病態モデルを活用して、抑制性樹状細胞が神経再生や組織修復と関連するかを明らかにする。(3) 今後修復性マクロファージの性格づけと分化誘導のメカニズムを明らかにして行く予定である。修復性マクロファージを大量に分取して大規模な遺伝子発現のプロファイリングを行なう。
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