研究課題
ダウン症候群に高頻度に見られる急性巨核芽球系白血病の発症メカニズムを解明するため、以下のステップで研究を遂行した。1. マウスモデルによるストラテジー近年開発したマウス人工染色体(Mouse artificial chromosome:MAC)を用いて、トリソミーモデルマウスを作製することを目指した。1)昨年度までに作製したhChr21q-MACベクターをマウスES細胞に微小核細胞融合法で導入し、PCR解析、FISH解析により、キメラ作製に利用できるESクローンを選別した。2)上記hChr21q-MAC導入マウスES細胞を8細胞期胚にインジェクションし、仮親に移植することで、hChr21q-MACを保持するキメラマウスを獲得した。3)そのキメラマウスから子孫伝達可能な新規のダウン症候群モデルマウスの系統化に成功した。2. ヒトES細胞によるストラテジー本年度は以下のステップを実施した。1)ヒトES細胞にゲノム編集技術を用いてX染色体上のGATA1遺伝子にGATA1s変異を導入することに成功した。2)1)で作製したGATA1s-ES細胞に昨年度同様に微小核細胞融合法を用いてヒト21番染色体を導入した。3)FISH解析により21番染色体のみが過剰に1本保持されたトリソミーES細胞を選別した(GATA1s/Ts21-ES)。4)さらにテラトーマを作製することで3胚葉に分化能を持つ改変ヒトES細胞を選別した。5)昨年度作製したTs21-ES、上記で作製したGATA1s-ES、GATA1s/Ts21-ESと正常ES細胞の4種のES細胞を用いて、in vitro血液分化誘導実験を行ったところ、正常ES細胞に比べ、Ts21導入細胞では赤血球系分化が亢進し、GATA1s導入細胞では赤血球系分化が抑制され、巨核球分化はTs21導入とGATAT1s導入の相乗的な影響で分化異常が観察された。
2: おおむね順調に進展している
計画した2つのストラテジーについて、予定どうりに成果を上げることができたため。
ストラテジー1については、種々のマウス系統との交配により上記マウスを系統化し、種々の行動解析により正常マウスとの差を比較検討する。また、ストラテジー2については今年度解析した血液分化異常のメカニズムについて検索し、ヒト21番上の原因遺伝子を探索するため、種々のヒト21番染色体領域を持つトリソミーヒトES細胞を作製する予定である。
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