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2015 年度 実績報告書

WNKシグナルによる塩分ストレス応答の分子病態解明と治療法の開発

研究課題

研究課題/領域番号 25221306
研究機関東京医科歯科大学

研究代表者

内田 信一  東京医科歯科大学, 医歯(薬)学総合研究科, 教授 (50262184)

研究期間 (年度) 2013-05-31 – 2018-03-31
キーワード塩分感受性高血圧 / WNK キナーゼ
研究実績の概要

本研究では、塩分ストレスが血圧・体液恒常性維持機構の破綻のみならず、全身の臓器障害を引き起こす分子病態を解明し、それに基づいた治療法の開発を行う事を目的とする。その際、研究の糸口となるのが、遺伝性塩分感受性高血圧症の原因遺伝子であるWNKキナーゼである。我々は、機能未知であったWNKキナーゼの基質同定を含めた下流のシグナル伝達系を世界ではじめて解明し、最近では上流の制御因子を数多く同定してきた。その結果、この系の制御機構の破綻が単なる高血圧症のみならず、各臓器において塩分負荷による病態形成に関わる事が明らかとなってきた。本研究では、多くの研究手法を駆使してこれらの病態を解明し、病態に基づいたトランスレーショナルリサーチ(創薬やバイオマーカー開発)へと発展させる。
具体的には、以下の事項を明らかにしつつ上記目的を達成する。
1) 遺伝子改変マウスの解析によりWNKシグナル系が担う各臓器での役割を解明する。2) この情報をもとにWNKキナーゼの新規の上流の制御因子と下流の標的を解明する。3) 明らかになった各臓器での役割が、腎臓でのWNKシグナル系による塩分出納制御のように、塩分負荷によって制御を受けているかを検討する。4) WNKキナーゼが恒常的に活性化された遺伝子改変マウスや病態モデル動物で、塩分負荷が実際に引き起こす病態を各臓器において細胞レベルで解析する。5) 腎機能障害を上記モデルに負荷し、上記病態に与える変容を解析する。6) WNKシグナル伝達系(等)の阻害薬の探索をおこなう。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

1) WNK4が脂肪細胞において、その分化に関わる事を発見し、塩分のみならず脂肪の蓄積にもWNKシグナル系が関与することを見いだした。このことは、この系の生活習慣病への関与をいっそう明らかにするもので、創薬への強いモチベーションとなっている。
また、血管平滑筋におけるトーヌス調節のこの系の関与を証明した。2) WNKシグナルの新規調節機構としてWNKのE3リガーゼを同定し、実際にその制御機構の破綻が遺伝性の高血圧症であるPHAIIを引き起こしていること、またこのような遺伝病のみならず、液性因子によるWNKキナーゼシグナル系の制御が、このWNKの分解制御を介していることも解明できた。3)血管平滑筋におけるトーヌス調節制御機構において、WNK3-SPAK-NKCC1シグナル系の関与を発見し、さらにそのシグナル伝達が食塩摂取に応じて調節されていること、そのメカニズムにWNKの分解系が関与している事、さらにはプロテアソーム以外にオートファジー系もWNKの分解に関わる事を発見し、今後の創薬ターゲットとなると考えた。4) 病態モデル動物において、次世代シークエンサーを用いたRNA-seq、CHIP-seq、メタボローム解析等の網羅的解析をほぼ終了し、興味深い分子が同定されてきており、今後の塩分負荷による病態形成における新たな機序を見いだせる状況にある。5) ケミカルライブラリースクリーニング系を確立でき、実際に2万程度の化合物スクリーニングを終了し、初期シード化合物を得られた。今後は、最適化を行う一方、研究のツールとしても使用できる。
以上の状況から、順調に進行していると判断した。

