研究課題
基盤研究(S)
① WNKキナーゼの生体内での生理的・病態生理的役割の解明既に我々はWNK-OSR1/SPAK-NCCシグナル伝達系発見のあと、このシグナル系の全容を解明すべく研究を重ねてきた。最近PHAIIを引き起こす第2, 第3の遺伝子としてKLHL3 とCullin3という分子が報告された。この異なる3つに遺伝子がいかにして連関して共通のPHAIIという病態に至るのかを明らかにできれば、WNKキナーゼの新たな制御機構を明らかにすることにつながる。そこで我々は培養細胞系でKLHL3とCullin3が結合してE3リガーゼを形成し、WNK4がその基質としてユビキチン化を受ける事を明らかにした(Wakabayashi et al Cell Rep、2013)。そして、PHAIIを引き起こす遺伝子変異はこの過程の障害を惹起して、WNK4のユビキチン化とその分解の障害が共通の病態である事を明らかにした(Y. Mori et al BBRC, 2013)。また、KLHL3と相同性の高いKLHL2がKLHL3と同様に、すべてのWNKキナーゼのE3リガーゼ複合体を形成する事も明らかにした(Takahashi et al BBRC 2013)。一方、Zeniyaらは、血管平滑筋においてWNK3-SPAK-NKCC1のシグナル伝達系が存在し、それが食塩摂取に応じてアンギオテンシンIIを介して血管のトーヌス調節に関わっている事をしめした(Hypertension 2013)。塩分ストレス応答シグナル破綻・失調に対する制御法の確立② WNKキナーゼシグナル伝達阻害薬の開発ケミカルライブラリースクリーニングにより、本シグナル系を制御する低分子化合物の同定を試みた。本年度は、単なる活性分子の直接阻害だけでなく、分子間シグナル伝達阻害薬という発想で取り組んだ。本学のケミカルライブラリーに対して、WNK-OSR1/SPAK-NCCシグナル伝達阻害薬を、WNKキナーゼと下流のOSR1/SPAKとの結合を阻害する物質の探索を、新しく開発したハイスループットなスクリーニングシステムを用いて行い、阻害薬を同定できた(T. Mori et al Biochemical J 2013)。
2: おおむね順調に進展している
新たなWNKの制御系として、WNKに対するE3ユビキチンリガーゼとしてはたらくKLHL3-Cullin3複合体を同定できた。腎臓以外のWNKキナーゼシグナル系として、血管平滑筋のWNK3-SPAK-NKCC1シグナル伝達系が、血管のトーヌス調整を介して、血圧制御に関わっている事を示した。WNKキナーゼシグナル系の阻害薬をケミカルライブラリースクリーニングにてどうていすることができた。以上から、当初の予定通り研究全体は概ね順調に進展していると判断している。
① WNKキナーゼの生体内での生理的・病態生理的役割の解明最近我々はWNK4の低形成マウスおよびKOマウスにおいて、脂肪食に対する抗肥満作用(肝内脂肪と脂肪細胞の減少を伴う)を見いだした。インスリンがこの系の強力な刺激因子であり(PLoS One 2011)、肥満モデルであるdb/dbマウスにおいて高インスリン血症がこの系を刺激し塩分感受性高血圧をもたらしている事も明らかにてきた経緯もあり(Hypertension 2012)、塩分だけでない肥満との関連でもWNKの重要性は明らかとなってきており、このマウスにおける抗肥満作用の分子機序と塩分ストレスとの関係を明らかにする。② 25年度に明らかにしたWNKキナーゼに対するE3としてのKLHL3-Cullin3の系が、生体内でも働いていることをしめすために、ヒトで発見されたPHAIIの変異と同じ変異をもつKLHL3のノックインマウスを作成して解析する。すでにマウスは作成できており、26年度中に結果を得る。その他、KLHL2/KLHL3ノックアウトマウスも作成・解析する。③ SPAKに対する直接阻害薬をケミカルライブラリースクリーニングによって探索する。すでに96穴プレート上で、ELISAによるSPAKキナーゼアッセイを確立しており、そのアッセイ系に対して、東京医科歯科大学のライブラリー、約2万種の化合物をスクリーニングし、ヒットした化合物に対しては、細胞系や動物の系で薬効と毒性を評価する。
すべて 2013 その他
すべて 雑誌論文 (10件) (うち査読あり 10件) 学会発表 (5件) 備考 (1件)
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