今後の研究の推進方策

WNKシグナル系が担う各臓器での役割を解明については、28年度中に脂肪細胞における役割について論文化し、脂肪食下における肥満の抑制のみならず、WNKノックアウトマウスと各1) 病態モデルとの交配によって、病態改善への効果を検証する。脂肪以外に現在注目している臓器が骨格筋である。CCKDを含む慢性疾患におけるサルコペニアに、このシグナル系が関与している可能性があり、まずWNKキナーゼシグナル系ノックアウトマウスにおける運動負荷時の筋肉における動態を現在解析中である。2) KLHL蛋白による分解のメカニズムをさらに追求する。特に、もう一つのPHAII原因遺伝子として見つかったCullin3の変異がもたらす病態を、コンディショナルノックアウトマウスを用いて検討する。3) 塩分負荷が各細胞・臓器にどのような影響を与えているかを探る試みは、次世代シークエンサーやメタボロームを使用した網羅的解析を手がかりとして行う。注目すべき候補分子の選定をすすめ、すでに再現性の得られている分子を手がかりに、今まで見過ごされていた塩分負荷が形成する病態について明らかにする。また、慢性腎臓病(CKD)モデルでの塩分負荷の与える影響の解析、同時に蛋白負荷が与える影響についても解析を行う。4) WNKシグナル伝達系(等)の阻害薬の探索は、スクリーニング系を確立できたことは大きく、今後更なるライブラリースクリニングと最適化をすすめる一方、既に同定されたシード化合物とWNK・SPAKキナーゼとの結合様式を、構造解析にて明らかにて、構造情報をもとに、薬剤のデザインを行う。

  • 研究成果

    (13件)

すべて 2015 その他

すべて 雑誌論文 (7件) (うち査読あり 7件、 オープンアクセス 1件、 謝辞記載あり 6件) 学会発表 (5件) (うち国際学会 5件、 招待講演 1件) 備考 (1件)

  • [雑誌論文] Generation and analysis of knock-in mice carrying pseudohypoaldosteronism type II-causing mutations in the cullin 3 gene.2015

    • 著者名/発表者名
      Araki Y, Rai T, Sohara E, Mori T, Inoue Y, Isobe K, Kikuchi E, Ohta A, Sasaki S, Uchida S.
    • 雑誌名

      Biol Open

      巻: 4 ページ: 1509-1517

    • DOI

      10.1242/bio.013276.

    • 査読あり / オープンアクセス / 謝辞記載あり
  • [雑誌論文] Genetic knockout and pharmacologic inhibition of NCX2 cause natriuresis and hyper-calciuria.2015

    • 著者名/発表者名
      Gotoh Y, Kita S, Fujii M, Tagashira H, Horie I, Arai Y, Uchida S, Iwamoto T.
    • 雑誌名

      Biochem Biophys Res Commun.

      巻: 456 ページ: 670-675

    • DOI

      10.1016/j.bbrc.2014.12.016

    • 査読あり
  • [雑誌論文] Discovery of Novel SPAK Inhibitors That Block WNK Kinase Signaling to Cation Chloride Transporters.2015

    • 著者名/発表者名
      Kikuchi E, Mori T, Zeniya M, Isobe K, Ishigami-Yuasa M, Fujii S, Kagechika H, Ishihara T, Mizushima T, Sasaki S, Sohara E, Rai T, Uchida S.
    • 雑誌名

      J Am Soc Nephrol.

      巻: 26 ページ: 1525-1536

    • DOI

      10.1681/ASN.2014060560

    • 査読あり / 謝辞記載あり
  • [雑誌論文] Kelch-Like Protein 2 Mediates Angiotensin II-With No Lysine 3 Signaling in the Regulation of Vascular Tonus.2015

    • 著者名/発表者名
      Zeniya M, Morimoto N, Takahashi D, Mori Y, Mori T, Ando F, Araki Y, Yoshizaki Y, Inoue Y, Isobe K, Nomura N, Oi K, Nishida H, Sasaki S, Sohara E, Rai T, Uchida S.
    • 雑誌名

      J Am Soc Nephrol.

      巻: 26 ページ: 2129-2138

    • DOI

      10.1681/ASN.2014070639.

    • 査読あり / 謝辞記載あり
  • [雑誌論文] Involvement of selective autophagy mediated by p62/SQSTM1 in KLHL3-dependent WNK4 degradation.2015

    • 著者名/発表者名
      Mori Y, Mori T, Wakabayashi M, Yoshizaki Y, Zeniya M, Sohara E, Rai T, Uchida S.
    • 雑誌名

      Biochem J.

      巻: 472 ページ: 33-41

    • DOI

      10.1042/BJ20150500.

    • 査読あり / 謝辞記載あり
  • [雑誌論文] Impaired degradation of WNK by Akt and PKA phosphorylation of KLHL3.2015

    • 著者名/発表者名
      Yoshizaki Y, Mori Y, Tsuzaki Y, Mori T, Nomura N, Wakabayashi M, Takahashi D, Zeniya M, Kikuchi E, Araki Y, Ando F, Isobe K, Nishida H, Ohta A, Susa K, Inoue Y, Chiga M, Rai T, Sasaki S, Uchida S, Sohara E.
    • 雑誌名

      Biochem Biophys Res Commun.

      巻: 467 ページ: 229-234

    • DOI

      10.1016/j.bbrc.2015.09.184

    • 査読あり / 謝辞記載あり
  • [雑誌論文] Associated STK39 Polymorphism Knockin Cell Lines With the Clustered Regularly Interspaced Short Palindromic Repeats/Cas9 System.2015

    • 著者名/発表者名
      Mandai S, Mori T, Sohara E, Rai T, Uchida S.
    • 雑誌名

      Hypertension

      巻: 66 ページ: 1199-1206

    • DOI

      10.1161/HYPERTENSIONAHA.115.05872

    • 査読あり / 謝辞記載あり
  • [学会発表] The KLHL proteins, the WNKs and renal Na+ transport.2015

    • 著者名/発表者名
      Uchida S
    • 学会等名
      8Th FAOPS (Federation of the Asian and Oceanian Physiological Societies) Congress 2015
    • 発表場所
      Bangkok, Thailand
    • 年月日
      2015-11-23 – 2015-11-24
    • 国際学会 / 招待講演
  • [学会発表] Generation and Analysis of Knock-In Mice Carrying Pseudohypoaldosteronism Type II-Causing Mutations in the Cullin 3 Gene.2015

    • 著者名/発表者名
      Araki Y, Rai T, Sohara E, Mori T, Inoue Y, Kikuchi E, Uchida S.
    • 学会等名
      The 48th Annual Meeting of the American Society of Nephrology
    • 発表場所
      San Diego
    • 年月日
      2015-11-05 – 2015-11-08
    • 国際学会
  • [学会発表] Potassium-induced dephosphorylation of renal sodium-chloride cotransporter is NOT dependent on the anions.2015

    • 著者名/発表者名
      Nomura N, Shoda W, Sohara E, Rai T, Uchida S.
    • 学会等名
      The 48th Annual Meeting of the American Society of Nephrology
    • 発表場所
      San Diego
    • 年月日
      2015-11-05 – 2015-11-08
    • 国際学会
  • [学会発表] Generation of Hypertension-Associated STK39 Polymor- phism Knockin Cell Lines with the CRISPR/Cas9 System.2015

    • 著者名/発表者名
      Mandai S, Mori T, Sohara E, Rai T, Uchida S.
    • 学会等名
      The 48th Annual Meeting of the American Society of Nephrology
    • 発表場所
      San Diego
    • 年月日
      2015-11-05 – 2015-11-08
    • 国際学会
  • [学会発表] The Major Contribution of WNK4 to the Pathogenesis of Pseudohypoaldosteronism Type II (PHAII) Caused by the KLHL3 Mutation R528H.2015

    • 著者名/発表者名
      Susa K, Sohara E, Takahashi D, Rai T, Uchida S.
    • 学会等名
      The 48th Annual Meeting of the American Society of Nephrology
    • 発表場所
      San Diego
    • 年月日
      2015-11-05 – 2015-11-08
    • 国際学会
  • [備考] 東京医科歯科大学腎臓内科学

    • URL

      http://www.tmd.ac.jp/grad/kid/index.html

URL: 

公開日: 2017-01-06  

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